こんにちは。一般社団法人元気人の向川 誉です。
近年、「目」と認知症の関係について研究が進められており、視力の低下が記憶や理解、学習などの認知機能に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
また、「見えやすさ」はQOL(生活の質)と密接に関係しており、視力が低下すると、日常生活に困難を覚えることが多くなります。
そこで今回は、「目から防ぐ認知症」をテーマに、皆さんと一緒に認知症予防について考えていきましょう。
加齢に伴う視力低下が認知機能に影響する
目の中の水晶体が濁る病気である「白内障」は、目の病気の代表格です。
すぐに失明するような緊急性の高い病気ではありませんが、視界がぼやけたり、光がまぶしく感じたりします。
白内障の原因のほとんどは加齢です。
60代で70%、70代で90%、80代でほぼ100%の人に視力低下が見られるようになります。
そして、さらに進行すると日常生活に支障を来すようになります。
人は目からたくさんの情報や刺激を受け取っており、「五感を通して脳に入ってくる情報の約8割は視覚が占めている」ともいわれています。
そのため、視力の低下が、脳の認知機能に影響を及ぼしていると指摘する研究者もいます。
認知機能低下につながる2つの要因
視力の低下が認知機能の低下につながる要因として、以下の2つが考えられています。
視力の低下が認知機能の低下につながる要因
- 脳に入ってくる情報や刺激が減少した状態が続くため
- 外出を控えて活動量が減ったり、人とのコミュニケーションが減ったりするため
視力の低下が脳の認知機能に影響するメカニズムについては、いまだ明らかにはなっていませんが、見え方を改善することで認知機能低下の抑制、ひいては将来の認知症発症を遅らせることが期待されています。
現時点では、白内障は手術による治療手段しかありませんが、最近では局部麻酔の簡単な手術で済み、日帰りも可能になっています。
白内障は年をとれば誰でもなる病気ですが、治療法が確立されており、「白内障だと、認知症になりやすいの!?」などと過度の不安を抱く必要はありません。
認知症が進行すると手術やリハビリが困難になる
認知症は脳の老化によって引き起こされますが、老化は脳だけに影響しているわけではありません。
骨や筋肉、内臓も同じように老化しており、それだけ病気や怪我になりやすくなります。
これまでは検診とお見舞い以外には病院に行く必要がなかった健康な人でも、年をとると何かと医療機関のお世話になることが多くなります。
病気や怪我の中には、手術を受けることで治るものがあり、さきほど取り上げた白内障の手術は良い例です。
白内障の治療は、簡単な手術で日帰りも可能なものですが、認知症が進んでいる場合、白内障の手術の際に全身麻酔が必要になるときがあります。
認知症が進行した人では、安静でいることが難しくなりますので、安全性や治療効果を考えると大がかりにならざるを得ないのです。
また、認知症が進行した後では、術後のリハビリへの移行も難しくなります。
認知症が進んでいる方の場合、リハビリのやり方を理解できなかったり、手順を覚えられなかったりして、リハビリを継続できないときがあります。
ちなみに、今回は取り上げませんでしたが、歯を健康な状態に保つことも認知症予防につながります。
食べ物をよく噛むことで、脳への刺激の増加や血流が良くなり、認知機能の低下が抑制されると考えられています。
虫歯一本でも、健康なうちに早期治療を済ませておくことが大切です。
早期治療で、認知症予防・QOL向上を目指そう
認知症が進行すると、健康なときと違って、同じ病気でも手術やリハビリが難しくなるというデメリットがあります。
そのため、治療できる病気は後回しにすることなく、早めに治しておくことが大切です。
日常活動を支えている「見えやすさ」の改善は、認知症予防につながると期待できるほか、QOLの改善につながります。
見え方が気になる方は、早めに専門医に相談するとよいでしょう。