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第61回

ケアの手も届かず死亡する「孤立死」。町田市における5つの取り組みを紹介

最終更新日時 2021/04/16
#看取り・終活
町田市医療と介護の連携支援センター長谷川です。今回は、「高齢者における地域での孤立と、安心して暮らすための取り組み」についてお話しします。

町田市医療と介護の連携支援センター長谷川です。

今回は、「地域における高齢者の孤立と安心して暮らすための取り組み」についてお話しします。この問題は、私が勤務する町田市だけでなく、日本全国で取り沙汰されていて、ニュースでも見かけることがしばしばあります。身近になりつつあるこの問題について、皆さんと共有したいと思います。

亡くなったことすら気づいてもらえない「孤立死」

まずはじめに、そもそも「孤立」とはどのような意味なのでしょうか。そしてそれは、「孤独」とはどう違うのでしょうか。辞書で調べてみると、以下のように書いてありました。

  • 孤立:他者と何らかの群を形成せずに、単独の状態にあって他者とのつながりや助けのない状態にあること。社会から孤立した生活を送っているものがあたる。
  • 孤独:ほかの人々との接触や関係、連絡がない状態を一般に指す。

続けて、「孤立死」と「孤独死」の意味についても、調べてみました。孤立死とは、地域社会との繋がりを持たない状態で死に、その事実が長期間誰にも気づかれなかった状態を指しています。孤独死とは、誰にも看取られずに死ぬことで、地域やサービスとはつながっていても、亡くなるときは周囲に支援者が居なかった状況も指すとあります。

私が働く町田市において、孤立死の定義は「社会的に孤立し、十分なケアを受けられない状態にあり、死亡場所が居宅内で、死後7日程度経過した後に発見されること」です。

孤独死は誰にでも訪れます。人は基本的に1人で亡くなりますので、事故などにあわない限り複数での死は起きません。亡くなる前日や、死の直前までケアを受けている状況であっても、人は1人で亡くなります。

ただ、孤立死は医療や介護、福祉など誰からもケアを受けられない状況で亡くなってしまうことを指しています。上記に示した町田市の例で言うならば、介護保険などを受けていれば、週1でサービスを提供されている状況です。

つまり本当の孤立死とは、「亡くなったことすら周囲に気づいてもらえない状況」を指すのではないでしょうか。

十分にケアを受けられず死後の発見も遅れる孤立死

町田市でも単身世帯の高齢者の方や、高齢世帯のみの方の増加に伴い、孤立した生活が一般的なものとなっていきました。このような状況の中で、孤立を防止するには人と人のつながりを持った温かいコミュニティを目指すことが大事です。

また、高齢者を含める地域を構成するすべての人が、さまざまなネットワークを通じてコミュニティを活性化していくことが必要であり、さまざまな企業や団体から協力をいただいて孤立防止に努めています。

町田市における孤立死を防ぐ5つの取り組み

前述したように、町田市では単身世帯の高齢者の方や、高齢夫婦のみの世帯が増加しています。単身世帯の高齢者の方は、1990年の段階では2,648世帯でしたが、2010年にはその約6.1倍の1万6,104世帯となっており、高齢夫婦のみの世帯は、1990年の5,450世帯から2010年には2万34世帯で約3.7倍です。

私はこの事実を知って、この地域で働く者として危機感を覚えています。すべての方が対象というわけではないですが、見守り対象として念頭に置かねばならない人が、3・6倍に増加しているわけです。

一方で、私も含めてそれを見守る立場の者の人数については、こんなにも増えていません。これを補うためには、多様な企業・団体からの協力が必要不可欠となります。そこで町田市で実際に行っている活動を5つ紹介させていただきます。

1:高齢者見守り支援ネットワーク

町田市では見守りの必要な高齢者の方に対して、その方の状態に早く気づいて必要な支援を行なうために「高齢者見守り支援ネットワーク」を各地域で構築しています。

これは、地域の活動を支える町内会・自治会や高齢者支援センターなどの関係機関がネットワークを構築し、近隣の人々が協力して誰もが安心して住みなれた地域に長く暮らし続けられる地域づくり・町づくりを進めていく仕組みです。

ネットワーク構築に向け、高齢者支援センターは市役所に町内会や自治会の方からのご意見・ご相談を募集。そして、対象となる地域に向けてアンケート調査などを図り、総意としてこの見守りネットワークの必要性を検討していきます。そのうえで、それの必要性が十分にあると判断されれば、活動を開始していくわけです。その際に対象となる地域では、「積極的な見守り対象者」と「さりげない見守り対象者」の方の聞き取りを行います。

積極的な⾒守り対象者
地域の方が1日1回の声掛けなどを行う。
さりげない⾒守り対象者
「⾬⼾が開いていない」「郵便物や新聞がたまっている」といったトラブルの兆候を感じた際のみ、ご家族や⽀援センターに連絡する。

「積極的な見守り対象者」の方には、地域の方が1日1回の声掛けなどを行い、「さりげない見守り対象者」の方には、「雨戸が開いていない」「郵便物や新聞がたまっている」といったトラブルの兆候を感じた際のみ、ご家族や支援センターに連絡をすることになっています。個人情報保護の観点から、見守られる対象者についても取り決めをしっかり行い、内容については関係者間でのみ共有されるのです。

2:見守りネットワークまちだ

「見守りネットワークまちだ」は、市内で活動する民間協力事業者と警察、市が連携し、地域に住む高齢者を見守るためのネットワークです。お互いに顔の見える関係となり、連携した活動を行っています。

この取り組みは2019年5月の時点で、67の事業所が市内にある589ヵ所の拠点を中心に活動をしています。参加している事業所の種類は、以下のようにさまざまです。

  • 医療・介護関係
  • 鉄道会社
  • 新聞販売店
  • 電気会社
  • ガス会社
  • 銀行
  • コンビニ
  • 薬局
  • コーヒーチェーン
  • スーパー など

活動の例として、新聞販売店の方の場合は、2・3日新聞がポストにたまっている状況を確認できれば、支援センターに連絡を入れていただきます。また、コンビニやスーパーの場合は、毎日来店される方や「気になる方」についても連絡をもらう手はずです。

市内にある高齢者支援センターは13ヵ所しかありませんが、事業所の数(589ヵ所)をあわせると600を超える見守りの拠点があることになります。早期の気づきが問題を重篤化させない一歩であると考えて、日々協力いただいております。

地域の商店などが高齢者の見守りに参加

3:あんしん連絡員・協力員制度

高齢者の生活を支えるために、「自助(ご本人自身)」「共助(地域)」「公助(行政等)」とが、三位一体となって支えていく必要があります。そのために、高齢者の方が住む地域市民の方々には、高齢者支援センターへボランティアとして登録いただくことをお願いしています。高齢者の見守り活動を実施してもらう、「あんしん連絡員」「あんしん協力員」になっていただく制度です。

あんしん連絡員とは、地域に住む高齢者の方を「さりげなく見守ってもらう方」のこと。申し込み先は高齢者支援センターで、町田市内に住む市民の方であれば、あんしん連絡員同様に誰でも登録が可能です。

あんしん協力員とは、あんしん連絡員と同様に地域に住む高齢者の方をさりげなく見守ったり、高齢者支援センターを地域に紹介したり、あんしん連絡員を取りまとめていただく方です。町田市内に住む市民の方であれば。どなたでも登録することができます。

このような形で、市民の皆さまのお力を借りながら、地域で見守るネットワーク構築も進めております。

4:高齢者あんしんキーホルダー

2012年4月より、「高齢者あんしんキーホルダー」事業を高齢者支援センターで実施しています。高齢者あんしんキーホルダーとは、高齢者の氏名や住所、緊急連絡先などの情報を、担当する地区の高齢者支援センターへ事前に登録するものです。もし外出先で倒れたり、事故に遭遇して救急搬送された際に個人情報の確認が行えるようにします。

このキーホルダーを持っていると、搬送先の病院や保護をした警察などが、高齢者支援センターへ連絡がいきます。それを受けた高齢者支援センターは、あらかじめ登録いただいた緊急連絡先に連絡をしたり、その方の情報について提供を行うわけです。2019年度までに約2万人の方が登録を行っており、町田市の高齢者人口(約12万人)のうち、2割弱の方が取得しています。この取り組みは全国的に広がっており、現在注目を集めています。

5:みまもりかるた

さまざまな活動を行ううえで、啓発活動も必要となります。その一環として、地域の方が高齢者の方を見守る際のポイントを楽しみながら知っていただけるよう、「みまもりかるた」を作成しています。地域の方が集まる場で、これを使って見守りについて学んでいただくことを目的としています。現状はコロナ渦なので、なかなか開催できていません。

今後の課題は若年層の参加をどう促すか

今回は地域における高齢者の孤立と安心して暮らすための取り組みについて、主に町田市での取り組みを紹介させて頂きました。町田市でもさまざまな取り組みを行っていますが、それでもまだ十分ではなく、実際に町田市においても「孤立死」と認定される事例は起きています。

新型コロナの感染拡大で、地域での見守り活動が阻害されていることも要因の一つであるのですが、「できない」と言っているだけでは何もはじまりません。このような見守り活動は今後、他人事ではなく自分事として捉えていただけるよう、特に若年層にも参加してもらうことが課題と考えています。全国のさまざまな先進的な取り組みも参考にしながら、「安心して暮らせるまちづくり」を推進していきたいです。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

若年層の参加が今後の課題か

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