足のトラブルの代表格が巻き爪です。巻き爪になると痛みを生じることもあり、歩行にも影響します。巻き爪による痛みを軽減する治療には時間も費用も必要です。
巻き爪を起こさないためには、足爪の整え方が大切。今回は、多くの方が使用する爪切りでのケア方法を中心に解説します。
第123回でご紹介した「足のお手入れ」もぜひご参照ください。
足爪の切り方には正解がある!
これまで「足爪の切り方」を気にしたことありますか?子どもの頃から自分なりの切り方で過ごしてきてる方がほとんどではないでしょうか。
実は爪の切り方には正しい方法があります。爪はただの硬く平らな物質ではなく、指に沿ったカーブと適度な柔軟性を備えた特徴があります。その特徴を踏まえたものが適切な爪の切り方なのです。
例えば、次のような切り方は避けたいところです。
- 足の指先に沿って丸くカーブして切る
- 三角に切る
- 深爪になるように切る
特に、巻き爪の方は両端を切る傾向があって要注意です。爪の端(角)を短く切ると巻き爪を助長してしまうことがあるからです。
適切な切り方(整え方)の基本は、次の通りです。
- 両端を短くきらずに角を残す
- 指の長さと同じか少し短い程度
- 横に真っ直ぐ切って角が衣類に引っかからないよう軽くヤスリで整える

爪切りで切る習慣の方が多いかもしれませんが、実はガラスヤスリで削って整えたほうが端を切りすぎないのでおすすめです。
爪の習性を知って適切に整えれば転倒予防にも
爪の構造
爪は端の部分が巻くようにできています。
その理由は、爪の構造にあります(イラスト参照)。爪は、実は1枚ではなく、薄い爪が3枚重なって構成されています。その3枚はすべてタンパク質の一種であるケラチンで構成され、繊維状になっています。
そして、重なり方にも特徴があります。実は「縦」→「横」→「縦」の順番で繊維が格子状になるように重なっています。爪は硬いながらも、ほどよい柔軟性を持っているのはこの繊維状の構造によるためです。また、縦方向の繊維を持つ爪が2枚のため横に巻きやすいのです。
適度なカーブは絶妙なバランスからできている
爪が巻かないのは、床からの圧力(床反力)が指の腹を伝わって爪を押して広げる力と、爪の巻く力のバランスで適度なカーブになっているからです。
つまり、爪の厚さや靴による圧迫で正常のバランス状態が崩れると、巻き爪が進行するなどのトラブルに発展しやすくなります。靴の履き方、靴下やストッキングの履き方、歩行の頻度も巻き爪を予防するためのポイントといえるでしょう。

爪の端を切っていけない理由
爪は、3層構造でそもそも両脇が巻く特徴があるため、端が気になるからといって切ると、そこからまた爪は巻きます。そのため、巻き爪の悪化を防ぐためにも端を残して切らなくてはならないのです。巻き爪になってしまうと痛みが生じるため歩行にも影響をもたらします。したがって、転倒予防の観点からも巻き爪を悪化させない爪の整え方が重要なのです。

【事例】巻き爪が内側に食い込んでしまい…
「巻き爪のところが痛い」とのことで、男性Yさんの足を拝見しました。すると、陥入爪となっていて爪の端がジクジクとして炎症を起こして赤く熱感がありました。
もともと巻き爪で痛かったらしく、爪切りは指に沿って丸く両端を短くカットしていたようです。炎症部分をよく見ると、爪の端に切り残しが刺のように皮膚に刺さり、そこが原因で炎症が生じてました。
このように、巻き爪の方が、爪の端を短く切ると内側に食い込んだ爪を切り残すことがあり、Yさんのように刺さってしまうことがよくあります。爪をまっすぐ端を残すことで巻き爪の悪化や、Yさんのようなトラブルを防ぐことができます。
根拠を知って足爪を適切に整える
爪の整え方は長年の習慣です。急に変えようとしても馴染まず「気持ち悪い」などと感じてしまうこともあるでしょう。
とはいえ、本記事をお読みいただいた方には、爪の両端を切り落とすと巻き爪が悪化しやすくなることがおわかりいただけたはずです。
爪は丸く切らず、横に真っ直ぐ整えることを意識して巻き爪を予防し、安定した歩行を維持できるよう心がけましょう。少しでも早い時期に適切な整え方を知って、毎日の習慣に取り入れていただくことが大切です。
【参考文献】
菅谷文人他『巻き爪の発生のメカニズムに即した治療方法とは』聖マリアンナ医科大学雑誌,42(2)2014
東 禹彦『爪のアセスメントを極める 爪の解剖と爪疾患』日本フットケア・足病医学会誌3(3):105-110 日本フットケア・足病医学2022