食事の順番について、みなさんも一度は「野菜から食べるのがいい」と聞いたことがあるのではないでしょうか。
確かに、ダイエットをしている方や糖尿病患者にとっては食物繊維やクエン酸などを含む野菜を先に食べることで血糖値の上昇を抑えることができ、空腹感も減少させることができるため、いわゆる「ベジファースト」で正解です。
ただし、食事量が落ちている高齢者にとって、これは危険な食べ方かもしれません。というのも、食物繊維の多く含まれる野菜を先に食べると野菜でお腹がいっぱいになり、筋肉量の維持に不可欠な肉や魚などの主菜を充分に食べることができなくなってしまう可能性が高いからです。
代わりにおすすめなのが、お肉やお魚などの「動物性タンパク質」から食べること。
今回は、高齢者が動物性タンパク質を摂ることの重要性をお伝えするほか、おすすめの食事順も解説します。
長生きしている人ほど動物性タンパク質を食べている?
実は、「長生きをしている人はお肉やお魚などの動物性タンパク質を多く口にしている」という興味深い結果が出ています[3]。
桜美林大学名誉教授・柴田博氏の研究によると、日本人のタンパク質の摂取量を調査したところ、平均的な人が総エネルギー量のうち約14.6%を動物性タンパク質で摂取していたのに対し、100歳以上に達した高齢者の場合、男性で16%、女性で16.9%を動物性タンパク質で摂取していたのです。
では、なぜ動物性タンパク質の摂取が長生きにつながるのでしょうか?
その一因として、高齢者に多い低栄養を解消し、免疫力を高めることが考えられます。
高齢者がお肉やお魚を食べるメリット
高齢になると食事量の減少による低栄養状態により、免疫力低下やフレイルになることが問題視されています。
歳を重ねるにつれて義歯が増えてものが噛みにくくなったり、食べたものを飲み込む嚥下(えんげ)能力が落ちたりします。その結果、食べる量が減ることもあるでしょう。その上、友人がいなくなったり、一人暮らしになったりするなどの生活様式の変化から徐々に活動量が減ったり、精神的に滅入ってしまったりして食欲が減退することもあるそうです。
ですが、必要な栄養素を摂りきれずに低栄養状態が続くとフレイルにつながり、さらに活動量が落ち…と、悪循環を招いてしまいます。時には免疫力が落ちて肺炎などにかかり、最悪の場合命を落としてしまうケースもあります。
そんな状態を救ってくれるのが、お肉やお魚等の動物性タンパク質を摂取することで得られる「アルブミン」という成分です。アルブミンは感染症や脳卒中、心筋梗塞の予防に効果的とされているほか、低栄養状態や免疫力の改善も見込めます。
なお、「タンパク質を効率よく摂取する」という点においては、お魚よりもお肉のほうが優秀です。というのも、同じ重量で比較した場合肉のほうが多くタンパク質を含んでいるため、少ししか食べられない場合はお肉を選択したほうが効果的なのです。
また、人はタンパク質を口にすると、構成要素であるアミノ酸まで消化した上で再合成して身体に取り込むのですが、同じ哺乳類であるお肉のほうがタンパク質の形が近いため、より能率的に吸収できます。
ただし、お魚には動脈硬化を防ぐなどの効果があるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの栄養素が含まれているため、こちらも高齢者の方にはぜひ積極的に摂っていただきたいです。「お肉だけを食べていればいい」ということではなく、バランスよく組み合わせていくことが大切です。
食事順も工夫しよう
このように、免疫力低下やフレイル予防のためにも積極的に摂取したいお肉やお魚ですが、「食べる順番」も重要です。
食の細い高齢者の方の食事順としては、まずはお肉やお魚などの主菜から食べ始め、次いで野菜などの副菜を食べ、炭水化物を最後にするのがおすすめです。
主菜から食べ始めることで、お腹が空いているうちに高齢者に欠かせない動物性タンパク質を充分に摂ることができます。
また、炭水化物よりもお肉やお魚を先に食べることで、食後の血糖上昇を抑制することもできるのです[5]。
歳を重ねても元気になる食事を!
年齢を重ねたこととは関係せずとも、日々、食欲や食べたいものは変わります。ですが、一度フレイルになると、体力を戻すことが難しくなってしまいます。
食べる順番を工夫し、なるべくお肉やお魚などの主菜を充分に口にするように心がけましょう。
【参考文献】
[1]長生きしている高齢者は何を食べているか?(公益財団法人長寿科学振興財団)2023/11/10
[2]食べる順番療法について(風間内科医院)2023/11/10
[3]高齢者栄養におけるタンパク質の重要性(柴田 博)2023/11/10
[4]予防医学 ~病気にならないために~第十六回「高齢者こそたんぱく源を 肉と魚の食べ方」(山田養蜂場)
[5]今日から始める食事と運動(清野裕)2023/11/10