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第179回

認知症の方こそ「掃除」がおすすめ 思考と体を多く使う家事の効果

最終更新日時 2021/05/05
株式会社Qship(キューシップ)代表・介護福祉士の梅本聡です。今回は、第175回に引き続き、認知症の状態・要介護状態にある方たちが行う「家事」についてお伝えします。

株式会社Qship(キューシップ)代表・介護福祉士の梅本聡です。

今回は、第175回 に引き続き、認知症の状態・要介護状態にある方たちが行う「家事」についてお伝えします。

リハビリ目的で利用者に家事を促さない

筆者は、以前勤めていたグループホームで、ほかの職員と一緒に、入居者の方たちが家事を行うことを支援していました。その実践を続ける中で気づいたのが、「家事には脳や体を使う機会がたくさんある」ということです。このことを介護の専門職向け研修で話すと、「リハビリとして家事を行っていたんですね」と言われることがありますが、それは違います。

まず、筆者も職員も「リハビリのために入居者の方に家事をやってもらおう」という意識はありませんでした。私たちが支援の中で常に意識していたのは、「認知症の状態であっても自分でできることは自分で行ってもらう」ということ。入居者の方たちの「かつての暮らし」を取り戻して維持することを最大の目的としていました。そして、それに欠かせないことの一つが「家事」だったのです。

家事を行うということは当たり前の日常生活を営むうえで必須であって、リハビリ目的ではありません。「掃除をしていたら」「洗濯をしていたら」「炊事をしていたら」と、脳と体を使っていただけなのです。

では例として、炊事を場面ごとに分け、それぞれの場面でどんな行為を行っているのかを確認してみましょう。

  • 献立:食べたいものを考えて決める
  • 買いもの:食材選びや店員とのコミュニケーションや支払い
  • 食材の準備:調理器具の使用や食材の加工、それに伴う安全への配慮
  • 調理:食材の加工や味つけ、調理器具の使用、それに伴う安全への配慮
  • 盛りつけ:料理や量、場面に応じた食器の準備や見栄えの良い盛りつけ、人数を踏まえた料理を適当に配分
  • 配膳・運搬:食卓への運搬・箸の配置・献立に応じた食器の準備
  • 食後の後片付け:使用済みの食器の運搬や洗浄、乾燥、食器棚への収納・台所の清掃

ざっと必要な行為を場面ごとに分けて挙げてみましたが、それぞれの場面で脳や体を使う機会が多いことがわかります。また、炊事は材料を調達するのに買いものに行く必要があります。よって、日の光を浴び、風を感じ、街から表出する生活感も味わいながら、道中・店先・店内など、赴く先々で地域住民と言葉を交わすことができます。炊事の活用範囲は、買いものによって施設(建物)内の活動に留まらないのです。

しかし炊事は、配膳や運搬までの段取りを考えて実行したり、炊事に要する時間の予測や管理を行う必要があります。複雑で細かい作業等で構成されているため、記憶障がい・認知障がいを持っている認知症の状態にある方たちにとっては、全行為をつまずきなく遂行することが難しいのです。

炊事の一連の行為は複雑な作業から成る

職員は入居者の方の能力とやる気を見極めて家事を分担

筆者のグループホームでは、入居者の方一人ひとりが有する能力や個性などが違うため、炊事の中でできることが限定的になってしまう方もいます。だからこそ職員は炊事を場面ごとに分解し、その場面の中から一人ひとりができることを見つけていました。

包丁を使える方は野菜や肉を切り、混ぜることができる方は食材を混ぜる。皮むきが得意な方、火を使って炒めることができる方もいます。また、取り分けたり、盛りつけるといった作業ならできる方もいますし、さまざまな作業を立ったままできる方もいれば、座ってであればできる方もいます。職員はこういった入居者の方一人ひとりの有する能力やそのときの本人のやる気具合等を見極め、その日そのときの炊事の組み合わせを行うのです。

思考と体を多く使う「掃除」

次に「掃除」ですが、掃除は炊事のように場面に分けることができないので、行為そのもので分けてみます。

  1. 掃く
  2. 拭く
  3. 磨く
  4. 洗う
  5. 流す
  6. 絞る
  7. 片づける

そして、それぞれの行為の実行に必要なこととして、掃除機、ほうき、ちりとり、雑巾、バケツ、水、ブラシ、洗剤といった掃除道具などの「取り扱い」があります。また、掃除は炊事と違って場面ではなく行為を実行する「場所」で分けることもできます。掃く、拭く、磨くといった「行為」を、ほうき、雑巾、ブラシなどを「取り扱い」実行する「場所」が、居間(リビング)、台所、トイレ、洗面所、脱衣室、浴室、部屋、廊下、玄関、庭など、あちこちにあるのです。

こうして見ると、行為・取り扱い・場所で構成される「掃除」も、存分に脳と体を使っています。さらに掃除は、ほかの家事と比較して身体機能をかなり使います。私たちも大掃除を行ったとき、運動後のような肉体の疲労感を感じたり、翌日筋肉痛に襲われたりします。それだけ、身体機能を使うのが掃除というわけです。

とはいえ、先述した通り筆者が勤めていたグループホームの入居者の方たちは、リハビリや運動の一環で掃除を行っていたわけではありません。リハビリや運動のためであったら「掃除療法」なんて名称がつけられてしまいそうですが、掃除を行う目的は「生活していたら汚れた・汚したから綺麗にする」ためであって、掃除していたら脳と体を使っていただけだったのです。

どこで・何を・どう使うか考えて行うことができる「掃除」

義務的に運動を押し付けないことが大切

動かないことで生活の不活性化が進み、脳も体も働きが低下していくと聞いたことがあります。しかしそこで必要に迫られて運動をしても、それが単調な運動であるほど義務的に行っていくようになるとのこと。そうなると、長続きはしなくなるのだそうです。

それならば、毎日の生活に欠かすことのできない家事はどうでしょう。義務でなく、誰にとっても当たり前の日常生活であり、それを行うことは必然です。家事を遠ざけず、誰かに代わってもらうのでもなく、少しでも良いので自分で行ってみてはどうでしょう。家事には、脳と体を使う要素がたくさん溢れています。

単調な運動では義務的になり続けにくい

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