こんにちは。「介護✕メンタル」を担当する「3Sun Create」代表で、介護職専門コーチ・研修講師の三田村 薫です(4月20日「介護リーダー養成1日集中講座」参加受付中)。
介護現場はリーダーがしっかりと物事を把握しているからこそ、スタッフが動きやすく仕事をこなすことができる。逆に、リーダーが取り組む内容をしっかりと把握していないと、スタッフがどうしたらいいのか、判断ができなくなってしまいます。現場で混乱を招く前に、リーダーが物事に対して予測しながら動けるようになることが、周囲にとってもリーダーにとっても良い結果につながるはずです。
今回は、「上司やスタッフの予測を立てる」ことについて、上司やスタッフのことで頭を抱えるリーダーの悩みを、解決できるようアドバイスしていこうと思います。
上司に与えてもらわないと仕事ができない

人手不足が常の介護現場では、人材が育ってから役職が就くのではなく、働きながら仕事を覚えていくことが求められます。そのため、リーダーや管理職に抜擢された時点では、リーダーがやるべき業務内容やリーダーの役割が明確になっていない、わからないことがわからない状態です。
そうすると、「リーダーなんてやりたくない」「私には、まだリーダーなんて務められない」「私は管理職にむいていない」と、役職が上がることに消極的になってしまうのも仕方ないのかも知れません。そして、真面目で責任感が強く、スタッフ想いのリーダーだからこそ、上司とスタッフの板挟みになり、スタッフや上司との関わり方に頭を痛めている人も多いのではないでしょうか?
「施設長が現場のことをわかっていなくて、無理なことばかり言ってくるんです」「前任のリーダーが突然辞めてしまって、何をどうしていいのか誰も教えてくれないんです」「私ばかりに業務がまわってきて、誰もサポートしてくれないんです」と、ご相談をお受けすることがあります。
ご相談者に「あなたが最優先で改善したいことは何ですか?」、「その問題が改善すると何がどう変わるんですか?」と伺うと、「それは、上司が決めることですから…」と更に消極的な答えが出てきます。でも、よくお話を伺っていると、「上司から教えてもらわないと、わからない」「上司が教えてくれないと何もできない」と、上司を全面的に頼り過ぎているのではないかなと感じるのです。
つまり、「上司から与えられないから、何もできない」「上司が教えてくれないから、わからない」ということは、極端に言うと、与えられないと仕事ができない、与えられたものだけが仕事だという発想だということになります。この発想では、いつまで経ってもやらされ仕事しかできないことになってしまいます。
指示にだけに従うというのは、周囲と差別化できないばかりか、与えられる仕事が楽しいはずありません。やらされ仕事にやりがいを見出すというのは無理があります。自分で考えて主体的に関わるからこそ、自らやりがいを創れるのです。
リーダーに必要なことはGive&Take

私は、仕事にやりがいを見いだすためにも「部下力」は必要だと考えます。「部下力」という言葉は耳慣れないものかも知れませんが、これを理解しているかどうかは、今後の仕事人生を大きく左右するものだと思います。
私が介護現場で働いていた当時、仕事を進めることが上手な人と、そうでない人が居ることは、肌で感じていました。もちろん仕事の効率や効果を左右する要素にはさまざまなものがありますが、業務の中で私が最も重要だと考えたのは、「ご利用者のニーズ」でした。そして、「ご利用者のニーズ」を考えている内に自然と他者のニーズも考えるようになっていました。
例えば、スタッフから「明日のシフトは、どうなっていますか?」と聞かれるだけでも、スタッフがシフトを気にするということから、「用事があるから早退したいのかな?」もしくは、「苦手なスタッフがいて一緒にならないか心配なのかな?」と、これだけでも、さまざまな要因が予測されます。
早い段階でスタッフの要求が予測できれば、対応もスムーズに済みますし、「当日、急にスタッフが早退する」「スタッフ同士が揉める」といった突発的な事態にならずに済みます。もちろん、最初からできていた訳ではありませんが、自然と「スタッフのニーズ」「上司のニーズ」を考えることができていたように思います。この考え方は、今でも非常に役立っています。つまり、他者が求めるものは何なのかを予測して動くのです。
仕事そのものについては、多くの方が真面目に取り組んでいると思います。しかし、上司の視点で見ると、同じような仕事をしているようでも、フォローしやすい部下と、フォローしにくい部下が存在するのです。
例えば、上司から「この書類を今日中に提出するように」と言われたとします。あなただったら、何時頃に提出しますか?「目の前の業務がひと段落してから提出する」「業務が終わってから提出する」では、上司のニーズに応えられていない可能性があります。「部下力」の高い人は、上司から「今日中に提出」と言われたら、「今日中ってことは、この書類を今日中に上司が評価するんだな」と上司のニーズを予測して考え、「だったら、15時ぐらいまでに提出した方がいいな」と考えます。
そして、上司のニーズに応えたあとに自分のニーズを伝えるからこそ、上司からのフォローを受けやすいのです。結果として、もちろん上司としても効率的な仕事は助かりますが、何よりもお願いした本人がもっとも助かるのではないでしょうか?仕事は、Take&Giveではなく、常にGive&Takeです。
「上司のニーズを予測しながら動く能力」を「部下力」だと考えると、普段からご利用者のニーズを予測しながら動いている介護職にとっては、この視点をもつだけで簡単なことだと思います。
自分だけ頑張っても限界がありますし、介護は一人では解決しません。必ず「他者」の協力や連携を必要とします。頼みごと、相談ごと、お願いごとがスムーズに済ませられるかどうか、ここで効率的に仕事ができるのか大きな差がつくのです。