こんにちは。ケアマネの小川風子です。
福祉用具貸与(レンタル)という介護サービスは利用者数は大変多いのですが、介護保険を利用していない人にはあまりなじみがありません。在宅で要支援・要介護状態の人が生活するために、一番大切なことは環境整備。安全に生活できる環境を整えることです。
そのために、介護保険を利用するにあたり、まずはケアマネジャーが本人や家の状態を詳しく見せていただきます。そのうえで必要があれば、まずは住宅改修や特定福祉用具の購入を済ませ、ほかにも必要な福祉用具があるかを検討。その福祉用具が介護保険のレンタル対応であれば、ケアプランに組み込み、利用を開始するというわけです。
これだけ優先度と需要の高いサービスながら、一般的にはあまり知られていない福祉用具貸与。今回は福祉用具貸与で大切なところ"のみ"簡単にわかりやすく解説していきましょう。
介護保険内でレンタルできる福祉用具は11種類
まず福祉用具貸与の物品は11品目ありますが、要支援・要介護者がすべての福祉用具をレンタルできるわけではありません。
手すりやスロープ、歩行器、歩行補助杖は、要支援1以上の認定が出ていれば誰でも借りることができます。介護保険でこれらをレンタルし、在宅生活をされている要支援の方も多いです。
一方、車椅子(付属品含む)や特殊寝台(付属品含む)、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊探知機、移動用リフト(つり具部分を除く)は、原則として要介護2以上の方が、介護保険を利用してレンタルできます。要支援1~要介護1の方がこれを借りたい場合は、のちに説明する例外的貸与の申請か、自費レンタルを利用することとなりますね。
そのほかの福祉用具としては、要介護4以上で自動排泄処理装置がレンタルできます。
福祉用具の詳細
- 特殊寝台
- いわゆる介護ベッド。モーターつきで、足元の上下が可能。
- 歩行器
- しかるべき規定にのっとった、しっかりとしたタイプのもの。
- 歩行補助機
- 一本杖ではなく、多点杖や松葉杖のような、しっかりと支えられるもの
福祉用具の説明をすると、特殊寝台はいわゆる介護用ベッド。モーターが付いて高さや頭、足元の上下ができるものです。歩行器はしかるべき規定にのっとった、しっかりしたタイプのものが介護保険対応となります。いわゆる、市販されているシルバーカーとは少し違うものとなりますね。
歩行補助杖も一本杖(介護保険対応ではない)ではなく多点杖や松葉杖のような、しっかりと支えられるものがレンタルできます。
介護保険が適用できる福祉用具は、「それがなければ生活できない」「安定性が高いもので、簡素な代替品では対応できない」場合のみとケアプランに位置づけています。
その他の福祉用具としては、要介護4以上で自動排泄処理装置がレンタルできます。
介護保険でレンタルすると、専門家の選定・モニタリングが受けられる
福祉用具はホームセンターでも通販でも購入できます。そのため、介護保険を使ってレンタルできることを知らずに、自費で購入してしまう方も少なくありません。中には、中古品やレンタル品に抵抗があるので、新品を購入される方もいらっしゃいます。
しかし、福祉用具に関してはケアマネジャーや福祉用具専門相談員、もし可能であれば理学療法士や作業療法士など、専門職に相談して選定してもらうことをお進めします。たとえ杖1本でも、自分の体に合わないものを選んでしまうと、転倒したり本来の役割を果たせない場合があるからです。必要のない福祉用具の利用や、間違えた福祉用具を使うことで、かえって状況を悪くしてしまうこともあります。
介護保険で福祉用具をレンタルすると、定期的にプロがモニタリングしてくれますし、必要がなくなれば返却や交換ができます。よほど抵抗がない方は介護保険を利用してレンタルされるほうが良いでしょう。
介護保険が適用されない用具をレンタルする2つの方法
さて、介護保険を利用してレンタルできる福祉用具のいくつかは、要介護2以上ないしは要介護4以上の介護度でなければ介護保険適用にならないというお話をしました。ここで疑問に思うのが、「要支援や要介護1の人は、車椅子やベッドなどをレンタルできないの?必要でも我慢しなくてはいけないの?」ということです。
これに関しては、実はそうではないのです。要介護認定結果はあくまで目安の1つ。軽度者であれ、車椅子やベッドなどがなければ生活ができない方は当然おられます。ではそういう方はどうしているのでしょうか。方法は2つあります。
1:「軽度者に対する福祉用具の例外的貸与」制度を利用する
1つ目は、しかるべき書類を役所に提出し、介護保険適用を認めてもらう「軽度者に対する福祉用具の例外的貸与」の制度を利用することです。言葉は難しいですが、「この福祉用具がなければ生活できない」という一定条件を満たしていたり、医師が「その福祉用具を必要である」と判断したなどの理由があれば、既定の書類を役所に申請しましょう。役所の許可が下りれば介護保険対応とすることができます。
この申請を出せば誰でも介護保険適用できるわけではありません。とはいえ必要な福祉用具をレンタルできないと困るという方もおられると思います。そういった方の場合、次の「自費レンタル」という方法を取ることが多いです。
2:購入ではなく、自費でレンタルする
介護保険サービスは、原則1割~3割の自己負担で利用することができます。しかし、限度額を超えたり、介護保険適用の条件から外れてしまう方の場合は基本的には実費で全額支払うというのが一般的です。
全額負担ではなく、各事業所設定の実費を支払うこともありますが、基本的には安くはありません。例えば、訪問介護の自費サービスだと1時間3,000円前後が一般的。福祉用具の自費レンタルの場合は介護保険適用と同じくらいか、少し高いくらいで提供してくれていることがほとんどです。
自己負担が1割の方で、ベッド一式をレンタルするとだいたい1,500円~3,000円くらいですが、自費レンタルのベッドもほぼ同額かやや高いだけであることが多いです。介護保険対応ほど種類がなく、福祉用具事業所で用意しているものしか選べないというデメリットはありますが、2割・3割負担の方の場合は、自費レンタルの方が安くなることもあります。
自費レンタルをしている人が要介護2以上になれば、そのときは強制的に介護保険適応となるので、そのタイミングで支払い額が増えることもあります。
用具を検討している方は専門家に相談を
今回は福祉用具貸与(レンタル)についてお話をしましたが、基本的にトイレやお風呂に関する福祉用具は「特定福祉用具販売」という介護サービスとなり、介護保険を利用して購入することができます。
上限20万円まで介護保険が利用できる「住宅改修」というサービスも含め、よくわからないまま介護保険を利用せず、自分たちで購入、工事をしてしまう方が少なくありません。そうすると、金銭的なことはもとより、前述したように専門的知識を持った人が判断していないので、選定を失敗することも多いです。せっかく介護保険でいろいろなものがレンタルできるので、「何か買おうかな」「必要かな」と思ったら、まずはケアマネに相談してみてくださいね。