食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と日本では定義されており、小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達する食品成分です。
今回は高齢者には必要量を摂ることが難しいと思われている食物繊維についてご紹介いたします。
食物繊維の種類
食物繊維は水に溶けない「不溶性食物繊維」と水に溶ける「水溶性食物繊維」があります。それぞれの食物繊維の働きを紹介します。
- 不溶性食物繊維
- 不溶性食物繊維は、腸を刺激して動きを活発にすることで食べた食品がスムーズに進んでいくように働いています。また、便の量を増やすため排泄を促進して便秘の予防にも効果的です。このような働きで、整腸効果に役立っています。
- 水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は水分を吸収して膨らみ、一緒に食べた食品を長く胃の中に滞留させます。また、小腸で糖が吸収される際に、膨らんだ水溶性食物繊維によって糖が消化酵素と接しにくくなることで血糖値上昇を抑制しています。
あわせて血液中のコレステロールの吸収も抑制しており、糖尿病や脂質異常症の予防や悪化防止に役立っています。
どちらの食物繊維も、高齢者を始め、不足しやすい食品成分なので、積極的な摂取が勧められています。

食物繊維はどのくらいとれば良いのか
日本人の食事摂取基準2020年版では食物繊維は目標量として示されており、65歳以上の男性は20g/日以上、女性は17g/日以上とされています。
イメージできる食物繊維の量で説明すると玄米ご飯を茶碗1杯で食物繊維は約2.1g摂取できます。ただ、玄米ご飯はよく噛まないと食べにくいので噛む力が心配な高齢者では毎食取り入れることは難しいかもしれません。
下記は食物繊維を多く含む食品ですが、確認していただくとわかるように、日ごろ食べている穀類や麵類もありますので、自分の食べやすさや噛みやすさで選ぶのがおすすめです。
食品 | 食物繊維(g) |
---|---|
ゆでそば1食分(約180g) | 3.6 |
乾燥パスタ1食分(約100g) | 2.7 |
ゆで大豆1食分(約50g) | 3.5 |
ブロッコリー1/4個(約60g) | 2.6 |
おくら5本(約40g) | 2.0 |
エリンギ1本(約40g) | 1.7 |
エノキ1/2束(約40g) | 1.6 |
アボカド1/2個(約90g) | 4.8 |
乾燥ひじき大さじ1(約5g) | 2.2 |
モロヘイヤ1/4束(約60g) | 3.5 |
ごぼう1/4本(約50g) | 2.9 |
このほかにも食物繊維は、さまざまな食品に含まれています。現在は、食品や総菜などの栄養表示に食物繊維量が記載されているものが増えていますので、ぜひ確認してみてください。
食物繊維を摂取することの効果
食物繊維の目標量を摂取すれば、心筋梗塞や脳卒中、循環器疾患、2型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんなど、生活習慣病の発症リスクを軽減させるという報告もあります。
生活習慣病の予防や悪化予防のためにも積極的に食物繊維が含まれている食事をおすすめします。
高齢者でも食物繊維を手軽に摂る方法
最後に、食物繊維を手軽に摂取できるコツをご紹介します。
- ミルクココア(牛乳コップ1杯にピュアココア大さじ2)を飲む。食物繊維2.8g
- 汁物や納豆、野菜のおひたしにカットオクラ(冷凍可)を2本分くらい入れる。食物繊維0.8g
- 芽ひじき(大さじ1)を水で戻しておき、汁物や和え物を食べるときに入れる。そのまま ドレッシングなどをかけて食べてもOK。食物繊維2.2g
- 麺類を食べる際に食物繊維の多い「そば」や「スパゲッティ」を選ぶ。ただし、麵類は食塩摂取量も気になるため、食べすぎには注意が必要
- パンを全粒粉パンやライ麦パンに変えて食べる日をつくる
- 白米に玄米などを混ぜて炊いてみる(雑穀米でも可)

食物繊維が多い食品は、筋張った噛みにくい物をイメージされることも多いですが、食物繊維は「ねばねば」した物や「さらさら」した食べ物もあります。
日頃の食事を少し意識するだけでも食物繊維の摂取量は増えるのでご自分の好みに合わせて、食べやすいものを試してみてください。