介護施設では、利用される際にご家族に利用者の趣味や今までの生活について聞くことがあります。これは、認知症の進行予防のために昔のことを思い出して意欲や精神の安定ができる回想法(回想療法)を行うためです。
今回は、レクやリハビリにも取り入れられている回想法の効果や実践方法、普段の生活の中で回想法を取り入れられる習慣や遊びについて紹介いたします。
回想法とは
医療や介護に携わっている方は、回想法についてご存知かと思いますが、一般的にはあまり聞き慣れない言葉だと思います。
回想法は、認知症の方に昔の自分が経験したことを周りの人たちに話してもらうことで精神が安定し認知機能にも良い影響があるとされている療法です。
若かった頃に旅行した写真、趣味や家庭で使用したもの、仕事の経験などが話題になります。
1960年代にアメリカの精神科医ロバート・パトラー氏が認知症の方へのアプローチ方法として提唱し、現在ではレクリエーションやリハビリに広く取り入れられています。
回想法の実践と効果
回想法を行うときのポイントは、次の通りです。
回想法を始める前に準備すること
昔のことを思い出しやすい写真や音楽、本、季節の花、おもちゃ、生活用品などを準備します。また、事前に話し合うテーマを決めておきましょう。
介護施設で行われる手法
- 同じ趣味や生活環境を経験した方を10名ほど集めて、介護スタッフが司会役で入り行うグルーブ回想
- 高齢者同士で写真や思い出の品を使って一対一で行う個人療法
注意点
回想法は、正しい情報を聞き出すことでなく、高齢者に安心感をもって話してもらうことが大切です。コミュニケーションを楽しんだり、自信を持つことが目的なので、仮に話の内容が間違っていても否定や訂正をしないように注意しましょう。
また、場合によっては少し暗い内容の話題になることもあります。その際は、最後に明るい方向に話を誘導するように努めましょう。
回想法の効果
回想法は脳内の血流が良くなり、生活に対する意欲が向上するとされています。そのため、認知症予防や高齢者のうつ症状の改善・予防が期待できると考えられています。
そのほかにもこれまでの人生を振り返ることになるので、自信や希望につながり精神が安定しやすくなったり、趣味や生活環境が近しい人と話題を共有して自然と友人が増えたりするなどの効果が確認されています。

回想法を取り入れたレクリエーション
回想法を取り入れたレクには、ベーゴマや紙風船、竹とんぼなどで遊んだり、郷土料理の調理などがあります。特に人気があるのは、懐かしい歌謡曲や昔の映像作品を見て、当時のことを回想するレクリエーションです。
今回はカラオケを用いた回想法を紹介いたします。
活動内容
- 活動場所:デイサービスセンター、地域の通いの場
- 参加人数:10名~20名
- 活動時間:約1時間
- 内容:昭和歌謡を用いたカラオケ
参加者の声
- 昭和メロデイを聞いたら現役時代を思いだし毎日の生活が楽しくなった(70歳男性)
- 若い頃に流行した歌謡曲を聴き、うれしくなり歌を口ずさんだ(85歳女性)
レク中に参加者の表情がみるみるうちに良くなり、周りの人との会話もいつもより多くなりました。
回想法を取り入れてプレフレイルを予防し生き生きとした毎日を過ごす!
回想法はそれほど難しいものではないので、介護施設だけではなく、自宅でも行えます。
例えば、毎日の習慣として、旅先で購入した箸やお茶碗などを使用すると、食事時に旅行の思い出がよみがえりやすくなります。また、外出時にかつて仕事で着ていたスーツを着用するだけでも昔を思い出すことができるでしょう。
時間に余裕があるときは、思い入れのある映画などをご家族と一緒に鑑賞しながら当時のことを話すだけでも回想法になります。どれも手軽に実践できるので、在宅介護でも取り入れてみてはいかがでしょうか。
