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第108回

元気なのに痩せてしまう高齢者は要注意!3つの原因と家庭でできる対策とは?

最終更新日時 2025/12/09
#高齢者の健康
目 次

高齢者が「元気なのに痩せていく」3つの原因とは?

「特に病気をしているわけでもないのに、最近痩せてきた気がする」と不安をかかえる高齢者やその家族の方は多くいらっしゃいます。高齢者の体重減少には、目に見えない体の変化が関わっています。まずは、痩せてしまう主な原因を3つ知っておきましょう。

加齢による代謝低下と消化・吸収機能の衰え

高齢になると、体内で起こる変化によって自然と痩せやすい体質になっていきます。その最も大きな要因が、筋肉量の減少です。筋肉量の減少は、基礎代謝の低下を招き、それに伴いエネルギー消費量も少なくなります。すると空腹を感じにくくなり、食欲も落ちてしまうのです。

さらに、加齢は味覚や嗅覚にも影響を及ぼします。食べ物の味や香りを十分に感じられなくなると、食事への興味が薄れ、結果として食べる量が減ってしまうでしょう。

また、これに加えて消化機能の低下も原因のひとつとなっている場合があります。胃の粘膜は年齢とともに萎縮し、胃酸の分泌量が減少します。これにより、ビタミンB12など一部の栄養素の吸収能力が落ちてしまうこともあります。また、胃の運動が低下すると胃から小腸への移送が遅れ、食後に胃もたれを感じやすくなることもあります。

小腸の機能低下が起こっている場合は、栄養吸収が十分されていないことがあります。つまり、食事をしっかり摂っていても、必要な栄養を十分に吸収できない状態に陥りやすいのです。鉄分やビタミンなどの吸収率が低下するため、慢性的な栄養不足になるリスクが高まります。

このような「加齢による痩せやすさ」を放置すると、サルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(虚弱)につながりかねません。良質な栄養摂取と適度な運動を心がけ、こうした状態の予防を心がけることが大切です。

心理的・社会的ストレスによる体重減少

高齢者の体重減少には、心や生活環境の変化も大きく関わってきます。

一人暮らしの生活では、食事中の会話が減り、食べる楽しみが薄れてしまうというケースもみられます。生活リズムの乱れから、朝食と昼食が一緒になり1日2食になってしまうこともあります。

独居や孤独感といった社会的孤立は、低栄養の大きな要因の一つです。家族や身近な人との死別など、喪失体験が重なることで精神的な落ち込みが生じると、「何をするのも面倒だ」と感じてしまい、食事量が減ってしまうことがあります。

家族が心配して声をかけても「食欲がない」と拒否して十分に食べないケースもみられます。

また、気持ちの落ち込みだけではなく、認知症の初期段階でも、食事への意欲低下や摂食量の低下などにより体重減少が起こり得ます。

こうした心理的ストレスや意欲の減退から「食べない」「食べられない」状態になると、短期間でも体重が大きく減少する恐れがあるため、注意深く見守り支援することが大切です。

臓器の病気や薬の影響

元気に見えていても、実は何らかの臓器の病気が原因で痩せている可能性があります。主に考えられる疾患としては以下のようなことが挙げられます。

消化器系の疾患
胃潰瘍や大腸炎などによって食欲不振や下痢が起こり、栄養吸収が妨げられて体重減少を招くことがあります。
糖尿病・代謝異常
血糖値のコントロールが乱れてしまうと、食べているのに体内でエネルギーを有効活用できず体重が減る場合があります。血糖値が高く、多尿となるため、口が渇き、飲水が増える(多飲)などの症状もよくみられます。また、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)のように代謝が異常に高まる病気でも痩せやすくなります。
慢性の感染症・悪性腫瘍
さらに、結核など慢性の感染症やがんなどの悪性腫瘍では、体のタンパク質や脂肪が消耗され、深刻な体重減少(悪液質)につながることがあります。
薬の影響
高齢者が日常的に服用する薬の効果によっては、食欲を低下させたり、口の渇きや眠気や筋弛緩などにより注意力や嚥下機能が下がり、誤嚥リスクが高まることがあります。特に中枢神経に作用する睡眠薬や抗不安薬などはこれらの副作用が出やすく、結果的に栄養摂取量の低下を招いて体重減少につながるケースも少なくありません。

もし普段の生活の中で原因不明の体重減少がみられた場合は、なるべく早めにかかりつけの内科を受診しましょう。

放置は危険!高齢者の「痩せ」で注意すべき症状とは

体重が減っても「元気だから大丈夫」と考えてしまいがちですが、高齢者の痩せは深刻な健康リスクにつながります。どのような症状に注意すべきか、具体的にみていきましょう。

放置すべきではない「痩せ」の基準

実は高齢者では、痩せすぎている人のほうが太り過ぎている人よりも死亡リスクが高いことが報告されています。そのため「元気だから多少痩せても平気」と油断せず、痩せの程度を客観的に判断することが重要です。

BMI値が18.5未満であると、低体重(痩せ)に分類されます。また、意図しない体重減少が一定以上ある場合も注意が必要です。例えば、1年間で5%以上の体重減少がみられると、フレイル(虚弱)のリスクが高まる一つの指標になります。

さらに著しい体重減少の目安として、半年で約10%以上など大きな減少は要注意です。これは放置すべきではない深刻な低栄養状態と判断されるでしょう。

日頃から定期的に体重を測定し、急激な体重減少にいち早く気づくことが大切です。高齢者の痩せがこれらの基準に当てはまる場合は、食事内容の見直しや医療機関への相談など早めの対処を心がけましょう。

フレイルや筋力低下による転倒・骨折のリスク

高齢者が痩せて筋肉量が落ちると、足腰の力が衰えて転びやすくなります。特に体重減少によって筋力が低下したフレイル状態では、ちょっとした段差につまずいただけでも転倒し、打撲や骨折を起こす危険性が高まるのです。

痩せた高齢者は骨密度も低下しやすく、骨粗しょう症の進行によって骨がもろく折れやすくなります。痩せにより骨量も減少し骨が脆くなるため、転倒時に骨折するリスクは一層高くなるでしょう。

高齢者が要介護となる原因として「骨折・転倒」は認知症や脳血管疾患に次ぐ主要な原因の一つとされています。なかでも大腿骨骨折は、歩行や日常生活動作の低下を通じて寝たきりのきっかけになりやすい重大なけがです。骨折後の長期安静で筋力がさらに低下することで、寝たきりになってしまうという悪循環に陥ることも考えられます。

フレイルの状態になってしまうと、軽い感染症でも重症化しやすく、身体機能低下や入院につながることがあります。

また、入院により環境が変わると、自身の居場所が一時的に分からなくなったり、感情の抑制が難しくなったりすることがあります。健康寿命を延ばすうえで、筋力と骨の維持と、骨の弱化を防ぎ、転倒・骨折のリスクを避けることが重要になってきます。

免疫力や嚥下機能の低下による感染症や誤嚥のリスク

痩せによる低栄養状態が続くと、免疫力が低下し、細菌やウイルスへの抵抗力が落ちて肺炎などの感染症にかかりやすくなります。栄養不足の状態が続くと血液中のアルブミンなどのたんぱく質が減っていきます。

それにより免疫機能が低下し、風邪などの感染症を引き起こしやすくなったり、傷の治りが遅くなったりします。

虚弱の状態では、健康な人なら問題にならない程度の軽い風邪でもこじらせて肺炎を発症するリスクが高まることもあります。健康な人であれば、たとえ風邪などで体の倦怠感や発熱があっても、通常は数日で回復します。

しかし、フレイルの状態になると、わずかな体調不良でも回復が遅れ、身体機能の低下や生活動作の悪化につながりやすく、結果として入院や死亡リスクが高まることがあります。

また、全身の筋力低下は飲み込む力(嚥下機能)の衰えを招き、食べ物や唾液が誤って気道に流れ込みやすくなります。喉頭を吊り上げている筋肉や食道の入り口を閉めている括約筋が弱まることで、喉頭の閉鎖が不十分となり誤嚥しやすくなるのです。

加えて、咽頭収縮筋の収縮力が弱まると、唾液や食物などが咽頭に残りやすくなり、これも誤嚥のリスクを高める要因となります。

その結果、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性も高まるため、痩せてきた高齢者では飲み込みの状態にも十分注意することが必要です。高齢者の肺炎では誤嚥性が占める割合が高く、重症化しやすい点に注意が必要です。

食べても痩せるときの対策と相談先

高齢者の痩せを予防・改善するためには、日常生活での工夫と専門家のサポートが欠かせません。家庭でできる対策から、相談すべき窓口まで、具体的にご紹介します。

食事でできる栄養ケア

日々の食事を工夫することで、高齢者の痩せ進行を予防できます。基本は1日3食、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの良い食事を欠かさずとることです。

特にタンパク質が不足すると筋肉量が落ちてしまうため、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品など良質なたんぱく質を毎食しっかり摂りましょう。

目安として65歳以上では、体重1kgあたり1.0〜1.2g/日を目安にたんぱく質をとると良いとされています。エネルギー源となる炭水化物(ご飯やパンなど)も適量をとり、極端な小食や無理なダイエットは避けましょう。

一度にたくさん食べられない場合は間食を活用して不足分を補いましょう。高齢になると1回の食事量が少なくなるため、栄養素の不足によって低栄養を引き起こします。食事だけでは不足しがちな栄養素は、間食を利用して補給すると良いでしょう。

特に牛乳・ヨーグルト・チーズは手軽にたんぱく質やエネルギーを補えるため、間食に取り入れやすい食品です。

また、毎日同じような献立では飽きて食欲が落ちてしまいがちです。和食・洋食・中華など様々な料理を組み合わせ、酢や香辛料、香味野菜などで風味に変化をつけるなど、食事を楽しくする工夫も大切です。

調理に負担を感じる場合は、宅配食やコンビニ、スーパーなどのお惣菜、冷凍食品などを上手に利用しましょう。噛む力が弱い場合には食材を柔らかく煮込んだり刻んだりして食べやすくする配慮も効果的です。

医療機関への受診の目安

「最近急に痩せてきた」「食べているのに体重が減る」という場合は、早めに医療機関を受診して原因を確認しましょう。高齢者の急激な体重の減少には、重大な病気が潜んでいる可能性があるため、注意が必要です。

体重減少は胃や大腸のがん、糖尿病や甲状腺の病気など重大な疾患のサインである可能性があります。特に甲状腺ホルモンや血糖の異常などは検査によって発見でき、適切な治療介入で体重減少を食い止められる場合があります。

また、明らかな病気が見つからない場合でも栄養状態の評価や専門的な食事指導を受けることで改善できることもあります。

ケアマネ・栄養士などへの相談

担当ケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーに体重減少の悩みを相談してみましょう。必要に応じて管理栄養士や主治医と連携し、ケアプランに栄養改善の支援やサービスを組み込んでもらえます。

訪問看護師が体重・食事摂取量を記録し、1ヵ月で3%以上の体重減少があった場合には、ケアマネジャーに報告する体制を整えているケースもあります。食事内容の見直し、栄養補助食品の活用、嚥下機能の評価など、専門的なサポートを受けられるでしょう。

地域によっては、管理栄養士による訪問栄養指導や栄養相談の窓口を利用できる場合もあります。栄養のプロである管理栄養士に食生活のアドバイスを受けることで、家庭での食事改善や適切な栄養補給の方法について具体的な指導を得ることができます。

地域の窓口だけでなく、介護保険のサービスにも管理栄養士が自宅を訪問して栄養指導を行う「訪問栄養食事指導」というサービスがあります。利用したい場合は主治医やケアマネジャーに相談してみましょう。

介護サービスを利用していない場合でも、市区町村の高齢者相談窓口や地域包括支援センターなどで栄養に関する相談先を紹介してもらえることがあります。家族だけで抱え込まずに、地域の介護・医療の専門家を積極的に頼るようにしましょう。

まとめ

高齢者の「元気なのに痩せてしまう」という症状は、加齢による体の変化、心理的なストレス、病気や薬の影響など、さまざまな原因が考えられます。

放置すると転倒や骨折、感染症のリスクが高まり、要介護状態につながる可能性もあるため、早めの対処が重要です。

日々の食事で栄養バランスを整え、気になる体重減少があれば医療機関やケアマネジャー、管理栄養士などの専門家に相談し、適切なケアや周囲のサポートを活用しながら、無理なく健やかな毎日を維持していきましょう。

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