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第73回

介護事業所の「実地指導」とは?「監査」との違いや内容を解説

最終更新日時 2021/09/24
医療と介護の連携支援センター長谷川です。介護事業所では、設備や運営、サービス内容が適正に行われているかを調査するため、定期的に「実地指導」が行われています。その目的は、「利用者の権利保護」と「サービスの質の確保と向上」に理由があると考えられます。今回は、実地指導の意義や内容について、ご説明いたします。

医療と介護の連携支援センター長谷川です。

今回は介護事業所を運営されている方が聞くとドキッとする「実地指導」についてご説明させていただきます。

実地指導とはそもそも何なのか、また居宅介護支援事業所が受ける実地指導の内容について、ご説明させていただきます。

介護事業所への実地指導の内容

実地指導については、大きく2つの方法があります。

1つは集団指導です。介護事業所に集合してもらい、おもに講義形式で行うものです。もう1つは個別実地指導です。個別の実地指導は、事業所や施設を実地指導者が訪問し、関係書類の閲覧、関係者への聞き取りなどを実施。法令などで定める人員や設備・運営・サービス内容に関する基準を満たしているか、介護保険給付費をはじめとする請求などに関する事項が適正に行われているか確認を行います。

この指導については、市区町村で規則が定められています。町田市が指定権限を有する介護サービス事業者などについては、原則として6年に1回、市が所轄する社会福祉法人が運営する介護老人福祉施設については3年に1回、その他の介護サービス事業者などについては必要に応じて実施することになっています。

個別実地指導では実地指導者が事業所を訪問

これは、介護事業所であれば必ず行われます。現在は新型コロナウイルス感染症の予防や緊急事態宣言の影響もあり、事業所に赴く方法ではなく、市に来所してもらって行っています。またこの実地指導は概ね1ヵ月前に事業所に伝えられ、日程の調整を行います。

では、どうして緊急事態宣言下でも実地指導を行うのでしょうか?

当該介護保険サービスにおける「ご利用者の権利保護」と「サービスの質の確保と向上」に理由があると思われます。

居宅介護支援事業所の受ける実地指導を例に取り上げてみましょう。

新たな要件が加わることもある制度改正のタイミングは、どの事業所でも特に深く注意を払っていると思います。その中でも、2018年4月の介護報酬改正で加わった部分を次で説明します。

2018年の介護報酬改正での変更点

2018年4月から、契約時の説明で利用者の意思に基づいた契約であることを確保するため、ケアマネージャーは以下の2点を説明する事が義務になりました。

  • ケアプランに位置付ける介護保険事業所について、利用者は複数の事業所の紹介を求めることが可能であること
  • その事業所をケアプランに位置付けた理由を求めることが可能であること

これに違反した場合は、報酬が減額になりました。初月は所定単位数の1/2に相当する単位数、以降は0となるため、運営基準減算としてはかなり厳しいものです。

利用者や家族への説明は、文書の交付に加えて口頭でも行い、それを理解したことについて署名を得る必要があります。実際の事務作業も増え、減算も非常に厳しい内容が加えられました。「なぜこの制度改正が行われたか」と言うところが、今回のポイントかと思います。前述で述べた通り、根底に「利用者の権利保護」があるからだと考えています。

利用者は、申請を行ったうえで、介護保険でのサービスを利用します。当たり前のことですが、介護保険を必要だと思わない限り、利用には至りません。しかし、多くの利用者やご家族は、介護保険の制度やサービスの内容についてよく知らないという状況があります。

例えばデイサービスを利用したいと考えたとしても、利用者の目的が、「機能訓練」「入浴」「社会参加活動」なのか、利用方法も「短時間型」「1日型」なのかで選択するサービスもさまざまです。また、お住まいの地域にはよっては、希望に添えるサービスがない場合などもあります。利用者やご家族の選択と決定が原則ではありますが、ゼロから考えることは容易ではありません。

頼りにしたいケアマネージャーの存在

そこで頼りになる道案内係が、ケアマネージャーとなります。ケアマネージャーは日頃からそれぞれのデイサービスの特徴や運営について情報収集を行っています。その中で利用者の希望に即したデイサービスを紹介して、利用につなげます。しかし、ごく一部のケアマネージャーの中には、付き合いがあるような事業所や馴染みの事業所、自法人の事業所などを紹介するケースも存在しています。数少ない事例ではありますが、そのことによって利用者の本当の意思ではないサービス選択が行われている可能性があります。そのようなことが起きないよう、契約時に上記のような説明を義務として行うように法律に文言が加わったのだと思われます。

利用者やご家族自身にも「複数の事業所を知る権利」と「利用を求めることができる権利」があることを周知のうえ説明し、同意を得ることとしています。さらに、第3者が見てもその説明と同意がなされていることが確認できるよう、署名を得る必要があるとしています。

町田市でも、この内容について、制度改正時の集団指導、各事業所への通知、専門職連絡会での周知を行っております。その中での個別の実地指導時にこの説明同意、署名の部分が確認できず、介護報酬を返還することになったケースも起きています。

そのような経験から、市内の居宅介護支援事業所は、契約書や重要事項説明書などを集めてこれ以上の指導による返還が起きないような対策を行いました。実地指導は事業所へ介護報酬の返還が目的ではなく、利用者の権利をしっかりケアマネージャーから伝えてもらうための取り組みであり、利用者保護の観点から実現されたのものだと考えます。私自身も指摘を受けたことがあり、当時は涙が出る思いでしたが、今考えると実地指導を受けて非常に良かったと感じています。

実地指導と監査の違い

実地指導と監査は大きく違います。冒頭でお伝えした「ドキッとする部分」につながりますが、実地指導はあくまでも事業所のサービスが良いものという前提で、利用者の権利がしっかり守られているかを検討し、行政とともにより良いサービスが提供できるようにしていくものです。

近い言葉に「監査」があります。この監査は、法令違反や不正行為の疑いがある場合に行政の権限で行うもので、前触れなく実施されます。この実地指導や指導監査を同一のものだと勘違いされている方が多くいらっしゃると感じています。そんな勘違いのために、「指導はドキッとする嫌なもの」だと受け止められているのかもしれません。

実地指導を受けて良かったこと

実地指導を受けて良かった理由としては、以下の2点があります。

  • それまで行ってきた、ケアマネジメントプロセス(1.インテーク、2.アセスメント、3.プラン作成、4.モニタリング、5.再アセスメント)の作業が自分なりや事業所なりになっていないかの確認及び修正ができた。
  • 事業所目線になっている部分をリセットして、利用者本位の提供になっているか、ご利用者の権利がしっかり守られているかなど普段の業務の中では落としがちなものの再確認が行える。

本来の職能として果たさなくてはならない部分を再確認でき、あわせて自身の業務や事業所としての業務が法令に即しているのかを確認することもできたと思います。2021年は介護報酬改定が行われ、居宅介護支援事業所には新たな基準が求められました。

利用者に提供される、サービス種類・サービス事業所が不当に偏ることなく、公正中立性を図る観点から、居宅介護支援の提供の開始(契約時)に、以下の (1)(2)について文書の交付及び口頭で丁寧な説明を行い、理解したことについて署名を得る。

  1. 前6ヵ月間に事業所が作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合
  2. 前6ヵ月間に事業所が作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスのうち、同一事業所によって提供されたものの割合(上位3位まで)

なお、介護報酬改定前の2020年3月以前に契約を行っている利用者については、次のケアプランの見直し時に説明を行うことが望ましいです。 改正後、事業所は契約書や重要事項説明書に盛り込むなどの対応を行っています。このように手間がかかる変更を求められるのも「利用者の権利保護」「サービスの質の確保と向上」そして「中立公正」を求められているケアマネージャーの仕事だからこそかもしれません。

ケアマネージャーに求められていること

今回は介護事業所への実地指導について説明させていただきました。デイサービスや特別養護老人ホームなどは、より細かい基準があり、それに基づいて指導が行われています。実地指導を乗り切ることは、プレッシャーでもあり、事業所にとっては大変なことです。しかし、施設の健全な運営・基準履行を第三者の目で確認できるというメリットがあると考えれば良いのかなと思います。

この健全な運営・基準履行を最低限果たすことが、介護事業所としても求められていることだと思います。大変だと思わず、活用できる資源の一つと考えていけば、こんなに頼りになることはないとも感じます。

各保険者で対応が一部違う部分があるので、実地指導を受ける際に困ったら、保険者に事前に確認を取るのもありだと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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