皆さん、こんにちは。管理栄養士の濱田美紀です。
「フレイル」などによって筋力が低下した高齢者に不足しがちな栄養素の一つにタンパク質があります。
今回は普段の料理にタンパク質が多い食材をうまく追加するコツをご紹介いたします。
高齢者の筋肉量が減少しやすい理由
日本人の食事摂取基準2020年版によると、フレイルとは、以下のような状態だと定められています。
- 体重減少がある
- 疲労感がある
- 活動度が減った
- 歩行速度が遅くなるなどの身体機能の低下
- 筋力(握力)の低下
この1~5のうちの3項目に当てはまる場合は、フレイルの状態になっている可能性があります。フレイルになると、高齢者は健康障がいに陥りやすくなります。
フレイル状態になる原因には、「筋肉量の減小や筋力(握力)の低下」「歩行速度が遅くなるなどの身体能力の低下(サルコペニア)」があります。こういった状態になる要因としては、「必要な食事が摂れない(低栄養)」があると考えられています。
さらに低栄養の主な原因としては、以下のようなことが挙げられます。
- 一人暮らしになってしまったことや経済面での問題
- 認知症、加齢による食欲の低下
- 慢性疾患や服薬状況
- 義歯があわず食べ物が噛みにくいなどの口腔の問題
- 日常生活での動きが減ってしまい食欲がない(廃用)
筋肉をつくる栄養素と言えば「タンパク質」を思い浮かべる方も多いと思います。
タンパク質とは、20種類のアミノ酸がペプチド結合したもので、ほかの栄養素から体内で合成できないものであるため、必ず食べ物などから摂取しないといけない栄養素です。
皮膚や血管や消化器を始め、フレイル予防に必要な筋肉をつくっている栄養素の一つがタンパク質です。高齢者(65歳以上)は、体重1kg当たり1gほどのタンパク質を摂取することで、フレイル予防ができると考えられています。
筋肉量の減少を防ぐためにできること
フレイルの予防に必要なタンパク質の量だと言われている「体重1kg当たり1g」とは、どのくらいの量を指すのか考えてみましょう。
例えば、体重が50kgの方に必要なタンパク質は50g(平均)です。この量を食べ物から摂取するために必要な食材の量は次を参考にしてください。
- サバの味噌煮缶詰1/2缶(16.0 g)
- 鶏のささみ1本(11g)
- 納豆1パック(16.5g)
- 卵Mサイズ1個(6.3g)
※()内はおおよそのタンパク質の量です。
普段の食事に、このくらいの量のタンパク質を多く含む食材を使用する必要があるということです。もちろん主食の飯やパンや麺、副食の野菜などにもタンパク質は含まれますが、毎日計算しながら献立を考えて、調理するのはとても大変です。
そこで、おすすめなのが普段の食事にタンパク質が含まれている食材を追加してちょこちょこ食べるという方法です。まずは主食のタンパク質の量を把握しておくことが肝心です。
主食に含まれるタンパク質の量
- ご飯軽く1杯(160g):4g
- 食パン1枚(6枚切):5.7g
- ゆでうどん1玉(200g):5.2g
これらを食べれば、3食でタンパク質を12~16gは摂取することができます。後は、おかずで必要なタンパク質や栄養素を足していきましょう。
調理法としては、家にある野菜とひき肉や鶏肉、豚肉、なければベーコンやハム、しらす干しやちくわ、はんぺん、買い置きしている缶詰め類(サバ缶・ツナ缶・サンマ缶など)を炒めたり煮たりして、仕上げに卵を入れていただければ、少しずつ摂取するタンパク質を増やすことができます。食材の好き嫌いもあると思うので、ご自分で食べられそうな物を少しずつ足してください。
高齢者の中には一度の食事で食べる量が少なくなってきている方もいます。そのような方は、朝食・昼食・夕食の3食で、いろいろな食材を使用した方が無理なく必要な栄養が摂れます。朝食をしっかりと準備するのは大変ですが、味噌汁に豆腐や卵を入れたり、ヨーグルトやチーズを献立に足したりと、少しの工夫で栄養素を増やすことができます。
健康な体で元気に過ごすためには、自分に必要な栄養を必要な量だけ摂ることが大切です。例えば、「タンパク質を摂るためには○○を食べたら良いですよ!」と言われても、嫌いな物であれば続けられません。そんなときは代わりの食材で摂取すれば良いのです。
生きるために食べることは欠かせません。継続できる食べ方を選んで、筋力低下を予防しましょう。