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第12回

看取り期の家族の心得4つを心理カウンセラーが伝授 ショックや悲しみを抑え込む必要なし

最終更新日時 2018/03/07
#親の介護 #看取り・終活
大切な人が最期を迎えるのは、混乱し不安になるものです。「涙がとまらない。苦しい」そんなときは、「しっかりしなければ!」「気持ちを強く持たなければ!」と思う必要はありません。自分がショックに気づくことを受け入れてください。

こんにちは。介護の教科書「メンタル」担当の介護者メンタルケア協会・代表で、心理カウンセラーの橋中今日子です。

介護は精神的にも肉体的にも負担が大きく、介護する人のケアが最も重要です。しかし、介護は長期化しやすく、気づかないうちに疲労は蓄積されていきます。そして誰もが、相談することが重要だとわかっていても、いざというときには一人で頑張りすぎてしまう状況に陥ってしまいます。

私が代表を務める介護者メンタルケア協会にご相談を下さる方のお声を聞いていると、「自分は大丈夫だ!」と思っていらっしゃる人ほど、頑張りすぎる傾向が見られます。一人で頑張らない、抱えこまないためには、自分の状況を客観視する必要があります。 この連載では、実際にあった相談からわかった、問題と解決策についてお伝えしています。事例を通して、私は頑張りすぎていないだろうか?とご自身を振り返る機会にして頂ければ嬉しいです。

第9回は、介護が本格的に始まる「安定期」を上手に乗り越えるヒントをお伝えいたしました。今回は、家族の最期の時間をどのように過ごすかを考える「看取り期」を上手に乗り越えるヒント<前編>をお伝えします。

看取り期は加齢による老衰や、病状が徐々に進む中迎えるケースと、新たな病気や怪我によって状態が急変し、突然看取り期が訪れるケースの二つがあります。家族の状態が急変し、突然看取り期に直面した際に、看護、介護する人はパニック状態に陥ることも少なくありません。

介護を4つのステップに分けた図を用意してあるので、まだ見たことのない方は以下の「介護の時期4ステップ」を簡単に復習してから読み進めてくださいね。

出典:介護者メンタルケア協会更新

ショックや悲しみを無視したり、否定したりする必要はありません

事例① 50代・会社員・女性 Yさん

母(89歳・要介護4)が肺炎で緊急入院をしました。レントゲンで肺が真っ白になっていて、主治医から「非常に危険な状態です。近しい人には連絡を取ってください」と言われました。母が頑張っているときに私が弱気になっている場合ではない!しっかりしなければ!と思うのですが、涙がとまりません。気持ちを強く持つにはどうしたら良いでしょうか?

Yさんのように、家族の状態が急変し、医師からも「覚悟してください」と告げられれば、ショックを受けて当然です。不安で涙が止まらない、何をどうしていいかわからないほどパニックになったときは、無理に落ち着こうとせず、まずは自分がショックを受けていることに気づきましょう。

家族の急変、突然看取り期が訪れたときのメンタルケア、対処方法

①身体に起こっている変化を観察する
手や足が震える、汗ばむ、ドキドキしている、胸がぎゅっとしめつけられるなど、身体に起きていることを観察します。身体に起きている変化に気づくと、「私がしっかりしなければ!」「冷静にならなきゃ」「落ちつかなければ!」と考え、身体症状を抑えようとされる方がいらっしゃいますが、症状を止めたり、抑え込んだりする必要はありません。なぜなら、これらの症状は身体が緊急事態への対応やショックからの回復に向けて起きている症状だからです。今、自分の身体に起きていることを観察し、「今、身体に起こっていることに気づく」ことだけを意識してみましょう。
②身体に起きていることを、声に出してみる
「今、手が震えている」「ドキドキしている」「胸が苦しい」など、言葉に出してみましょう。声に出すことで客観視でき、パニック状況に巻き込まれている状態から抜け出すきっかけを作れます。
③感情を書き出す
自分がどんな気持ちなのかを書き出してみましょう。不安だ、苦しい、悲しい、さびしいなど、思いつくまま書き出し、自分の気持ちを見えるようにします。この作業は、今起きている感情を受け入れる準備につながります。ショックや不安に対するメンタルケアでは、無理やり抑え込むのではなく、「ショックを受けている!」「今、不安なんだ!」と気づき、受け入れることが重要です。
④パニックに陥ったとき、ショックを受けたときのメンタルケア
これにについては、第4回の「パニック期を乗り切るメンタルケア」でお伝えしているのでご参照ください。

家族や親族の間で起こる、考え方や意見の食い違いが問題に

看取り期では、家族はショック状態が癒えない状況の中、「治療はどこまで望みますか?」「蘇生処置を希望しますか?」など、家族の命に関わる選択を迫られます。今の状態から回復するのか?難しいのか?十分な情報がないまま、厳しい選択をしなければなりません。以下のような事例があります。

事例② 40代・会社員・女性

先月、父(72歳)がすい臓がんの末期で余命6ヵ月と診断されました。自宅で最期を迎えたいと父の希望があったので、母と私たち兄弟(兄、姉)とで相談し、遠方に住む兄は経済的な援助を行い、近くに住む姉と私と姉が、介護保険を利用しながら父と母を支えるつもりでいました。

ところが、前週に父の容態が急変し緊急入院となりました。主治医からは、「1ヵ月過ごすことも難しいかもしれない」と告げられました。そして「痛みをコントロールするために、少し強い効果ができる鎮痛剤を使えば、お父様の苦しみを軽減できます。ただ、意識状態が落ちるのでお話することは難しくなります」と説明がありました。

父は、痛みのためか朦朧としていて意思確認ができません。母は「私は決められない」と言います。姉も私も、ベッドで父がもがき苦しむ状態を見ているのがつらく、主治医が進めてくれる鎮痛剤を利用したいと考えています。

鎮痛剤を使いたいことを遠方に住む兄に相談したところ「そんな強い薬を使って命が縮まったらどうするんだ!余命半年って言われたんだろう?あきらめるなよ!」と怒鳴られました。

兄の父を思う気持ちを理解しようとは思いますが、父の側にいない状態で文句だけ言う兄が許せません。でも、兄が言うように「鎮痛剤を使うことで、父の命を縮めることになるのでは?」との不安も拭えません。どうしたらいいでしょうか?

看取り期では、厳しい選択を迫られることが多く、Aさんのご家族のように、考え方、意見の違いや介護・看護ケアの関わる頻度の違いから、家族、親族感で軋轢が生まれることがあります。

  

家族で治療方針の意見が分かれたときの対処方法

事前に、「自宅で最期を迎えることを支えたい」「延命治療はしない」と決めていたとしても、そのときになるとさまざまな感情が生まれます。 本人の意思確認が難しく、家族で判断をしなければならないときには、「どの治療法が最適か?正しいのか?」を考えるのではなく、その治療を選択することによって、「家族としてどんな時間を過ごしたいのか?」「何を得たいのか?」「どんな不安があるのか?」について話し合いましょう。

Aさんの場合、お兄様が鎮痛剤の利用を否定したのは、「父親の身体に負担がかかることはしたくない」との思いからでした。決して「痛みを抱えたまま、苦しんだ状態が続くこと」を望んでいるわけではないのです。私はAさんに、お兄さんの不安な気持ちに寄り添い、そして自分も不安なんだと素直な気持ちを伝えてみませんか?とアドバイスをしました。

Aさんはお兄さんに電話をかけ、「兄さんは、父さんの体への負担を心配しているんだよね…?父さんが父さんらしく生きることをあきらめてほしくないんだよね…?私もその気持ちは一緒だよ。薬を使うことで、お父さんの命が縮まってしまうかもしれないって私も不安なの。だから一度、主治医の先生と一緒に相談しない?」と伝えました。

その後、兄弟、母親で、改めて主治医から鎮痛剤の使用について説明を受ける機会を作れたとAさんから報告があり、その後「主治医の説明を受けた後、兄は、鎮痛剤を利用することについて文句を言わなくなりました。実際に痛がる父の様子を見たことも大きかったと思います」その後、鎮痛剤を使っての疼痛コントロールを行われ、お父様は2週間後に静かに旅立たれたと連絡がありました。「後悔がないというわけではありませんが、父を看取れて良かったと思っています。兄の気持ちを無視して決断しないで良かった」とAさんは話されていました。

医療や介護サービスが受けられる環境は、地域差やご家庭の状況によって異なります。ですから、Aさんのように、最終的に家族全員が同意できる選択ができるとは限りません。そして、最期の時間をどう迎えるかについて、事前に話し合いができていたとしても、いざそのときになれば、戸惑い、迷いが生じることは自然なことです。

だからこそ…

  • 看取り期は、想定していた状況と異なる状況が起こり得る
  • 本人、家族で決めていたとしても、実現できない状況も起こり得る

この二つの点を、家族間で共有しておきましょう。

そして、家族で意見が分かれたときは「何が不安なのか?何を避けたいのか?」「家族として、どんな風に関わりたいのか?」不安や望んでいることについて、話し合いをしましょう。

まとめ

大切な人との最期の時間に向き合うときは、混乱し不安になるものです。「涙がとまらない。苦しい」そんなときは、「しっかりしなければ!」「気持ちを強く持たなければ!」と思う必要はありません。自分がショックを受けていることを気づくことから始めてください。そして、看護、治療方法に迷ったときは、家族だけで悩まず、医療者と相談しながら考えましょう。

次回、「看取り期を乗り越えるヒント<後編>」では、看取り期の介護者の疲労の対象方法、そして看取り後のグリーフケアについてお伝えさせていただきます。稚書「がんばらない介護」では、看取り期で起こりやすいトラブルと、具体的な解決策をまとめています。困ったときの参考にしてみてください。

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魚谷 幸司
認知症支援事業所笑幸 代表
2019/03/22

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