11月14日、厚労省は要介護1や要介護2でもやむを得ない事情による場合は、特別養護老人ホーム(以下、特養)に特例的に入所することができるいわゆる「特例入所」について、適切な運用を実施できるように、周知を行う方針としました。
この背景には、要介護1・2の高齢者の特例入所の運用が、地域によってばらつきがあることが理由です。
そこで今回は、特養の特例入所についてお話をいたします。
特養は中重度の要介護者を支える施設
2015年の介護保険法改正において特養の入所条件が変更となり、2015年4月1日以降特養に入所できる人は、原則要介護3以上の方となりました。
特養は、居宅での生活が困難な中重度の要介護高齢者を支える施設としての機能に重点化を図ることが、より求められるようになったのです。
特養入所申込みから入所までの流れ
そもそも特養に入所を希望する場合はどのようにすべきなのでしょうか。入所までの流れを説明します。
- ①申し込み
- ②入所判定会議
- ③入所手続き
入所したい施設に直接申込みをします。申込みは、所定の申込書(直接施設から送付又は受け取る、施設のホームページからダウンロードができるところもあります)に必要事項を記入し提出します。
申込書が提出された施設では、入所判定会議を実施します。入所判定会議では、「当該申込者の現況、入所希望理由、要介護度、主たる介護者の状況」等を確認し、点数化していきます。
例えば、要介護度が高い(重い)方、単身世帯の方、同居家族が高齢又は病気や障がいがある、居宅サービスの利用状況が高い方等は点数が高くなります。入所判定会議では、上記を勘案して入所の必要度の高いランクに分け順番を決定していきます。
施設に空きが出れば、優先順位の高い方から入所となります。

要介護1・2の方が特例入所するには
要介護1・2の方でも、先述した通り、やむを得ない事情があると判断された場合は、特例的に特養に入所することが可能です。その条件等は「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」に示されています。
特例入所の対象者について
特例入所の要件に該当することの判定に際しては、在宅生活が困難なことについてやむを得ない事由があることに関し、以下の事情を考慮することとしています。
- 認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
- 知的障がい・精神障がい等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること
- 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
- 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること
さらに「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」には以下のようにあります。
イ 特例入所の要件に該当する旨の入所申込みを受けた場合において、施設は、保険者市町村に対して報告を行うとともに、当該入所申込者が特例入所対象者に該当するか否かを判断するに当たって適宜その意見を求めること。
ロ イの求めを受けた場合において、保険者市町村は、地域の居宅サービスや生活支援などの提供体制に関する状況や、担当の介護支援専門員からの居宅における生活の困難度の聴取の内容なども踏まえ、施設に対して適宜意見を表明できるものとすること。
以下略
上記の指針を確認すると、通常は申込者の介護の必要性や家族状況等を見つつ、各施設において入所の優先順位等を判断していますが、特例入所の要件に該当する方に対しては特養の受け入れ判断に保険者市町村が関与する仕組みになっています。
この保険者市町村が関与する仕組みが自治体によってばらつきがあり、地域によっては要件を満たしていても特例入所が認められない場合があるのです。
入所判定会議前に意見照会や事前協議を義務付ける等煩雑な手続きを必須としている自治体もあります。

特養はセーフティーネットと言われています。煩雑な手続きや基準の厳格化によって、特養入所ができない等は避けなければなりません。
特養の特例入所について、地域差を改善し、必要な方に対して効率的でスピーディな入所につながるように、厚労省の議論を注視していきたいと考えます。