前刀禎明「心と直感に従ったこれまでの人生の決断に後悔は一つもありません」
過去も現在も未来も、すべて「自分」を基点としている
みんなの介護 近年、平均寿命が延びたことにより、人生100年時代に突入したと言われています。しかし一方で、日本人の多くがセカンド・サードキャリアを築けなくなっていることが問題視されていますが、前刀さんはどう考えていますか。
前刀 定年退職後に一定期間、再雇用してくれる企業もありますが、年俸は3分の1以下になってしまいます。また、役職定年という制度では、それまでの上司と部下の立場が逆転して現場がぎくしゃくしてしまうなどのトラブルも生じているそうです。いずれも、長く働いてきた人にとっては尊厳を傷つけられる仕組みで、それ自体にも問題はあります。しかし、会社が生涯面倒を見てくれないことは自明の理。本当はそうなる前に、自らの意思によって新しいことにチャレンジしなければいけないんです。
長く生きていればいろいろなことが起こります。僕は、基本的に起きてしまったことはすべて自分の責任だと考えるようにしています。決して環境や他人のせいにはしない。コロナ禍の現状についても同様です。そう考えると、「現在」は「過去」の自分がしてきたことの結果ということになる。視点を変えれば、これから先に起きることも自分でどうにかできる。自分の人生は環境にも他人にも縛られない。「未来」はすべて自分次第になるんです。
そもそも、人生は何が起きるかわからないから楽しい。だからこそ、明日の自分には無限の可能性がある。そう思えるようになれば人生は楽しくなります。
「欲求→努力→喜び→欲求」という循環があれば人は成長しつづける
みんなの介護 何歳になってもセルフ・イノベーションは可能なのでしょうか。
前刀 可能です。というより、セルフ・イノベーションには終わりがない。死ぬまで人は変わり続けることができます。ただし、それには夢や、良い意味での「欲求」を持つことが大事で、その欲求を叶えるためには努力が必要です。と言いながら、僕は子どもの頃、「努力」という言葉が一番嫌いでした。親が旅行に行くと必ず「努力」の文字が入った置物をお土産に買ってくるのがすごく嫌で(笑)。泥臭い努力なんかより、才能だろうと考えていた時期もありましたが、今は努力というのは素晴らしい言葉だと思っています。
それがわかったのもさまざまな仕事の過程で「欲求→努力→喜び→欲求」というグロース・サイクル(Growth Cycle、成長の好循環)を体験したからでした。何も、大きな仕事でなくてもかまいません。ちょっとしたステップアップや、小さな成功体験の喜びが新たな欲求を生み、またその欲求を叶えるために努力して喜びを得るというサイクルが回り出せば必ず人は成長していく。このエンジンさえ心の中に持っていれば、何歳になってもセルフ・イノベーションは可能になります。
ウォルト・ディズニーもこんなことを言っています。「我々の最大の一番の資源は、子どもの心である」。実年齢ではなくて心の年齢。心の若さが鍵なんです。
思い込みや固定観念は心の若さを奪う
みんなの介護 心の若さが鍵とのことでしたが、心を若々しく保つ方法があればお聞かせいただけますか。
前刀 身も心も若さを失って老いてしまうのは、「自分は何歳だからこうあらねばならない」という思い込みのせいだと思います。それと、成功に対する固定観念も人の成長を妨げ、若さを奪います。
勝ち組・負け組という言葉がありますが、人生における成功というのは富と名声などではありません。常に、ほかの人にはない、自分だけの価値を持っている人間であり続けることが大切です。そして、そうあり続けるには決して満足せず、努力し続けるしかない。世界的・歴史的な大成功を収めたウォルト・ディズニーやスティーブ・ジョブズも、生涯自分の仕事には満足していなかったと言います。彼らにしてそうだったのですから、僕も努力し続けるしかないと肝に銘じて、今日も仕事に励んでいるわけです。
人生の“失敗”は次の成長のチャンスに変わる
みんなの介護 日本は少子超高齢社会に入り、若年層だけでなく、高齢者が活躍可能な場の創出が求められています。この状況について、前刀さんは起業家としてどのように見ていますか。
前刀 誰しも人生には波があります。良いときもあれば悪いときもある。山と谷を経験しながら年齢を重ねていくのが人生です。僕は自分自身の人生を振り返って、この波は常に右肩上がりだったと捉えています。いま苦しい状況でも、過去よりもマシなところにいる。この経験で成長して、さらに高いところに行けると思っているんです。
僕は一度、自分で起業した会社で大失敗を経験しています。オン・ザ・エッヂに営業譲渡したライブドアという会社がそれでした。経営自体は順調だったものの、当時、世界最大の通信会社だったワールドコムが経営破綻。その日本法人からの支払いが止まったことを契機に資金繰りが悪化。民事再生の申し立てを余儀なくされました。しかし、そのときでさえ悲壮感はなかった。さすがにダメージは尾を引きましたが、「また感じて、考えて、何かを始めればいい。この失敗は新しい成長のきっかけになる。とりあえずもがき続けよう」と思っていました。
質問に対する答えになっていないかもしれませんが、僕は歳をとっても常に未来を考えていきたいです。今とは違う世界をイメージし続ければ、どう転がっても絶対に幸せになれるという自信があります。失敗してもすべてが終わるわけではない。それを糧にすれば、必ず次のチャンスがやって来ます。誰の明日にも無限の可能性があるのですから。
撮影:丸山 剛史
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