認知症の方の介護者から、「どうしてもきつく当たってしまう」という話を聞くことがあります。認知症の方の言動、その特性を考えると理解できなくはないのですが、介護を続けていくうえで良いことは一つもありません。
そこで今回は、認知症の方に向き合っていくうえで必要なことを解説し、それでもきつく当たってしまう方に対し、イライラしたときの対処法を3つご紹介します。
イライラするのは当然のこと
そもそもなぜきつく当たってしまうのでしょうか。原因の多くは認知症の方に対し、認知症ではなかった頃の姿を重ね合わせ、「そんなはずはない」と認めたくない気持ちがあると考えています。
それは家族など親しい関係であればあるほど強くなります。当たり前のことだとも言えますが、この感情をどうにかして乗り越えなくてはいけません。同じ人でありながら、今までとは違う人になったと割り切って向き合うことが必要なのです。
しかし、うまく割り切ったところで、イライラするような状況はあります。これも当然の反応なので、決していけないことだとは思いません。
私は「イライラしても良いけど、そのときにどう対処するのか」を覚えておくことが大切だと思っています。
要介護者と少し間を置く
まずは深呼吸です。といってもイライラしているときにそんな余裕はないかもしれません。ここで大切なのは「間を置く」ことです。
イライラしてしまう人に共通しているのは、認知症の方に真面目に向き合っているという点です。決して悪いことではないのですが、しっかりと向き合っているがゆえに、対応がうまくいかないとさらに頑張ろうと考えてしまいます。
ただ、私の経験上、イライラした気持ちのまま対応をしてうまくいくことはありません。わずかな時間でも良いので時間をあけてみてください。
極端に言えば対応を諦め、その場を離れても良いと思います。そうすることで起きている状況を冷静に見つめ直すことができ、新たな気持ちで対応にあたれるからです。

対応を他の人に代わってもらう
次に、実践してほしいのは対応する人を代わってもらうこと。認知症の方は時と場合によって、心の状態の振れ幅が大きくなります。
そのきっかけの一つには、対応する相手とのその場での相性が考えられます。
そこで対応がうまくいかないと感じたときは、イライラにつながる可能性が十分にあります。状況的に可能であれば他の人に対応を代わってもらうようにしてください。
理屈という面では不合理かもしれませんが、相性というのは絶対にあります。そう考えると施設と呼ばれる場は、介護する側の選択肢が多く、言い換えるなら代わってもらえる人がいることから認知症の方と介護する両者にとって良い場所と言えるのかもしれません。
ただ、認知症の方と介護者の二人で生活されている場合や、施設における夜間帯の対応は選択肢が限られてしまいます。そうした場合は、頑張ろうと思わず、間をあけるか諦める勇気を持つことが長い目で見ると大切なのです。
介護経験者にイライラを吐き出す
即効性はありませんが、イライラした気持ちを吐き出すことも大切です。言い換えるならイライラした気持ちをため込まないということです。
ただ、吐き出す相手には注意が必要で、誰でも良いというわけではありません。理想は認知症の方を介護した経験のある人です。
身近な存在の家族であっても、介護をしていなければその苦労はわかりません。それなら第三者であっても、介護中の人や介護した経験のある人に吐き出すほうが大きな効果があります。
近所を含め、身近にそのような人がいれば話を聞いてもらうと良いでしょう。また私がかかわりのある、『認知症の人と家族の会』で行われているような介護者の集いの場に出かけるのも一つの手です。
的確な助言をもらえたり、大変な思いをしているのは自分だけではないことがわかるだけで、イライラのコントロールに役立ちます。

イライラが重なると最悪な場合、虐待につながりかねません。そうならないためにも今回の内容を少しでも理解していただくとともに、身近にお困りの方がいたら、ぜひ手助けしていただければと思います。