ケアマネジャーは、介護保険制度の要と言われる部分を担っているので、業務は多岐にわたります。
主な業務は、介護の相談、要介護認定の申請手続き代行、各サービス事業所との連絡調整にケアプランの作成、施設入所の手続きなどが挙げられます。
また、弊社のように在宅介護のケアマネジャーの場合、在宅生活全般の相談も受けるため、「草刈りをしてくれる業者を知らないか?」といった相談を受けることもあります。
このように、さまざまな相談を受け、解決に導いていくのがケアマネジャーなのですが、ケアマネジャーにもできる部分とできない部分があります。
今回は、実際の体験談を基に、ケアマネジャーでは対応できない事例を解説していきます。
無理難題ばかりを言う利用者の事例
Aさんは精神疾患(統合失調症)を持たれている「要介護4」の男性です。車いす利用で、独居で生活し、身体障害者手帳も所持しています。
もともと糖尿病や喘息症状などの現病歴もあり、食事制限をしないといけないのですが、それを守ろうとせず、本人が好きなものばかりを食べたりしています。そのため、かなり腹囲も大きくなっています。
また、両足ふくらはぎに床ずれができており、その処置のために往診を受けていて、定期的に付け替えも行っていますが、傷口の治りが芳しくありません。
毎日ヘルパーさんが入り、掃除や調理、おむつ交換などを行っています。また、精神科で訪問看護サービスも受けています。
本人からの要求が多く、介護保険では対応できない部分のことについては、保険外サービスで対応しています。
例えば、ヘルパーさんに対して毎日同じ時間に2時間程度サービスに入るようにしてほしいとか、ヘルパーさんのつくった料理がまずいので、事業所を変えてほしいといった要望です。
また、保険外サービスには「身体障がい者のほうでのサービスが使えるだろ!」と何度も言ってきたりします。
たしかに、介護保険制度では「区分支給限度額」といって、その介護度に応じてサービスを利用できる範囲というのが決まっています。
要介護 | 区分区分支給限度額(単位) | 費用 |
---|---|---|
要支援1 | 5,032 | 50,320~57,364円 |
要支援2 | 10,531 | 105,310~120,053円 |
要介護1 | 16,765 | 167,650~191,121円 |
要介護2 | 19,705 | 197,050~224,637円 |
要介護3 | 27,048 | 270,480~308,347円 |
要介護4 | 30,938 | 309,380~352,693円 |
要介護5 | 36,217 | 362,170~412,873円 |
実際の支給限度額はサービスによって単価が異なる。上の表は1単位あたり10円で計算
この範囲を超えてしまう場合は、原則「要介護4」もしくは「要介護5」の認定を受けていて身体障がい者手帳を所持している方は、身体障がい者としてサービスを利用できます。
これは各保険者である市町村の判断で違いがあります。Aさんの場合は「要介護5」でサービスの範囲を超えてしまった場合であれば、身体障害者のほうでサービスを受けられると行政から回答をもらいました。
Aさんには何度も説明しましたが、納得いただけません。対応に納得しなければ、すぐに地域包括支援センターや市役所の介護保険課にクレームが入ります。
弊社は「特定事業所加算」を算定しているため、24時間体制で利用者さんからの相談に応じるような体制を整えているのですが、それに乗じて、夜中や明け方頃に電話をかけてきて、自分の要求を口にします。
ヘルパーさんも他の利用者さんの対応があるので、なかなか要求通りには受け入れられないことも多々あります。
そのため、ヘルパーさんの事業所を2社利用して対応していましたが、それでも要求に応じることができませんでした。
最終的には、別の居宅介護支援事業所を本人が探してきて、そちらに対応してもらうことになりました。このように、無理難題を言ってくるケースがあるのです。

介護保険で対応できることを整理しよう
ケアマネジャーとしての対応としては、事業所の管理者に相談したり、一緒に訪問に行ったりします。
その中で、本人の要求について傾聴し、できることとできないことを説明するようにしています。また、どのような要求をしてきたのかを詳細に記録するようにしています。
それでも納得されない場合は、地域包括支援センターや行政に相談し、協力を仰ぎます。担当ケアマネが一人で抱え込まないように対応することが重要なのです。
今回の事例のように、不当な要求をしてくる場合もありますが、こういった時には毅然とした態度で対応しています。
なるべくすべての要求に応えられるようケアマネジャーも手を尽くしますが、介護保険にも限界があります。
「もっとこういうサービスをしてほしい」と望まれている方は、ケアマネジャーの話にも耳を貸し、何ができて何ができないのかを一度確認してみてください。
