「履き物」というと、外履きをイメージされる方は多いのではないでしょうか。
しかし、実は屋内でどんな履き物を履くかはとても重要です。
特に屋内でお仕事をされている方や、お家で過ごす時間が長い方は注意が必要です。
見落とされがちな室内履き
ここ数年はコロナ禍で外出を控えたり、リモートワークが増えたり、家飲み需要が高まったりと“お家時間”が増えた人も多いようです。
屋内で過ごす時間が延びた中で、室内履きを意識したことはありますか。
外傷から身を守るためだけに履くのであれば、外履きだけ気に留めればよいかもしれません。しかし、履き物は歩行や足をサポートする役割があり、外履きだけではなく、室内履きにも気を遣う必要があります。
畳やじゅうたんだけでなく、フローリングなどの硬い素材の上で過ごすことも増えるなど足をとりまく環境は大きく変化し、足にかかる負担が増しています。
そのため、室内履きは転倒予防や安定歩行といった観点から、とても重要なのです。脱げにくく、滑りにくい安定した室内履きを選ぶことが重要です。
裸足が良いとは限らない
「じゃあ、裸足ならいいんじゃない?」と、思われる方がいるかもしれません。日本には足病医のような専門家がいないため、いろいろな考えがあります。そこで、足がより長く健康であるためのご提案をさせていただきます。
私たちの祖先はその昔裸足で過ごしていました。当然その頃は、地面の上を歩いていました。徐々に人類の文化が発展して、環境が変わり地面の上を歩く機会は減り、代わりに舗装されたアスファルトやコンクリートなどの上を歩くことが主となりました。
現代では目的によって履き物の種類を選べるようになりました。例えば、硬いフローリングやコンクリートのような硬い人工物の上を歩くときと、砂・土・芝のように自然で柔らかいものの上を歩くときでは足の負担が異なります。
山登りやスキー、サッカーなど、シチュエーションによって過度な負荷に耐えてパフォーマンスを高めるような靴の開発も進んでいます。
これは屋内でも同様ではないでしょうか。畳やじゅうたん、コンクリートや板の間の上。日常における「歩行」において、足への衝撃を軽減できる履き物を選ぶことで、足から身体への悪影響を最小限にすることができます。
歩行が妨げられる理由は複合的
脳梗塞の既往症があるSさんは、ある日理学療法士に「デイサービスで歩くと足の爪先の裏が痛い」と訴えました。しかし、見た目は赤くなってる部分も腫れてる部分もなく、困った理学療法士から私のもとに相談がありました。
Sさんの足を拝見させていただくと、脳梗塞の後遺症で足の指が丸まった状態でした。本来、爪は地面とは反対側にあるはずが、爪の一部が地面と接地していたのです。
そこへ追い打ちをかけるように爪が伸びていたため、歩くたびに爪が体重の圧で指に食い込んでいたことがわかりました。
そこで、Sさんの訴えには次のような要因があると判断しました。
- 地面と設置している爪の伸びすぎ
- 硬い廊下を歩くので衝撃が強い
- 履いていた靴が劣化し、中敷が擦り切れていた
- 足趾の拘縮(こうしゅく)※
※病気やケガなどで関節を動かす機会が減少した際に関節が硬くなり、その結果関節の動きが制限された状態のこと
そこで、対策として「爪を切る」「長期的な足の指を伸ばすリハビリ」「履き物を見直して適切な履き方をする」の3つの習慣をつけていただくようお話しました。
Sさんのように、いくつかの理由が重なって歩くのが嫌になったり、転倒につながることがあります。歩行を妨げる要因につながる芽は、なるべく早めに摘んでおいたほうが良いでしょう。
室内でも自宅でも履き物選びは大事
室内履きはスリッパという思い込みがありますが、決して安全な履き物とはいえません。少なくとも脱げにくい履き物を選ぶことが重要です。
また、一般的に販売されている室内履きの多くは、靴底にスポンジが入っていたり衝撃吸収力が低いものが少なくないので注意しましょう。
一方でフットケアの進んだドイツ製の室内履きには、足のアーチを支えるタイプのものなどもあります。
歩ける足を維持するためには、運動だけでなく多面的な配慮が必要です。ぜひ本記事を参考に室内履きに注意を向けて、一度見直してみてはいかがでしょうか。