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前刀禎明「心と直感に従ったこれまでの人生の決断に後悔は一つもありません」

最終更新日時 2021/03/01

前刀禎明「企業も社会も、相手に変化を求めるときはまず相手の想像力を引き出す」

コロナ禍での自粛生活に慣れて当事者意識も低い

みんなの介護 「セルフ・イノベーション」について話を伺う前に、コロナ禍における日本の現在を前刀さんはどのように捉えていらっしゃいますか。

前刀 自粛生活にも慣れてしまった日本人は、当事者意識が低すぎるように感じます。危機感がなく、想像力が欠如しています。だから、物事が起きてしまってからでないと行動できない。今回の後手後手の対応などはその典型と言えるでしょう。

「早くコロナ禍が終息して元に戻ってほしい」という声もずいぶん耳にします。しかし僕たちは、この状況を経験する前の状態に戻ることは二度とできません。自分たちの考えや生活は大きく変わってしまった。まず、その前提をしっかり自覚すべきです。

そして、こうなってしまった以上、憂(うれ)えているばかりではなく、「今、物事を変えられるチャンスが到来している」と捉えた方がいい。語弊があるかもしれませんが、僕はいわば戦国時代のような現在の状況をとても面白く感じています。

みんなの介護 なるほど。ただ、先が見えない状況に置かれてしまうと、何かを変えようにも、どこから手をつけていいのか皆目見当がつかない方が多いのではないでしょうか。

前刀 それは最初に正解を求めてしまうからです。日本人は何にでも正解を求める傾向にあります。例えばコロナ禍以前に私が美術館に行ったとき、ろくに作品も見ずにその横に掲示してある解説文を熱心に読んでいる人をよく見かけました。いろんな視点から見たり解釈したりすることがアート鑑賞の醍醐味です。しかし、自分の目で見て感じて考えることより、作品に関する情報を得たことで満足してそこで思考を停止してしまう。一番つまらないモノの見方です。

これは、次々に与えられる課題を効率良くクリアできる人になるための教育が日本で長く続けられてきたことの弊害だと考えています。そういう思考から自由にならない限り、今のように“何が正解かはっきりわからない状況”を打破することはできません。僕がまず言いたいのは“答えは一つではない”ということ。そして、答えにたどりつくための方法もまた一つではない。大切なのは、与えられた課題をクリアする力ではなく、自発的に課題を見つけ出して解決する力なんです。

「自発的に課題を見つけ出して解決する力」

みんなの介護 自発的に課題を見つけ出す力についてご説明いただきましたが、前刀さんが進めている「セルフ・イノベーション」とも関連するのでしょうか。

前刀 順を追って説明します。セルフ・イノベーションの概念は3つの要素で構成されています。

1.「Free Yourself=自分を解放する」
さまざまな先入観や固定観念、企業であれば前例踏襲といった縛りから自分を解き放つ。
2.「Create Yourself=自分を創る」
自分を解放したうえで自分自身の価値と個性を見直して再定義する。
3.「Exceed Yourself=自分を超えつづける」
現在の自分の状況をリセットし、そこからリスタートという循環を繰り返す。

僕の見る限り、2の「Create Yourself」ができると、ほとんどの人は「自分はすごい」と満足して成長を止めてしまいます。しかし、それでは単なる自己満足。3の「Exceed Yourself」へ到達しない限り、セルフ・イノベーションを実現したことにはならないんです。

ともあれ、難しく考えることはありません。簡単に言えば、何ものにもとらわれず、見たまま、感じたままを素直に表現できていた子どもの頃の自分を取り戻すことが、セルフ・イノベーションの出発点。そして、自分で感じ、考えつづける人こそが「Exceed Yourself」を体現できるんです。

好奇心が人の感覚を解いて、新たな発見を可能とする

独創的アプリで思考を解きほぐす

みんなの介護 前刀さんが起業した人材教育会社「リアルディア」は、具体的にはどんなことを行っているのでしょうか。

前刀 人は専門領域を仕事にしていると、どうしても狭い世界の常識で物事を判断するようになり、思考が凝り固まってしまいます。そうならないために最も大切なのが好奇心。さまざまな事象に対して、「なぜだろう」と不思議に思える「センス・オブ・ワンダー」を磨くと感覚が開き、新たな発見ができるようになる。大人・子どもに関係なく、人としてそういうセンスを身につけてもらいたいと私は考えています。リアルディアではそのためのサポートを主たる取り組みとしています。

具体的には、人間の思考を解きほぐすことを助ける「DEARWONDER(ディアワンダー)」というアプリを開発しました。

このアプリを使うと、クリエイティブ・インテリジェンス(創造的知性)が育まれます。画面に出てくる形や角度、位置関係などをよく見て、自問自答を繰り返しながら仮説を立てます。そして、実際に試して仮説を検証したり誰かに相談して、最終的にそれらすべてを関連づけて自分で答えを出す。「観察力」「質問力」「実験力」「相談力」「関連づける力」という5つの力が育まれる仕掛けになっています。

Creative Intelligence

出された問題を解くだけでなく、自分で問題をつくる機能もあるので、ほかのユーザーとシェアすることもできる。すると、作成者の自分が思いもしなかった方法で問題をクリアする方も出てきます。こうした一連の流れの中で、答えは一つではないという発見をワクワクしながら体験できるんです。まさに「ワンダー・ラーニング」の実現です。

みんなの介護 セルフ・イノベーションの連鎖が生れますね。

前刀 大手コンサルティング会社の社員たちにも同じアプリを試してもらったのですが、5歳の子どもでも解ける課題に「右脳がオーバーヒートしたみたいで頭が熱い」と四苦八苦していました(笑)。左脳ばかり使って論理中心の思考している彼らにとっては、良いトレーニングの機会になったようです。

相手に変化を求めるときは、相手の感性に働きかける

みんなの介護 前刀さんがスティーブ・ジョブズ氏の前でも披露したプレゼンテーションでも、ビジュアルを駆使した表現の方が、聞き手の心を動かせるといった話を聞いたことがあります。

前刀 そうです。ある商品の機能をわかりやすく箇条書きにして説明しても、人はそれを欲しいとは思いません。機能を理解するだけでは不十分なんです。

人は理解し、共感して、自分がそれを使っている場面を想像して「いいな」と思えたときにはじめて「ほしい」という感情が生れます。プレゼンテーションの本当の目的は、“理解してもらう”ことではなく、“共感して動いてもらう”ことにあるんです。

会社の中でも同様に、上司に「わかったか。わかったのならすぐにやれ」と言われても、「なんか腑に落ちない」と思ったらなかなか動けない。それは上司の説明の仕方が理屈ばかりで、部下の感性に訴えていない。想像することができていないから、行動につながらないんですよ。社会を変革するタイミングにおいても、まさにこれと同じことが言えるのです。

撮影:丸山 剛史

DEARWONDER

「Create Yourself」
しなやかな発想が、卓越した創造を生み出す。
DEARWONDERは楽しくプレイすることで、あなたの思考を解きほぐし、クリエイティビティを高めていくツールです。WONDERを常に手元に置く。それは自身の直観を高める最高のエクササイズとなるでしょう。
さぁ、創造という冒険へ!

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森田豊
医師・医療ジャーナリスト
2022/11/07