こんにちは。ケアマネジャーの小川風子です。今回は「経済的に不安があるとき、介護保険サービスを利用するにはどうすれば良いか」についてお話させていただければと思います。
経済的理由から介護サービスを断る人も
私は居宅のケアマネジャーをしており、利用者さんにいろいろな介護保険サービスを紹介するのがお仕事です。その人の状態をアセスメント(聞き取り)して悩みを聞き、生活の改善や家族の負担が減るような提案をします。
プロとして勉強した知識や経験を活かし、必要な介護保険サービスを提案するのですが、ご本人やご家族から「そのサービスはいりません」と断られるときがあります。理由を尋ねると、経済的な問題からであることも決して少なくありません。
原則として、介護保険サービスを利用するには、1・3割の自己負担が発生します。サービス内容によってはすべて自費な場合もあり、必要なお金だからと払える人ばかりではありません。費用が捻出できないからと、絶対に必要なサービスを利用できない人も数多くおられます。
そういった方々へのケアプランをどう組んでいくのか考えるのも、ケアマネジャーの大切な役割です。この記事で皆さんも一緒に考えていきましょう。
介護保険内でも1・3割は自己負担
まず第一に、「払えるお金がないけど介護保険サービスを利用できますか?」という質問に関しては「無理です」としか答えられないのが正直なところです。後に説明する生活保護受給者やそのほかの公費がない限り、介護保険サービスを利用すれば自己負担額は必ず発生します。
自己負担額を割引する、もしくは支払いを免除するというのは認められていませんしそもそも介護保険サービスは、交渉次第で安く利用できるような制度ではないのです。実際に仕事をしているうえで、「お金がないからサービスを受けられない。どうにかならないですか?」と言われて心苦しくなることも多いのですが、公的なサービスである以上、この原則を変えることは難しいということをご承知ください。
費用を抑えることはできる
ただそのうえで、ルールの中で費用を抑えることはできます。例えばですが、デイサービスを利用するなら少人数制ではなく、大人数のところで時間も短くできればその分費用は抑えられますし、食事代は約300円から800円までと幅広いので、安いところを選ぶと支払いは少なくできます。ショートステイなどの入所サービスなら、入所する部屋の状態(個室か大部屋か)や、加算をどれだけ取っているかで費用が変わることもあるのです。
難病などで訪問看護が医療保険適応となり、医療保険の上限額や公費で負担が少なく済む場合もありますので、まずはケアマネジャーに相談してみてください。
生活保護制度を利用する
とはいえ、それでも介護保険サービス利用はもとより、生活自体に困窮している方は「生活保護」を受給するという方法があります。私が担当している利用者さんでも何人かが生活保護の方はいますし、担当しているうちに生活が成り立たなくなり、手続きをして福祉につなげた方もいます。
生活保護は賛否両論のある制度ではありますが、これのおかげで命が助かっている人が多いのも事実。そもそも介護保険を利用している方ですと、「経済的に苦しくなったから、生活の立て直しのために働いてお金を稼ぐ」というのは難しいことがほとんどです。必要であれば、遠慮なく申請すべき制度であると私は思うのです。ただ、生活保護費を受給したら下記のことについて心配する方もいます。
- 今までできていたことができなくなるのでは?
- 自由な生活ができなくなるのかも?
これらの答えについてですが、「介護保険サービスに限っては、イエスでもありノーでもある」というのが正直なところです。介護保険サービスの利用については、生活保護費を受給していても基本的に問題はありません。
とはいえ、いくつかのルールは存在し、一般的な方とまったく同じではない場合もあります。生活保護も介護保険と同じで、市町村の考えややり方に差があるのです。ですから一概に全国同じであるとは言えませんが、私がいくつかの市町村で生活保護の利用者さんを担当し、そこで経験した注意点をいくつか説明していきましょう。
生活保護で自己負担がない場合はサービスが制限される
まず、介護保険を受給している方の自己負担ではない部分については、公費で直接事業所に支払われます。例えば、訪問介護の身体介護は1時間で約400単位なので、1割負担の方でしたら自己負担額である400円ほどを事業所に支払うのが一般的です。これが、生活保護の場合、その400円も公費で直接事業所に支給されるので、実質支払い義務がないということになります。
ただし、これは役所の生活保護課が必要を認めた介護保険サービスに限ります。ケアマネジャーが生活保護の方のケアプランや利用票などを役所に提出し、そこでOKが出れば介護券が事業所に発行されます。そうなると、自己負担分を払わなくてもよくなるのですが、これはあくまでも役所の許可が出た場合のみです。
ケアプランを作成する担当者会議に担当の生活保護課のケースワーカーが参加し、利用者にとってサービスが適正かどうかをチェックすることもあります。本当に必要であれば認めてもらわなければいけないのですが、本人の希望がすべて通るとは限りません。
例えばですが、以下のことをケースワーカーから言われることがあります。
- 福祉用具の販売や貸与は最も安いものに
- 特養やショートステイの入所の際は大部屋の費用しか出さない
公費で負担されているのですから費用を抑える努力が必要というわけです。
全額自己負担のサービスは支払いが発生
また注意点として、介護保険の自己負担分は免除されても以下については支払わなければいけません。
- 自費部分
- デイサービスの食事代
- 入所の際の食事代
- 自費サービス部分 など
あくまでも、「介護保険の自己負担額を払わなくて良い」だけです。とはいえ、自己負担さえ発生しなければ、気にせずに必要な介護保険サービスを利用できるという方がほとんど。生活保護はとてもありがたいシステムだと思います。
介護保険サービスを利用するにあたっての金銭面での不安というのは、ほとんどの方が抱えておられます。珍しいことではないのですが、それを言い出せずに必要なサービスを利用せず、状態が悪くなる方もいらっしゃるのです。
今回紹介した方法以外にも費用を抑える手段はありますので、経済的な不安もきちんとケアマネジャーに伝え、対策を考えてもらいましょう。