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第160回

体験学習で高齢者の暮らしを学ぶ。介護施設と地域のかかわり

最終更新日時 2020/12/14
#親の介護
こんにちは。特別養護老人ホーム裕和園の髙橋秀明です。今回は「施設と地域のかかわり」について焦点を当ててお話をしていきます。

こんにちは。特別養護老人ホーム裕和園の髙橋秀明です。

今回は「施設と地域のかかわり」について焦点を当ててお話します。

特養は地域と家庭との結びつきを重視

特別養護老人ホーム(以下、特養)の基本方針の第二条の4にこのような文言があります。

特別養護老人ホームは、明るく家庭的な雰囲気を有し、地域や家庭との結び付きを重視した運営を行い、市町村(特別区を含む。以下同じ。)、老人の福祉を増進することを目的とする事業を行う者その他の保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めなければならない。

上述の「地域」が示す範囲は曖昧です。「歩いて暮らせるコミュニティレベルの圏域」「市町村単位」「複数市町村からなる広域レベルの圏域」など、捉え方によってはすべて"地域"。国が提唱する地域包括ケアシステムでは中学校区を日常生活圏域と設定していますから、ここでは中学校区を1つの地域として定義します。

このように特養は地域に存在するだけにとどまらず、地域とかかわり地域に根差していくことが求められると考えます。また特養だけではなく、介護老人保健施設(以下、老健)の基本方針でも地域とのかかわりについて同様に書かれています。

社会福祉法人に地域貢献事業が義務づけられる

社会福祉法の改正によって、社会福祉法人に「地域貢献事業」が義務づけられました。この事業は社会福祉法人が地域の福祉拠点となるだけではなく、地域の牽引役を担う役割を期待されていることを意味します。よって地域住民のニーズを把握し、ニーズに応える必要があります。

その1つとして当法人が実践しているのが、「認知症カフェ」です。超高齢社会の日本では、認知症の状態にある方がさらに増加することが予想されています。そのため以下の2つを目的に「認知症カフェ」を始めました。

  1. 市民の方への認知症に対する知識の啓発
  2. 認知症の状態にある方を抱える家族の悩みを聞き、心を和らげる

認知症カフェは専門職、ボランティアの方々が中心となって運営をしています。市民の方からは、「情報交換の場があり助かる」「認知症について知ることができた」などといった声が寄せられています。

地域貢献事業である認知症カフェ

体験学習で子どもが高齢者について学ぶ

施設利用者と地域住民の方のかかわりは、市民に対する「教育効果」もあると筆者は思います。筆者が以前働いていた老健では、10年位前から授業の一環として小学生が施設で体験学習をする機会をつくり交流をしていました。

これは当時の小学校の校長先生が「核家族が進み、おじいちゃんやおばあちゃんと接する機会が少なくなっている子どもたちに、高齢者の方と接する機会をつくりたい」思ったことがきっかけです。この体験学習の目的は以下の通りです。

  1. 小学生が高齢者の方とかかわる機会をつくる
  2. ①により相手の立場に立って物事を考える思考過程を養う
  3. 小学生が障害(疾病)や施設について、正しい知識を得られる

体験学習は年5回実施。プログラムは以下の通りです。

  1. 施設内見学と職員へのインタビューを通して施設や職種を知る
  2. 高齢者の方と一緒にリハビリテーション体験
  3. 車椅子体験(車椅子に乗る・自分で動かす・車椅子介助)
  4. 高齢者の方と小学生対抗運動会
  5. 小学生発案企画(ありがとうの会)

この体験を通じて小学生は大きな成長を遂げます。例えば車椅子に「乗る」「こぐ」「押す」という体験をした後は、「車椅子に乗ってみると、普段は押せるはずの自動販売機のボタンが押せなくて大変」「普段だったら気にしないたった2センチの段差を車椅子に乗っていると、乗り超えられず四苦八苦した」などと、車椅子に乗っている方の気持ちがわかるようになります。そして「車椅子に乗っている方には、『お手伝いしましょうか』と勇気をもって声かけします」と相手を思いやれるようになるのです。

体験学習の最後の頃には「耳が遠い方にはゆっくりと耳元で話をする」「麻痺がある方には麻痺側を手伝う」「認知症の状態にある方に同じことを何度聞かれても否定せずに答える」などの思いやりや、心配りもできるようになっていきます。

親も施設や地域福祉について考える機会に

また、体験学習の内容を家庭で話題にしているようで、その親世代が「施設がどんな役割を担っているのか」や「親の老い」について、考えるきっかけとなっていることもわかりました。

この体験学習が「地域の住民が介護に興味を持つ」「地域にある施設を知る」「住む地域には気軽に相談ができる施設がある」ということを認識できるようになるのです。

体験学習をきっかけに施設の利用につながったケースもありました。超高齢社会だからこそ、小さなときから老いについて学ぶことが大事です。そしてそのような学びの機会を提供することも、施設が地域に根差していくために必要なことだと考えます。

ボランティアの受け入れが介護施設の認知拡大につながる

新型コロナが感染拡大する前、筆者が働く施設では月間延150~200人程度のボランティアの方々が活動をしていました(※現在は一時中止しています)。ボランティアの方々は、施設の近隣または中学校圏内に住んでいる方がほとんどで、社会や施設に貢献したいという意志・意欲を持って活動されています。

「施設利用者とコミュニケーションを図る」「施設利用者の衣類を整理する」「レクリエーション」といった直接的なかかわりを持つものや「利用者の車椅子を掃除する」「施設の庭の整備」といった間接的なものもあります。

利用者の方はボランティアの方々がいらっしゃるのを楽しみにしていますし、ボランティアの方々も活動を通じてさらにやりがいを深めていきます。このように、ボランティアの方々が大勢施設に来るということは、地域の方々に施設の存在を知ってもらえることにつながるのです。

施設と地域を身近なものに

私たちは日常生活で地域資源を活用するために地域に出向いています。しかし利用者が施設に入所をすると、地域に出向くことが少なくなり、代わりに地域や外部の方に施設にきてもらうことが一般的です。

外部から施設への訪問は便利で効率的ですが、筆者が以前働いていた老健では、利用者が地域に出向くことが最大限できるようにさまざまな方法を考え実践していました。「衣類を買いに衣料品店に行く」「行きつけの美容院に出かける」「近隣のコンビニやスーパーに買いものに行く」などです。

大規模な施設では、すべての方を一緒に地域に連れ出すことは物理的に困難。それでも「できるときにできることをできるだけ実践する」という視点で行っていました。

利用者の方たちが地域に出るということは、利用者たちの姿や施設の活動が市民の方の目に耳に触れることになります。それがきっかけとなり、施設と地域が身近なものになると考えます。今後も、施設利用者の方が地域に出向けるように尽力したいです。

利用者の方が地域に出ると…?

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