看護師が働く介護保険事業所
介護保険事業では、看護師がさまざまな分野で活躍しています。中でも次のような施設で業務にあたっています。
- 1.施設に通うサービス
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- 通所介護(デイサービス)
- 地域密着型通所介護
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
- 2.入所または短期間入所する施設
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- 特別養護老人ホーム(特養)
- 老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 3.施設で通いや宿泊を行うサービス
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- 小規模多機能型居宅介護(小多機)
- 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)
上記の中には配置基準などで看護師が必要でないものもありますが、各施設でさまざまな役割を担っています。
介護施設は病院などと違い、治療をする場ではなく日常生活を営む場所です。
利用者や家族の思いが尊重される場所でもあります。その中で、利用者の健康状態をアセスメントし、安全かつ安心して介護サービスを受けられるかどうか判断します。
看護師の役割は、利用者の感染症や転倒など、健康障がいの防止および重度化の予防、医療ニーズへの相談・対応など、幅広い業務を医師やリハビリ職ケアマネジャーや介護職などと連携・協働して行います。
各施設における看護師のタイムスケジュール
デイサービスの場合
まずは、デイサービスにおける看護師のタイムスケジュールと業務内容です。
8:30 出勤
8:30~9:00 ミーティング(その日のご利用者さんの様子や経過などについて申し送り)
9:00~10:00 来所したご利用者のお迎え・血圧や体温などのバイタルサイン測定・利用者の昼食の内服確認
10:00~11:30 内服確認、入浴前後のバイタルサイン測定
11:30~13:00 食事前準備、食事介助、配薬、口腔ケア
13:00~14:00 休憩
14:00~15:00 レクレーションの参加、排泄介助、記録
15:00~15:30 食事介助(おやつ)
15:30~16:30 利用者帰宅のお見送り
16:30~17:30 片付け、翌日の準備、ミーティング(その日のご利用者さんの様子や連絡事項などについて申し送りや記録)
17:30 退勤
デイサービスでは、利用者の数が10~30人超と施設の規模によって看護師さんの配置基準は変わりますが、おおむね1~2名が配置されています。
介護職員やリハビリ職・相談員など、ほかの職種とチームを組んで協力しながらサービスの提供を行います。利用者の緊急時は、かかりつけ医や家族との連絡なども行います。
入所施設の場合
施設の種別や看護師の夜勤があるかないかによっても、さまざまな勤務形態があります。そこで今回は特別養護老人ホームを例にタイムスケジュールを紹介します。
8:30 出勤
8:30~9:00 ミーティング(入居されている方の状況確認。夜勤者から様子や経過などについて申し送り)
9:00~10:00 入居されている方への医療行為(服薬の管理や胃ろう、喀痰吸引、点滴など)
10:00~11:30 入浴前後のバイタルサイン測定と健康観察
11:30~13:00 食事前準備、食事介助、配薬、口腔ケア
13:00~14:00 休憩
14:00~15:00 レクレーションの参加、排泄介助、記録
15:00~15:30 食事介助(おやつ)
15:30~16:30 利用者帰宅のお見送り
16:30~17:30 片付け、翌日の準備、ミーティング (入居されている方の様子や連絡事項などについて申し送りや記録、夜勤者への引継ぎ)
17:30 退勤
そのほか、急変時や緊急時のオンコール対応や入退院のサポート、入居されている方が看取りや緩和ケアなどを希望されている場合にはその調整や支援を行います。
入所施設はその場所が利用者の住まいになるため、入居時には今後の見通しや現在の病状把握、家族の受け止め方などの詳細を確認するなど、デイサービスと比較すると業務は多岐にわたります。
小規模多機能型居宅介護(看護小規模多機能型居宅介護)の場合
デイサービスのタイムスケジュールとほとんど同じですが、小多機(看多機)の場合は、適宜または定期的に自宅に訪問を行い、自宅での生活状況の確認などがプラスされます。
これらの高齢者施設においての看護師さんの役割は非常に多岐にわたります。
大きな役割をまとめると、利用者や入居者の健康管理へのアセスメントです。
小多機(看多機)は医療機関と異なり、医師が不在であったり、施設によっては看護師さんが1名しかいない場合もあります。
そのため、利用者や入居者の急変時には、看護師が対応を判断することが珍しくありません。さらに、配置される看護師の人数が少ないので、一人ひとりの責任が重くなることが挙げられます。
介護職員やリハビリ職、相談員と役割分担を行いながら、ケアを実施するため、多職種との連携・協働、コミュニケーション能力も求められます。
また、病院やクリニックなどの医療機関では治療が優先されますが、介護施設は生活の場所になるため、必ずしも治療が優先されない場合もあります。看護師は医療と介護(生活)の橋渡し役を担い、利用者が望む生活を実現できるよう支援していく役割があります。
重責を担っているように感じますが、同じ生活者として、看護の視点を持ちながら生活を支えてくれる非常に頼りになる存在です。

新型コロナ感染症拡大に伴い施設への派遣も推進
2019年から新型コロナ感染症の蔓延とともに、施設でもさまざまな感染症対策が行われました。その中心を担ったのも看護師です。
新型コロナが流行する前から、施設では感染症に対しての対策や施設で感染が発生した際の対応マニュアルが存在していました。
インフルエンザやノロウイルスなどの感染症は、高齢者施設で蔓延すると命を奪いかねないものです。
そのため、普段から施設で対策を行っていました。インフルエンザにおいては、予防接種の実施や発熱時の鑑別までのフロー(流れ)をマニュアルにして対応していました。
ノロウイルスでは、調理の際に衛生管理を徹底することや、感染者が発生したときの消毒など、各施設の看護師が尽力されてきました。
このように、さまざまな感染対策を施したものの、今回の新型コロナウイルスの感染拡大をコントロールするのは困難でした。
介護施設は生活の場であり、医療職が少ないので、新たな感染症の対応に関しては後れを取っていたのも事実です。
その中で、高齢者施設でも新型コロナウイルスの感染報告が多く聞かれましたが、病院のベットはどこも満床で、高齢者が入院できない状況が続きました。
そこで、国は状態が安定した方を、早期に施設へと退院することで、病床の回転を上げ、より重篤な方を治療するという方針を打ち出しました。
その方針に沿って、各医療機関が介護施設に看護師の派遣を行った場合、看護師派遣補助を出すことを決め、その報酬単価を通常の3倍まで引き上げました。
この取り扱いは、まさに病院の病床ひっ迫を食い止める手立てだったかと思いますが、感染者急増の波には追いつけなかった印象があります。
私が勤める町田市では、感染者急増時は病院自体が人員的にもひっ迫し、看護師を派遣できない状況が多く見受けられました。
ただ、制度としては今後もぜひ活用できれば良いと思います。介護施設において、看護師さんをはじめとした医療職の数は非常に限られており、その判断がさまざまな対策の鍵を握ります。
医療関連の設備も病院と比較して非常に限られています。その中で、新型コロナウイルスの感染拡大に対して、病院などの医療機関から看護師さんを派遣してもらえるのは非常に心強いことです。ぜひこの制度が日常的に活用できるよう私自身も行政などに働きかけを今後も行いたいと考えています。

高齢者施設や高齢者へのサービス提供において看護師は必要不可欠です。
今後も看護師さんは非常に重要な役割を担っていくかと思いますが、ぜひ高齢者だけではなく、障がい者や児童も含めた福祉の分野でも働いてもらい、生活を手助けしてもらうことを望みます。