お漏らしをしたり、言うことを聞かずに癇癪(かんしゃく)を起こしたり…。認知症の人はまるで小さい子どものよう。ということは、子どもと同じように接すればいいの?
高齢者の子ども扱いは自尊心を損なう。命令口調や幼稚な言葉を使うのは問題
老人としてのプライドを知ろう
認知症のお年寄りは自立した生活ができず、周りのお世話を必要とするところが子どもと似ています。だからといって、お年寄りに子どもと同じように上から命令するような言葉かけで制限を加えたり、幼稚な言葉で話しかけたりするのは問題です。
たとえば、おむつひとつをとっても、幼児とお年寄りでは大きく違います。幼児は生まれてからまだ尿意や便意のコントロールを習得していないので、おむつを当てられることになります。
一方、認知症のお年寄りはかつて排泄が自分でできていました。それが加齢に伴う尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)の衰えなどの理由で排泄の失敗が続いた結果、仕方なくおむつを当てる生活になってしまったのです。
これから成長する未熟な子どもと違い、お年寄りは「人生の大ベテラン」である
「当たり前」と「仕方なく」の違い

本人が「当たり前」と思うか「仕方なく」と思うかによって、その感情は大きく変わります。
2歳前後に起こる第一次反抗期を越えた子どもは、思春期を迎えるまで基本的に大人に従順。経験が豊富な大人が言うことを正しいと考え、それに従おうとします。子どもは未熟で、これから育つ存在なのです。
しかしお年寄りは、幼少期も思春期も青年期も乗り越えてきた、いわば「経験豊富な人生の大ベテラン」。認知症といえども、子ども扱いはプライドを傷つける結果にしかなりません。
このように、子どもが当たり前と感じる扱いも、お年寄りにとっては屈辱的なことがあるのです。お年寄りは、子どもに比べて人生の先輩である点が決定的に違うので、自尊心を損ねないような接し方が必要になります。

認知症であっても、高齢者は「人生の先輩」である