みなさん、こんにちは。(公社)大分県栄養士会の栄養ケア・ステーションを担当している、管理栄養士の濱田美紀です。
高尿酸血症は痛風とのかかわりで話題になることが多いのですが、現在では高血圧や糖尿病・肥満などの生活習慣病や腎障害、脳・心血管障害との関連性も判明しました。
今回は、「どうしたら高尿酸血症にならずに済むか」を過去に遭った事例を用いて、栄養士として提案したことを紹介していきます。
高尿酸血症は血清尿酸値が高くなることで発症する
高尿酸血症とは、血清尿酸値が70mg/dlを超えると判断される症状で、この状態が続くと痛風の発症リスクが高くなるといわれています。
そんな高尿酸血症ですが最近、痛風以上に恐ろしいことがわかってきました。それは、尿酸値が高いと将来、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞や狭心症、さらには慢性腎臓病から血液透析といった重い病気を発症する人もいるということです。
今のところは観察研究の段階でありますが、高尿酸血症が日本人の死因の多くを占めるそれらの病気の原因、あるいは促進因子になっている可能性は十分にあります。
国民生活基礎調査から推定されるわが国の痛風患者数は100万人であり、その原因となる高尿酸血症の患者さんは10倍と推定されていますので、約1,000万人以上。このことを考えると、痛風がなくとも尿酸値の上昇は放置せず、啓発活動を心がけるべきと考えられます。

『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン改訂第 3版』(日本痛風・尿酸核酸学会)によると、尿酸値の上昇を防ぐための啓発活動が以下のように記載されています。
- 高プリン体を控えること
- プリン体としての摂取が一日400㎎を超えないようにする
- 肥満のある方へは糖尿病食に準じた、摂取エネルギーの適正化
- 高炭水化物食はインスリン抵抗性を増悪させるので望ましくない
- 乳製品は血清尿酸値を低下させるので積極的に摂取する
- ショ糖や果糖の摂りすぎに注意する
- アルコールは血清尿酸値を上昇させるため種類を問わず過剰摂取は慎む
- 適正な体重(BMI<25)を目指し、週3回程度の軽い運動を継続して行うこと
- 過度な運動や無酸素運動は血清尿酸値の上昇を招くため避ける
これを見ていただくとプリン体の多い食品やお酒だけ気をつけるのではないことに気づいていただけると思います。
生活改善につながった事例をご紹介!
私が出会った尿酸値が高値の方は、とにかく食べることやお酒を飲むことが大好きです。高齢者よりも中年男性からの相談をよく受けます。次に、生活習慣(特に食生活)の改善のために私がどのように伝えたかをお教えします。
尿酸値が高い人はとにかく食べたりお酒を飲むことが好き
性別:男性
年齢:50代
BMI:27kg/㎡
尿酸値:9.0mg/dl
結婚歴:独身
仕事は事務職で、日中の活動量は少ない方でした。会社の健康診断で尿酸値が高いと言われ、再検診を告げられていたにもかかわらず放置。その後、痛風発作の痛みの症状が出て、慌てて受診したそうです。
私のところには、栄養指導を受けるために訪問してくださいました。早速、この方の食事アセスメントをしてみると、朝ご飯はコーヒーとバナナ1本。昼食は会社に販売にくる弁当(親子丼やカツどんを購入することが多い)で、夕飯はコンビニやスーパーに売っている焼き鳥や揚げ物、焼き飯や麺類等が多いとのこと。
野菜は主にサラダで、マヨネーズを使っているものを選ぶ傾向にあるようです。毎日晩酌をしていて、飲んでいるお酒は尿酸値が高いことを気にして、情報番組で紹介されているプリン体の入っていない焼酎にしています。さて、この方が気をつけるべきものは何でしょうか?私が提案した事項は以下の通りです。
改善策を以下のようにお伝えしました!
お酒はなるべく控える
尿酸値の有無にかぎらず、お酒を飲むとアルコールが分解されて代謝される過程で、体内での尿酸の合成が促進されることや、腎臓での尿への尿酸の排泄が阻害されるということがあります。
確かに、焼酎にはプリン体は含まれていませんがアルコールは含まれています。プリン体がないと思い、沢山飲むことでアルコール摂取量が増えてしまい、結果的に高尿酸血症になってしまうのです。
焼酎の量を減らし、水割りやお湯割りにすれば、アルコール摂取量を減らすことができます。このとき、薄めたからといって沢山飲んだら意味がないので飲む量は今までと同じか、それ以下にしましょう。
肥満の解消
肥満はアルコールの作用とは別に、腎臓での尿への尿酸の排泄が阻害されると考えられています。

この方には食習慣をしっかりと聞き取りした後、肥満を解消するためにプリン体摂取量を減らすことと同時に、肥満を解消する必要があることも伝えました。肥満を解消するために伝えた方法は以下の通りです。
- 朝食に簡単にたべられそうなおにぎりやヨーグルトなどを追加する
- 昼食には幕の内弁当のようにいろんな食材が入ったものを選ぶ
- 夕食に時々は魚や豆腐料理も購入する
- サラダを購入するときはカロリーの少ない物をえらぶ(食品表示を確認する)
生活習慣に関しては、歩く機会を増やすことを伝えました(万歩計の購入を勧めました)。机に座って仕事をするときには姿勢を整えるようにすることや、たまに膝を着けてお腹に力が入るように座ると仕事しながらエネルギー消費できます。
自分に合った尿酸値を継続して下げる方法を見つけよう
高尿酸血症の人は飲酒に気をつけるだけではなく、食生活や生活習慣も改善する必要があります。脳梗塞や心筋梗塞の予防のためにも、継続的に尿酸値を下げる独自の方法を見つけましょう。
例えば先述した事例の方は、私が伝えた注意事項を大きく紙に書いて食事の際、見える場所に貼っていたそうです。

これが良かったのか、投薬治療もしながらでしたが1年後には5kgの減量に成功。BMIが25.5kg/㎡まで下がり、尿酸値が7.3㎎/dl まで改善しました。
本人も尿酸値が高いと怖いということがわかり、今後も病院で定期的に検査を受けるそうです。きっと、もう検査にひっかかることはないでしょう。
参考文献
- 『佐々木敏の栄養データはこう読む』(女子栄養大学出版部)
- 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン改訂第 3版』(日本痛風・尿酸核酸学会)

