皆さん、こんにちは。
認知症支援事業所 笑幸 代表の魚谷幸司です。
認知症の人を介護している話をお聞きするなかで、介護する方の立場による違いを感じることがあります。
今回は、認知症の方を介護する方の立場ごとに、どのようなケースが多いか、認知症の方とどう付き合えば良いかを考えていきたいと思います。
実子は、親の認知症を「早く受け入れること」が重要
実子の場合は、親が認知症であることの受け入れに時間がかかる場合がよくみられます。
これは当たり前の話で、「自分を育てた親が認知症になるわけがない」との思いがあるからにほかなりません。
受け入れることができれば、親子ゆえわかり合うことが多く、うまく付き合えるようです。
なので、「早く」受け入れることが重要なのです。
では、どうすれば早く受け入れられるのでしょうか。
これは実子の場合に限ったことではありませんが、認知症を正しく理解することが一番の近道です。
本や新聞、講演といった情報の中には間違いが見受けられることもあり、かえって不安にさせるものが少なくありません。
私がいつもおすすめしているのは、認知症の方本人や介護経験者が書いた本を読むことや、認知症を介護している人たちの集まりに行くことです。
同じ立場や境遇にあるからこそ、そこで書かれ、話されることのほとんどが認知症の「本当のこと」なのです。
さらに、「つらいのは自分だけではない」と知ることで、受け入れられないまでも、気持ちが楽になるのです。
そんななか、「親だからこそきちんと介護しないと」と完璧を目指す方もいます。
その意気込みは素晴らしく、間違いではありません。
ただし、完璧を目指すあまり、少しでもうまくいかないと「自分は何もできていない」とネガティブに考えるようになる可能性があるので注意が必要です。
適度な手抜きは決して悪いことではないことを、頭の片隅にでも入れておくことが大切になります。
義理の親には、「上から目線」に注意
実子の配偶者の場合、高い確率で義理の親が認知症であることを受け入れられるようです。
義理の親との間には、実の親ほどの深い関係性がないため、ある程度割り切って考えられるということでしょう。
ただし、認知症とはどういうものかを理解することは必要になります。
間違えた理解をしてしまうと、介護自体はできても、「上から目線」の判断になって関係が悪くなりかねませんので、正しい理解が大切です。
配偶者は、「介護される前の接し方」が介護時に影響する
配偶者の場合、「夫が妻を介護する場合」と「妻が夫を介護する場合」で違いがあるように思います。
夫が介護する場合は「こんなときはこうするのが良い」と形から入る傾向にあるのに対し、妻が介護する場合は「理屈抜きでまずやってみてから考える」傾向にあるようです。
それは介護を仕事のように考えるか、育児と似た考えで向き合うのかの違いによって起こるのかもしれません。
「形から入る」傾向にある夫の介護が悪いわけではなく、認知症の程度に関係なく熱心な方が多い印象です。
こう感じるのは、私が認知症グループホームで勤めていたとき、妻との面会に足繁く通い、家族の集まりにもほぼ毎回のように参加されていた方がいたからかもしれません。
その方たちのほとんどが、「いろいろと迷惑をかけてきたから」と苦笑いをしながら穏やかに接しているのです。
ただし、見聞きして学んだことを完璧にしようとするあまり、少しでもその通りにいかないと強く当たってしまう欠点があります。
「そんなときもある」と柔軟な心を持つことが大切です。
一方、「まずやってから考える」傾向にある妻が介護する場合、しっかり介護している方が多くみられます。
ただし、妻の夫への介護時の接し方には、人によって差があることを感じます。
この「態度に差が表れる原因」は、「これまでの夫の妻への接し方の差」です。
つまり、夫の立場の方は、今の接し方を考え直すことが、結果として将来の介護にかかわることを認識しておいた方が良いと思います。
これに気がついてから、私は多くのことで妻に対して、「まずは自分から」接し方を考え直し、立場が「対等」だと意識するよう、心がけています。