慢性腎臓病は、加齢と生活習慣も原因とされることもあり、高齢者でも罹患することがあります。
毎日の食事で栄養素の摂取量を注意するよう医師に指示されることも少なくありません。
そこで本記事では、管理栄養士が慢性腎臓病の方に提供する食事のポイントをご紹介いたします。
腎臓の働き
腎臓は、次のような機能があるとされています。
- 身体に必要のないもの(老廃物・有害物質等)を尿として体の外に出す
- 尿の量や濃度を調整することで体内の水分や塩分の調整をする
- 血圧の調整や血液をつくるホルモンを分泌する
腎臓病とは、これらの腎臓の機能が何らかの原因で低下した状態をいいます。腎臓病には、炎症や感染などが原因で起こる糸球体腎炎、腎盂腎炎などの病気のほか、高血圧や糖尿病などその他の病気が原因で起こる慢性腎臓病があります。
慢性腎臓病(CKD)とは
腎機能の低下や尿タンパク(※)が出る症状が3ヵ月以上続いている状態を慢性腎臓病(CKD)といいます。
※尿に必要以上のタンパク質が出てしまうこと
CKDがあると、狭心症や心筋梗塞といった心疾患や、脳梗塞などの脳血管疾患を発症するリスクが高くなるといわれています。慢性腎臓病はGFR(糸球体濾過量)という値によって5つのステージに分類され、ステージが進むほど悪化してしまい透析や腎移植が必要になる場合もあります。
慢性腎臓病の症状
初期の段階での症状はほとんどありませんが、状態の悪化とともにタンパク尿や血尿、高血圧、浮腫、疲労感、食欲低下などが現れてくる方が多いようです。放置していると重篤な症状になることもあります。
慢性腎臓病の方が気をつけたい栄養素
慢性腎臓病の予防や改善には、食事に気をつける必要があります。特に以下の項目に注意してください。
必要なエネルギーを摂る
身体を動かすためのエネルギーが不足すると、体内にあるタンパク質を消費してしまいます。そのため、体重が減ってしまったり、有害な老廃物が増えて腎臓に負担がかかるのです。
参考になるのは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で計算されるBMI。できれば「22」を目指すと良いとされています。
必要なタンパク質を摂取する
肉・魚・卵・豆類・乳製品等たんぱく質の多い食品はフレイルをはじめとした低栄養を予防するために減らしすぎず、体重当たり0.8g~1.0g/日程度の摂取をおすすめします。
減塩(1日6g未満)する
腎機能が低下すると、塩分の排出が難しくなり、高血圧やむくみなどを引き起こすリスクが高まります。腎臓に負担をかけないためにも、なるべく塩分を抑えた食品にしましょう。
カリウム制限が必要になる事もあるので主治医に相談する
カリウムは野菜や果物など多くの食品に含まれています。
腎臓は、カリウムを適切に体外に排出してバランスをとっていますが、腎臓の働きが悪いと、この作用がうまくできず体内にカリウムが溜まって高カリウム血症になることがあります。
高カリウム血症は筋肉を弱くしたり、心不全を引き起こすこともあり注意が必要です。しかし、カリウムを多く含む野菜や果物を一律に制限する必要はなく、個人で制限も異なるため必ず主治医の指示を聞いてから対応しましょう。
そのほか気をつけたい栄養素
症状によっては、このほかにもリンの摂取量などに気をつける医師の指示が出ることもあります。かかりつけの主治医や管理栄養士とよく相談しておきましょう。
慢性腎臓病の高齢者へ食事のヒント
では、日頃からどんなことに注意すればいいのでしょうか。
できる限り次のようなことを実践してみましょう。
- 必要なエネルギーを増やすため、サラダや豆腐料理、和え物等に亜麻仁油・オリーブ油、ゴマ油を使用したり、調理工程で油を使用した炒め物や揚げ物にする
- タンパク質制限を指示されている方は、ごはんやパンを低タンパク質のものに替えると、おかずのタンパク質が摂取しやすくなります
- タンパク質の制限がない方は、フレイル予防のためにもしっかり主菜を摂る
- 減塩は全部の食事を薄味にしすぎると食欲が低下することもあるため、味のメリハリをつける
- 減塩の調味料(しょうゆやみそ)減塩の食品(パンや麺類や菓子類等)に替える
腎臓病だけでなく、病気の治療のための食事を毎日継続してつくるのはとても大変です。
現在は配食の弁当でも、減塩やタンパク質を明記した療養食もあります。
調理する方が疲れていたり、どうしても調理ができないときに利用してみてはいかがでしょうか?
慢性腎臓病を悪化させず、在宅で生活が続けられるよう食事の場面でのストレスをなるべく軽減できると良いでしょう。
【参考文献】
[1]日本腎臓学会慢性「腎臓病に対する食事療法基準2014年版」
[2]厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」