今回の介護報酬改定は、管理栄養士にとって大変だという声をよく耳にします。まずは管理栄養士・栄養士がかかわる改定のポイントを挙げてみましょう。
- 介護保険施設での栄養マネジメント強化加算が追加
- 介護保険施設での経口維持加算の要件が緩和
- 施設でのリハビリテーションマネジメント加算を行う要件に栄養の項目が追加
- 通所施設で栄養アセスメント加算が追加
- 認知症グループホームでの栄養管理体制加算が追加
- ADL維持加算に栄養士がかかわる項目がある
このように、管理栄養士が必要になる場面が増えています。
こうした加算について、たくさんの方より質問をいただいています。その中でも、今回は「栄養マネジメント強化加算の人員配置」について詳しくご説明します。
栄養マネジメント強化加算のために必要な準備
栄養マネジメント強化加算とは、これまで行われていた「栄養マネジメント加算」が施設基準に組み込まれたもので、追加で栄養ケアに係わる体制(管理栄養士の配置)の充実やミールラウンドなどによる丁寧な栄養ケアを評価するものです。主に栄養マネジメントの強化を目的にしています。
これを算定するために必要な準備は以下の通りです。
- 入居施設の前年度平均入居者数にあわせて管理栄養士を配置する
- 栄養アセスメントのスクリーニングで中リスク・高リスクと判断された方に対して週3回以上のミールラウンドを行う。そのうえで、施設内の他職種と栄養ケアプランについて情報を共有する※低リスクの方でも日々の様子を確認し、状態に変化があればすぐに対応
- 必要な栄養アセスメントについて入力した内容をLIFEというシステム(介護保険のデータベース)で厚生労働省へ送る。そのフィードバックをより良いサービスにつなげる
非常勤でも加算できる可能性がある
栄養マネジメント強化加算を算定したいけど、管理栄養士の雇用が足りなくて算定できないという施設もあるのではないでしょうか。
栄養マネジメント強化加算の人員配置は常勤換算で、前年度の入居者の平均数(短期入所は除く)50人に対して管理栄養士1人の配置が必要になります。また、給食管理(献立作成・発注・在庫管理・調理指導など)をする栄養士(委託以外)が配置されている場合は、前年度の入居者の平均数70人に対して管理栄養士1人の配置が必要です。さて、ここで問題になるのが「常勤の管理栄養士をなかなか雇えない」という点です。
しかし、そんな不安を抱いている方でも心配は要りません。配置要件の常勤換算の仕組みを知っておけば、管理栄養士の雇用形態が非常勤の場合でも、栄養マネジメント強化加算を算定できる可能性があります。
まず、知っておきたいのが常勤換算の計算方法です。
注目は、「事業所の定める常勤職員の勤務すべき時間数」です。常勤時間数を週40時間未満に設定している事業所の場合は、週40時間を常勤として計算します。また、計算は1ヵ月(4週間)を基本とします。つまり、常勤者が勤務するべき時間数は週40時間、4週間で160時間になります。
例えば以下の条件で具体的な計算方法を見ていきましょう。
- 非常勤Aさんの勤務時間は4週間で128時間
- 非常勤Bさんの勤務時間は4週間で96時間
この条件を計算式に当てはめると、「(128時間+96時間)÷160時間=1.4」となります。この場合の常勤換算人数は1.4人となります。また、施設に栄養士または管理栄養士1名以上配置という人員基準があるので、そこに追加する管理栄養士は非常勤でもOKです。
注意するポイントは休日の扱いです。常勤換算の場合、有休や出張の取り扱いは常勤者かどうかで計算が変わります。常勤者の場合は、有休や出張も勤務しているとして計算に含まれますが、非常勤の場合には算入できません。ただし、常勤者でも長期出張や休暇が1ヵ月を超えたときには計算から除外します。この長期休暇には、産休や育休も該当しますので、基本的には算入できない点に注意しましょう。
人員配置を考えて、介護報酬を算定しよう
入居者65人の施設の場合、栄養マネジメント強化加算を算定する場合は、必要になる常勤管理栄養士は1.3人。常勤職員が週40時間の施設で、常勤の管理栄養士1人勤務していれば、あと0.3人分(週12時間勤務)の非常勤管理栄養士の雇用で算定することができます。栄養マネジメント強化加算を算定する予定の施設は、まず前年度の入居者平均数を確認し、管理栄養士の常勤者数を確認してみてください。
介護報酬算定のためには、人員配置の遵守が大切です。ご自分の施設の状況を把握しましょう。そして、管理栄養士をうまく活用して、入居されている方の健康が維持され、施設にも加算報酬が入るという好循環を生み出してください。
この加算を取得するためには前述の(3)にあたる「LIFEでの提出」が要件ですが、ここを問題視している人もいるでしょう。私も不慣れな中で、入居者の登録、栄養アセスメントの入力を行っています。ただ、苦労するのは最初だけかもしれませんし、最近はLIFEに対応した便利なソフトもあります。
施設事業者は加算についての基礎知識をしっかりと身につけて、それに対応して業務効率を向上させることも視野に入れるべきではないでしょうか。