今回は、認知症のひとつとして注目を集めている「レビー小体型認知症」の最新研究についてお伝えします。
実は「レビー小体型認知症」は、アルツハイマー病とは初期症状が異なることも多いため、診断が難しい認知症です。
そんな中、2022年10月、その初期症状を詳しく分析した研究論文が発表されました。Frontiers in Neurology誌に掲載された論文のエッセンスを解説していきます。
そもそも、「レビー小体型認知症」とは?
論文の結果の前に、まずは「レビー小体型認知症」について簡単に解説します。
この認知症は、「レビー小体」と呼ばれる物質が神経細胞を傷つけることによって起きると考えられています。この「レビー小体」は、脳だけでなく全身の神経細胞に影響を及ぼし、様々な症状を引き起こします。
よく知られたアルツハイマー病の場合は記憶障害がよく見られますが、レビー小体型認知症の場合は、異なる症状が現れやすい特徴があります。
例えば、うつ症状のほか、幻視・幻聴や、手足が震えたりするパーキンソン症状が現れやすいことが知られています。
症状が進むと、歩行困難になることもあります。そのため、レビー小体型認知症の方のケアにあたっては、手厚い介護・看護体制が欠かせません。
最新研究で示された「レビー小体型認知症」の初期症状
2022年10月、Frontiers in Neurology誌に掲載された論文“Characteristics of initial symptoms in patients with dementia with Lewy body disease”(編集部訳:レビー小体型認知症患者の初期症状の特徴)では、2015年9月~2021年3月にかけて中国・天津市環湖病院の認知症外来を受診した「レビー小体型認知症」とみられる患者239例についての分析結果が報告されています。
239人のうちわけは、男性120人・女性119人とほぼ半々。また、65歳未満で初期症状があらわれたのは全体で43人、65歳から75歳の間が116人、75歳以上が80人でした。
実際にみられた初期症状は次の通りでした。
初期症状 | 割合 |
---|---|
物忘れ | 53.9% |
精神症状 | 34.7% |
睡眠行動障害 | 20.9% |
パーキンソン症状 | 15.1% |
自律神経症状 | 10.1% |
物忘れが最もよく見られる症状でしたが、この研究によると、女性の方が幻覚や幻聴などの精神症状が出やすく、男性の方が睡眠行動障害が出やすかったとのことです。
こうした初期症状は、実際に「レビー小体型認知症」と確定診断が下るよりも数年前から現れます。もし、疑わしい症状が現れた場合には、専門の病院への受診も検討してみてはいかがでしょうか。