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在宅介護は日本の縮図?きれいごとではすまされない介護現場の声を聞く

今回のゲストは作家のこかじさらさん。 故郷へUターン移住後、こかじさんは90代の両親に加えて89歳の叔父と叔母の介護を担うことに。2019年9月、老父母とのやっかいな日々を“せきらら”に描いた「現代ビジネス」の記事への書き込みの多さに刺激を受け、書籍の執筆を開始。『寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ』を2022年11月に上梓。理屈の通じない4人とのコミュニケーションのむずかしさや介護費用に頭を抱える様子を生々しく綴っています。 今回は、 “長生き”の光と闇について考える対談となりました。

こかじさら:WAVE出版 (2022/11/21)

介護の大変さはやった人にしかわからない。身体が衰え、思考能力や判断力が低下し、感情のコントロールが利かなくなった高齢者との暮らしは、修行か、はたまた罰ゲームか。キャラの濃い4人に翻弄され、心身共にすり減っていく日々を、きれいごとは一切なしでありのままに描いています。「介護に限界を感じている人」「誰にも相談できずストレスを抱えている人」にオススメの一冊です。

高齢者とのコミュニケーションは紙パンツの交換よりやっかい

くらたまくらたま

「寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ」を拝読しました!痛快な語り口で、「わかるわあ」って何度も心の中で呟いちゃいました。こかじさんは、ご家族の介護をいつから始められたんですか?

こかじこかじ

ちょうどコロナ禍に突入した頃です。勤務していた出版社を辞めてフリーになったこともあり「仕事をする場所をちょっと変える」くらいの気持ちで実家に戻りました。国も“リモートワーク”を推奨していた時期でしたし、実家は海が近く温暖な気候のため老後も暮らしやすいだろうとも考えまして。

ところが、予想以上に老親の言動があやしくなっていて、そのまま介護に突入しました。

くらたまくらたま

介護を実際に始められて、どんな印象を持たれましたか?

こかじこかじ

正直、甘く見ていました。すべてにおいて「他人事」でした。何事もそうだと思いますが、自分の身に降りかかってこないと、実際の大変さはわからないものですね……。

会社勤めをしていた頃、たまに実家に帰って冷蔵庫の中を覗くと、腐ったものや同じものがいくつも押し込められていて。ちょっとおかしいな、とは思っていましたが「人様に迷惑かけなければいいや」と見て見ぬふりを貫いていたんです。

くらたまくらたま

見て見ぬふりという表現……よくわかるなあ。

こかじこかじ

そうこうしているうちに兄から頻繁に電話が掛かってくるようになりまして。「親父とお袋がくだらないことで四六時中喧嘩をしている」と。

くらたまくらたま

当時のご両親はどんなご状況だったんですか?

こかじこかじ

うちの両親は、アルツハイマー型の認知症とは診断されていないんですが、老化にともなう脳の萎縮が始まっているのか、感情のコントロールがむずかしくなっていて……。

よく年を取ると「待った」が利かなくなると言われていますが、老父母共に思い通りにならないと声を荒らげるなどの問題行動が見られるようになっていました。

くらたまくらたま

介護のどんなところが大変だと思いますか?

こかじこかじ

一番は、まともなコミュニケーションが取れなくなることですね。父の紙パンツの交換などは淡々とおこなえばすむことですけど、意思の疎通が図れない状況が続くと相当なストレスになりますよね。

くらたまくらたま

毎日のこととなると、ストレスも溜まりますよね。

こかじこかじ

例えばですが……。 母は、毎回ご飯を3合ずつ炊くんですけど。だんだんと食べる量が減ってしまったがために、ジャーの中に“残ったご飯”が乾燥して固くなってしまうので、あるとき「炊く分量を1合半に減らしてみたら」って何気なく言ってみたんです。

そしたら、「今までずっと3合炊いてきたんだから、3合でおいしく炊けないのはおかしい」って突っかかってきて。挙句の果てには「お前が買ってきたこれ(ジャー)が悪い」とまで言うんですから、「何なの、その言い草は」ってカチンと来ますよね。

くらたまくらたま

……不思議と光景が浮かびます。

こかじこかじ

「あーわかりました。日本の有名メーカーの最新のジャーでもおいしく炊けないんですね」と言い返して。「炊く分量を減らしてみたらって提案してるだけなんだけどね」と付け加えたら、今度は、「お前はすぐにそうやって、むずかしい言葉を使いたがる!」って青筋を立てて怒鳴りはじめるんですから、「もう何を言っても無駄なんだ」って、諦めの境地になる一方で、「このクソばばあが!」って腹立たしい気持ちにもなって。

くらたまくらたま

それがごく普通な反応ですよね。特に家族に対してはねえ。

こかじこかじ

父は父で紙パンツを取り替えている最中にも、「手が冷たい」とか「もうちょっと優しくできないのか」とか文句を言ったかと思ったら、「背中が痒いから拭いてくれ」って言うのでホットタオルで背中を拭いていると「そこじゃねえ」って偉そうに言うし……。

こういうくだらないことも「塵も積もれば……」で。この状況が何年も続いたら相当きつくなるだろうなと恐怖すら感じるようになって。

ショートステイから戻ってきた父が放った「地獄みたいなとこに入れやがって」のひと言

くらたまくらたま

こかじさんは、ご両親だけでなく、叔父様ご夫婦の介護もしておられるんですよね。ご著書にも詳しくありますが、4人の介護というのはすごいですね。

こかじこかじ

たしかに、病院の付き添いや面倒な出来事が重なったときは“ヘトヘト”になりましたが、叔父が施設に入り、叔母もデイサービスに行かせるなどしてどうにか1人で生活できているので、今はだいぶ落ち着きました。この先どうなるかはわかりませんが、ふたりには子どもがいないので近くに住む私が面倒を見るしかなくて……。

くらたまくらたま

ほんとうにすごい。

こかじこかじ

ただ、両親が今以上に手が掛かるようになって、ベッドで紙パンツを取り替えたり、お尻を拭いてあげたりしなければならなくなったら、当人がどんなに嫌がっても施設に入ってもらうつもりではいますよ。いくら親でも自分の人生を犠牲にするほど、私は出来た人間でも愛情深くもありませんから。

くらたまくらたま

ご自分の中で“ライン”を決めていらっしゃるんですね。そうしないと際限なくなりますものね……。

こかじこかじ

そうなんですよ。今はとりあえず、やれる範囲でやろうって気持ちではいますけど、自分のキャパを越えてまでやるつもりはないし、割り切って旅行にもガンガン行ってますしね。

老父母や叔父叔母のせいで好きな旅行にも行けない。なんてことになったら、自分の時間や人生を犠牲にしているという負の感情が胸奥に澱のように溜まり、「もう限界、これ以上は無理!」と大爆発しかねない。

((寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だP250より引用)
くらたまくらたま

旅行の間は、介護職の方の力を借りられたんですか?

こかじこかじ

3泊4日で那覇マラソンに参加したときは、父だけですが、はじめてのショートステイに行ってもらいました。でも、家に戻ってくるなり「あんな地獄みたいなとこに入れやがって!」と食って掛かってきましたし、一週間くらいは顔を見る度に毒突かれました。

くらたまくらたま

そんなに居心地が悪かったんですかね。

こかじこかじ

超わがままな人なので、決まった時間に「ご飯を食べるように」と言われたり、出された料理の味が薄かったりが気に入らなかったみたいです。一人でお風呂に入ることもできないくせに、一体何様のつもりなんでしょうね。

“きれいごと”が通用しない現場がある

くらたまくらたま

ご自身の介護生活を本にしようと思ったきっかけは何だったんですか?

こかじこかじ

千葉県に台風が上陸して大停電に陥ったとき、旧知の編集者が電話をくれて。「おかげさまで、うちは被害もなく大丈夫なんだけど、それよりわがままなクソじじいが約一名いて、やっかいなんてものじゃないんだよね」って愚痴ったら、「大変なのはわかるけど、すごく面白いからすぐ原稿にして!」って言われて。

速攻で書いた記事が「現代ビジネス」に掲載されると、影響力のある方が面白がってシェアしてくれたおかげでアクセス数が急上昇したみたいで。記事が公開された日の夕方だったかなあ……。編集者から「アクセス数もすごいんだけれども、とにかく書き込みがすごい」と連絡があって。

くらたまくらたま

へえ!どんな書き込みが?

こかじこかじ

それが……私が書いた記事の感想や共感ではなくて、「うちはもっと大変だ」とか、「うちのばあさんは」とか、それぞれの家庭の苦労話が次々に。

くらたまくらたま

まるでダムの決壊。みなさんも相当“溜めて”らっしゃったんでしょうね。

こかじこかじ

そうみたいです。「うちのじいさんは、世の中が大変なときだっていうのに、今日も車飛ばしてパチンコ屋に行っている」とか。「うちのじいさんは、いくら注意してもトイレの後手を洗わないどころか『俺はいつも洗ってねえんだ』って開き直る始末で。娘が生まれたばかりの孫を連れて帰って来ているのに、もう勘弁してほしいよ」など……。

私が老父母の困った言動を包み隠さず、ありのままに書いたことで、“ここぞ”とばかりにみなさんが吐きだしたんでしょうね。このとき、介護する側の気持ちを軽くすることができるのはきれいごとではなく生々しい現場の声だということに気づいて。「苛立って当然なんだ」「毎日のように早く逝ってくれと願ったっていいんだ」と、私の書いたものが介護をする側の人たちへのエールになるのかもしれないと、ふとそんな気がしたんですよね。

「お願いだから早く逝ってください」これが本音です

くらたまくらたま

ご家族の介護でストレスを溜めていても、「口に出しちゃいけない」と思っている方は多いですよね。

こかじこかじ

だと思います。でも、溜め込んでしまうと、だんだんキツくなっていきますよね。私の場合は、書くことで気持ちの整理をしていますが。

くらたまくらたま

吐き出せないとしんどいですよね。

こかじこかじ

昨日、友だちのお母様が92歳で亡くなったんですけど。その方は、うちの父と同じ昭和5年生まれ。3日前に急に具合が悪くなって、最後は老衰という形で穏やかに亡くなったと言うので「いい最期だったんじゃないかな」とラインでやり取りをしました。でも、その一報が入ったとき「先を越されちゃった」というのが正直な気持ちでした。

くらたまくらたま

ご著書でも「介護をしていた当人は、そのご苦労があったがゆえにお葬式では泣かない」というエピソードを書かれていましたよね。

こかじこかじ

はい。彼女も「悲しい」というより「ホッとした」という思いの方が強かったみたいです。

くらたまくらたま

側でずっとみていた人からしたら、そうなっていくのも当然かもしれませんね……。

こかじこかじ

ちなみに、高齢者が施設に入ってから亡くなるまでの期間は平均5年くらいらしいのですが、それが年々長くなってきていて、叔父が入っている施設の最高齢の方は108歳だと言うので本当に驚きました。

うちは、父が92歳で母が90歳なんですけど、もし108歳まで生きられたら、「私のほうが先に逝ってまうやろ」「間違いなく介護破産するわ」って思いましたし、「お願いだから、とっとと逝ってください」って毎日のように願ってます。

「誰もがいずれそうなるんだから、やさしく接してあげてください」 なんて言う人もいるが……。 そんな人間性を試されるようなことをもっともらしく語られても、一筋縄ではいかないから皆頭を抱えているのだ。ましてや、自身の生活や老後の蓄えが脅かされるほどの勢いでお金の問題が絡んでくるのだから、広い心など持てるはずがない。

(寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だP249より引用)

くらたまが父の姿から考えた“悔いのない別れ”

くらたまくらたま

実は、うちの父も先日亡くなったんです。

こかじこかじ

それはご愁傷様です。お父様はおいくつだったんですか?

くらたまくらたま

79です。認知症の症状もあって、そばにいる母とはいつも喧嘩になっていました。デイサービスに行き始めてからは、だいぶ関係が良くなったんですけど。

こかじこかじ

デイサービスのお世話になることで、介護する側とされる側の関係も改善されますよね。

くらたまくらたま

そうなんです。最期は、寝たきりで意識がない状態で病院のICUに入る日々が続きました。「透析をしないと2・3日しか持たない」と医者に言われて……。

「延命治療はしない」と話し合ってはいたのですが、母が「やっぱり1回透析しようか」と言い始めたんです。透析をしたことで3週間寿命は延びたんですけど、正直、疑問が残りました。

こかじこかじ

そのときの状況を伺ってもよろしいですか?

くらたまくらたま

人工呼吸器を付けながら生きていたんですが、本当に苦しそうでした。意識がない状態で3週間管につながれていたから、亡くなったあとも口が閉まらないんです。あの状態のまま寿命が2年ぐらい延びていたらもっと大変なことになっていたかもって思います。

こかじこかじ

本人は「延命治療しなくていい」って言っていたのに、延命治療をしてしまったがために、逆に苦しい思いをさせているのではないかと、心が揺れている方は結構いるのではないでしょうか。

くらたまくらたま

それこそ、お金の問題も出てきます。今だから言える話ですけど、あの時のあの選択はちょっと間違いだったのかもしれません。決断をいざ迫られると、冷静な判断ができなくなるということはありますよね……。

こかじこかじ

年齢にも寄りますよね。うちのように父母共に90を越えていると、自然な形で逝かせてあげるのが何よりの親孝行だって思いますし。

くらたまくらたま

実際、そんないい父でもなく、嫌な思い出もいっぱいあったんです。でも、最期の父の顔を見ると、涙がめちゃくちゃ出ました。コロナ渦であまり帰っていなかったんですけど、今思えば、もっと会っておけば良かったなって……。誰かが亡くなると「まさかこのタイミングで」と言われますけど、会えないまま家族とサヨナラするのは悲し過ぎます。

長生きは本当に幸せなのか

こかじこかじ

寿命って不思議ですよね。もっと生きたい、生きていてほしいと思う人がいる一方で、長生きすること自体がつらくなってしまう人もいる。うちの父みたいに、どこに行くのも自分で車を運転して移動していた人が、身体の自由が利かなくなり、目が見えにくくなり、娘に下の世話までしてもらって……。それでも死ねないって、切なくて惨めなんじゃないでしょうか。

身近にいる家族にわがままをぶつけたり憎まれ口を叩いたりするのも、そんな自分を受け入れられないのかなって……。時々しょんぼりしている父を見るとそんなふうに思うんですよね。

くらたまくらたま

ほんとに切ない話ですよね。最期まで元気で自分が望むような生き方ができるのが理想ですが、やはり理想ですよね。

こかじこかじ

実は私、両親と同居するようになってからよく思い出すことがあって。

くらたまくらたま

どんなお話なんですか?

こかじこかじ

敬老の日だったと思うんですけど、小学校低学年の時、先生に連れられてクラスの代表として老人ホームを訪れて。

「おじいちゃんおばあちゃん、いつまでも元気で長生きしてください」って、ハキハキと挨拶したんですよね。先生に言われるままに。ただ、そのときすごい違和感を覚えて、家に帰ってからも棘が刺さったみたいに胸がチクチクして……。たぶん子どもなりに、心にもないことを言ってしまった心苦しさがあったのかもしれません。

くらたまくらたま

当時の思いを自覚していらっしゃるんですね。

こかじこかじ

もしかしたら、そこにいる人たちは身寄りがなくて仕方なく施設に入ったのかもしれないし、「長生きしたくない」という思いで日々を過ごしている人もいたのかもしれないのに、「いつまでも元気に長生きしてください」なんてもっともらしいことを言うのは、実は酷なことだったのかもしれないって、最近そんな風に思ったりして。

介護する側のケアを考えないと立ち行かなくなる

くらたまくらたま

高齢化が進むと“長寿をどう生きるか”に誰もが向き合わざるを得なくなっていきますよね。

こかじこかじ

おっしゃるとおりです。誰にとっても避けては通れない大問題ですし、2025年には団塊世代が全員75歳以上になるわけで。高度成長期に年功序列でお給料がどんどん上がって、高級車を乗り回してきたような人たちが、いざ高齢者になった時、すんなり運転免許を返納するでしょうか。年寄り扱いされることに対してどういう反応を示すか……。そう簡単なことではないような気がしますよね。

加えて、要介護者は増えているにもかかわらず、介護を担う人は不足していますから、今後、認知症の高齢者が街を徘徊する姿を毎日のように目にする日が来るかもしれませんよね。

くらたまくらたま

ありえます。2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人は認知症になるという予測もありますからね。

こかじこかじ

すでに、介護する側をケアしなければならない時代に来ていると私は思います。介護殺人みたいな悲しい事件も、介護される側のケアだけに主眼を置いていてはなくならないどころか、増えてしまうのではないかと危惧しています。介護の現場は本当に過酷ですから、介護する側の負担を軽くする施策を真剣に考えないと、介護する側される側の双方を救うことはできない気がします。

高齢者の医療費を“未来”のために使えたら……

くらたまくらたま

高齢化にともなう問題って、ほかにはどんなことがあると思いますか?

こかじこかじ

老親の病院に付き添うたびに、高齢者の医療費負担を何とかしたほうがいいと思ってしまいますね。うちの母はとにかく病院が大好きで、大したことでもないのに「病院に連れていけ!」って言うんですけど。どこの病院の待合室も高齢者で溢れかえっていて。本当にここは高齢者の社交場だなって苦笑が漏れますし、「この人たちの多くは1割負担なんだよなぁ」って愚痴の一つも言いたくなるんですよね。

「最近、鈴木さんのお姿が見えないけど具合でも悪いのかなあ」なんて会話が当たり前のように繰り広げられている病院の待合室。通院を楽しみにしている当人たちは、それがブラックジョークだとは気づいていないのだろう。

(『寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ』P207より引用)
くらたまくらたま

高齢者の医療費問題は、日本を蝕んでいる側面もあるのかもしれません。私も、もう少し問題意識を持って取り組む人が増えてもいいと思います。

こかじこかじ

高齢者の医療費の残りの“9割”を国と現役世代が担っているわけですけど、それをこの国の未来を担う世代のためにつかえたらと毎日のように思うんですよね。例えば、大学生の奨学金を返済しなくていいような仕組みを作るとか。子ども手当をもう少し増やすとか……。

くらたまくらたま

そうですね。

こかじこかじ

それに90過ぎて血圧や血糖値を下げる薬なんかもらってきたってねぇ……。正直、血糖値上がろうが下がろうが、明日死んだって本望でしょうと突っ込みたくなるんですよね。「買い物に行ってきたんですか?」っていうくらい、エコバックにいっぱいの薬が出るんですけど、実際、効いているのかいないのか……。うちの父なんて、飲み忘れる日が続いてもケロッとしていますから。

老父母の介護をしていると、この国のありとあらゆる問題が浮き彫りになるとでも言ったらいいのでしょうか。我が家の超個人的な問題が、そのまま国全体の問題につながっているんだなって。「我が家は日本の縮図なんだ」って、日々思わされてます。

くらたまくらたま

たしかに。高齢化に伴って、これまでのシステムが崩壊してきています。

こかじこかじ

そうですね。もはや、長寿を喜ばしいことだと捉える時代から、家族にとっても国にとってもリスクだと考えるべき時代に突入しているのではないかと私は思っています。家族愛だとか「おじいちゃんおばあちゃんを大切にしましょう」なんてきれいごとですませられるほど介護は生やさしいものではありませんし、介護破産は次世代にとって脅威になりつつありますから。

くらたまくらたま

おっしゃる通りです。“長寿”の光と闇をしっかりと見ていく必要がありますよね。今日のお話を伺って、自分のこととして置き換えて、どう歳を取るかを考えるようにします。

本日は、ありがとうございました!

倉田真由美イラスト

こかじさら

1958年千葉県生まれ。中央大学専門職大学院国際会計研究科修士課程修了。出版社勤務を経て2016年『アレー!行け、ニッポンの女たち』講談社刊(『負けるな、届け!』として文庫化)でデビュー。著書に、『それでも、僕は前に進むことにした』『彼女が私を惑わせる』共に双葉文庫など。2019年9月、現代ビジネスに両親の介護生活を描いた記事を掲載し、大きな反響を呼んだ。

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