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第136回

認知症の一人暮らしには工夫が必要 介護サービス利用のプロセスと地域の支援

最終更新日時 2020/05/21
#介護保険サービス #地域包括支援センター
こんにちは。特別養護老人ホーム裕和園の髙橋秀明です。今回は、「認知症の方の一人暮らし」について考えていきたいと思います。

こんにちは。特別養護老人ホーム裕和園の髙橋秀明です。

65歳以上の一人暮らしは年々増加しています。

2015年に内閣府が発表した「高齢社会白書」によると、65歳以上の一人暮らしの数は、男性約192万人、女性約400万人となっています。

超高齢社会の日本では、今後高齢者の一人暮らしがさらに増加すると見込まれており、認知症の方も同様です。

今回は、「認知症の方の一人暮らし」について考えていきたいと思います。

認知症の方の一人暮らしには、支障がつきもの

私が出会った認知症の方の、一人暮らしの事例をご紹介します。

一人暮らしのAさん(90歳)は、昼夜問わず1人で外出し、自宅から数キロメートル離れた場所で警察に保護されたり、「泥棒に入られた」と警察へ頻繁に電話するようになるなど、認知症の症状が見られるようになりました。

Aさんの居住地域を担当する民生委員と近所の方からSOSがあり、地域包括支援センターを介して、私が働く介護事業所のケアマネージャーが相談を受けました。

後日、ケアマネージャーと私は介護保険サービスの利用を勧めるため、Aさんの自宅を訪問しました。

家の中は足の踏み場もないほど散らかっており、テーブルの上にはカビの生えた食べ物や、変色したペットボトル、台所には食器などが積み重なっていて、部屋には異臭が漂っていました。

民生委員や近所の方によれば、以前のAさんはきれい好きで、家の中の掃除や庭の手入れをしている姿が見られたそうです。

しかし最近になって、Aさんのそんな姿を見かけなくなったそうです。

これらの情報から、Aさんはしばらく前から認知症状態で、生活に支障が出ていたのではないかと思われます。

認知症になると、これまでわかっていたことがわからなくなったり、できていたことができなくなったりすることがあります。

普段私たちは、無意識にたくさんの動作や認知能力を駆使して生活をしています。

身近なことでは料理、食事、排泄、入浴、着替え、洗濯、買い物などです。

排泄を例に挙げて、動作を細かく分解してみます。

排泄に必要な動作

  • トイレの位置を思い出す
  • トイレに向かって歩く
  • 場所を認識する
  • トイレのドアを開ける
  • 便座カバーを開ける
  • 便座に座れるように体の向きを変える
  • ズボンと下着を下ろす
  • 便座に座る
  • 排泄する
  • トイレットペーパーを切り取る
  • 拭く
  • 下着とズボンを履く
  • 水を流す
  • 便ふたを閉める
  • トイレから出る

このように、排泄に必要な動作は多く複雑です。

認知症になると、記憶障害など中核症状が影響して、それぞれの動作に困難が生じてしまいます。

介護職員が動作を分解して、「どの部分ができていないのか、なぜできないのか」、「改善は可能か、そのために何が必要か」などを見極めて支援します。

具体的には以下のように支援します。

排泄への支援方法

  • トイレの場所を伝える
  • トイレのドアに、「トイレ」と書いた張り紙をする
  • トイレに誘導する
  • 水洗レバーの使い方を伝える
  • 水洗レバーの操作を介助する

閃いている老夫婦

介護保険サービスを利用するまでのプロセス

排泄を例にしましたが、ほかにも必要に応じて一人暮らしの認知症の方を支援しています。

しかし、認知症の方の中には、一人暮らしが難しい場合があります。

「介護サービスを利用して、支援を受ければ良いのではないか」と考える方もいますが、介護保険サービスは「いつでも」「どんな場面でも」利用できるわけではありません。

また、身寄りの有無によって支援の方法は変わります。

身寄りの方がいる人の場合、介護保険サービスの利用プロセスは、以下のようになっています。

(1)本人の住所地にある地域包括支援センターに相談する

家族以外にも、行政、福祉専門職、地域住民などと連携を図って、支援の方法を協議、検討することが大切です。

また、介護保険の申請や手続きについても教えてくれます。

(2)ケアマネージャーを決める

今後の生活について本人を交えて、ケアマネージャーなどと話し合いをしましょう。

話し合うポイントは以下を参考にしてください。

  • いつ・どの段階まで自宅生活を続けられるのか
  • 自宅生活の継続が難しい場合は家族による支援は可能か
  • 家族がどのくらいの頻度で本人の様子を見に行けるのか
  • 介護保険サービスの検討
  • 施設入居のタイミング
  • 介護費用負担の上限
  • 本人の金銭管理の方法

(3)介護保険サービスの利用

話し合いをもとに、ケアマネージャーがケアプランを作成し、サービスを利用します。

本人の状態や状況に応じて、訪問介護、通所介護、短期入所サービスなどの介護サービスを組み合わせて利用します。

ただし、適宜ケアマネージャーやサービス事業者、地域包括支援センター、地域住民などと話し合い、連携を図っていくことが必要です。

介護をする女性と高齢女性

一人暮らしの認知症の方を支える、「小規模多機能型居宅介護」

制約のある介護保険サービスの中で、比較的柔軟性があるのが小規模多機能型居宅介護です。

「通い・泊り・訪問」を組み合わせたサービスを受けることができ、人とのかかわりを深めながら暮らすことができます。

小規模多機能型居宅介護の強みは、その日そのときの状態によって、サービス内容を変幻自在に変えられるところです。

ある小規模多機能型居宅介護では、一人暮らしの認知症の方の状態に応じて訪問回数を増やしたり、心配なときは宿泊してもらうなどして、様子を確認しています。

女性と介護の様子

「気づく、気遣う、行動する」私たちができること3つ

認知症の方が住み慣れた地域で暮らせるように、生活の中の困難を事前に想定して手を打つためには、専門性が要求されます。

しかし、読者の皆さんにもできることがあるかもしれません。

それは「気づく、気遣う、行動する」ことです。

Aさんの事例では、民生委員や近所の方が地域包括支援センターに相談し、介護保険サービス、訪問介護、デイサービス、ショートステイの利用にへとつながりました。

それ以降、Aさんは約1年間自宅で一人暮らしを続けられました。

また、真夏に重ね着をしていたBさん(94歳)が車道を1人で歩いている姿を見かけた住民の方が「大丈夫ですか?」とと声をかけたことがきっかけで、Bさんが生活に支障を来していることがわかりました。

ご本人にしてみたら、私たちがかかわろうとしたときに「大きなお世話」と感じるかもしれません。

しかし、事例のように「あれ?」という気づき、「大丈夫かな?」という気遣い、「大丈夫ですか?」と声をかけることや、地域包括支援センターに「気になる方がいるのですが…」と相談することで、救われる方がいるのです。

以前「気づく、気遣う、行動する」のポイントを記述した、「認知症 第41回」も参考にしてみてください。

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