「親の介護が始まったけど、これからどれくらい費用が発生するのか分からなくて不安...」
介護期間は平均約5年1ヵ月と長期化しやすく、予想外の出費で家計が苦しくなる可能性があります。
さらに、実家などの不動産をどう扱うかや、将来の相続で家族と揉めないかといった、複雑な課題も同時に解決していく必要があります。
この記事では、今後の出費の全体像、親の不動産をいつ・どう処分すべきか、そして相続で損をしないための保険活用の具体的なメリットの3点をわかりやすく解説します。
公的介護保険で賄えない出費に備える
介護費用を考えるとき、まず多くの方が介護サービスの利用料をイメージされるでしょう。
しかし、公的介護保険から給付される費用は「介護にかかるお金の一部」に過ぎません。
公的介護保険で賄えない「隠れた出費」とは?
公的介護保険の給付は原則として介護サービス利用料に限定されており、実際に介護が始まると、保険の範囲外の「隠れた出費」が次々と発生してしまうんです。
- 施設の食費・居住費
- おむつ代・日用品
- 通院の交通費
※所得要件等により負担が軽減される制度もあります
- 見守りサービス
- 住宅改修費の超過分
また、介護費用を考える上で、最も重要なリスク要因の一つが「長期化」です。
介護期間の平均は5年1ヵ月ですが、介護が10年以上に及ぶケースも約17.6%と、およそ6人に1人の割合で存在しています。
「平均の5年で終わるだろう」という前提で資金計画を立ててしまうのは危険です。
「親の貯蓄」と「自身の準備」をきちんと分けて考える
介護費用を準備するにあたり、明確にすべき大原則は「親の介護費用は、原則として親の資産で賄う」という点です。
つまり、「親の資産」と「ご自身の資産(将来の老後資金)」を混同せず、明確に区分して考える必要があります。
まず親御様の資産状況を正確に把握するため「棚卸し」しましょう。主なチェック項目は以下の通りです。
-
預貯金額:銀行口座の残高やタンス預金など、現金資産の総額を確認しましょう。
-
年金受給額:毎月の厚生年金や国民年金の受給額を把握しましょう。
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不動産の有無と時価評価額:実家などの不動産の市場価値を査定しておきましょう。
-
生命保険・医療保険:加入している保険の契約内容と受け取れる金額を確認しましょう。
-
借入金・ローン残高:負債の有無と残高を把握しましょう。
親御様の資産と年金だけで介護費用が全額賄える世帯は全体の約40%に留まり、残りの約60%の世帯では、子世代による支援が必要となる実態があります。
これとは別にご自身の老後資金2,000万円の準備も並行して進める必要があります。
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売却?相続?不動産の今後を決めておく
資産の中でも大きな割合を占める「不動産」。
施設入居後に空き家となった実家の取扱いは、税金(譲渡所得税や相続税)や、手続きの手間、さらには兄弟間の意見対立など、多くの要素が絡み合う複雑な問題です。
実家を「生前売却」するか「相続後売却」するか――税金と手間の比較
税制面と手続きの手間という二つの側面から比較検討し、どちらがご家族にとって最適かを判断することが大切です。
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手続き |
①親の生前に売却 |
②相続後に売却 |
|---|---|---|
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名義変更 |
不要 |
必要(相続登記が必要となります) |
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意思決定 |
親御様のご判断のみ |
相続人全員の同意が必要となります |
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譲渡所得税 |
親御様に課税 |
相続人に課税 |
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3,000万円特別控除 |
◎親御様の居住用財産として適用可 |
△ 空き家特例(適用要件が厳格です) |
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相続税 |
売却金が現金として相続財産に |
不動産として評価額の圧縮が可能 |
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手間 |
◎スムーズに進行 |
× 遺産分割協議が必要となります |
空き家を放置すると固定資産税や管理費がかかり続けるので、税制優遇の期限を逃さず早期に判断することが重要です。
早めの資産棚卸し・税対策が決め手!スムーズな相続のために今できること
介護の資金計画と並行して着手すべきなのが「相続対策」です。
相続トラブルは、資産額の多寡に関わらず発生しており、遺産額が5,000万円以下のケースが全体の約75%を占めているという実態があります。
相続で揉めないための「資産の棚卸し」と「意思の共有」
相続トラブルの原因の多くは、「不動産の分割方法」や「介護への貢献の主張」、そして「公平性に対する不満」といった、分けにくい資産やご家族間の感情に起因しています。
これらのトラブルを未然に防止するためには、早めに「資産の棚卸し」と「意思の共有」を行うことが重要です。
すべての銀行口座の残高
メインバンクだけはでなく、ネット銀行や地方銀行を含むすべての口座の残高を確認しましょう。
証券口座の状況
株式や投資信託など、変動性のある資産の保有状況を把握しましょう。
生命保険の契約内容 保険金の受取人や保険金額の把握
相続財産全体の分割に大きく影響するため、正確に把握することが肝心です。
動産
貴金属や骨董品など、相続人の間で価値の評価が分かれやすいものの有無も確認しておきましょう。
この資産の棚卸しと同時に実施すべきが、家族会議を通じた親御様の「意思の共有」です。
「縁起でもない」と避けられがちな話題ですが、親御様のご存命中に「誰に何を、どれだけ残したいか」という遺産分割の希望や、実家の処分タイミング、さらには終末期についての備えや葬儀・墓の希望まで話し合っておくことで、後々のトラブルを大きく回避できます。
生命保険で相続税を減らし、スムーズに財産を渡す方法
相続対策の中でも、現金資産の相続税対策としてすぐに効果があり、かつ分割対策としても有効なのが「生命保険」の活用です。
生命保険が持つ最も強力なメリットは、「非課税枠」が設けられている点にあります。
この非課税枠は、「500万円 × 法定相続人の数」という計算式で算出されます。
この仕組みを活用し、現金を生命保険(特に一時払い終身保険)に転換するだけで、相続税を大幅に削減することが可能となります。
仮に、法定相続人が3人で相続財産7,000万円をすべて現金で保有していた場合と、そのうち1,500万円を生命保険に変えた場合を比較してみましょう。
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相続財産の内訳 |
課税対象額 |
相続税額(概算) |
|---|---|---|
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全額現金(7,000万円) |
2,200万円 |
約235万円 |
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現金5,500万円 + 保険1,500万円 |
700万円 |
約70万円 |
この結果、現金を保険に変えるだけで、相続税が約165万円も節税できることになります。さらに、生命保険のメリットは節税だけにとどまりません。
- 特定の相手への承継
- 納税資金の確保
保険商品は数百種類あるので、専門家へ相談し、ご自身の状況に応じた最適な提案を受けることが重要です
現金・保険・不動産のバランスで相続を最適化
相続対策は、単に「節税」だけを追求すれば良いわけではありません。
今までご紹介した3つの資産(現金・保険・不動産)には、それぞれ異なる特性があり、これらを理解した上で最適な配分を検討することが相続を成功に導く鍵となります。
現金は分割しやすく流動性は高いものの節税効果はゼロ、不動産は節税効果は大きいものの分割しにくく流動性に劣るという、一長一短があります。
一方、生命保険は非課税枠による節税効果を持ちながら、受取人指定で分割しやすく、さらに現金化も速やかという、両方のメリットを兼ね備えた資産と言えます。
たとえば相続を見据えた50代からの資産配分として、以下の構成がありうるでしょう。
- 現金・預貯金: 40%(生活費や緊急予備費、納税資金)
- 生命保険: 30%(非課税枠を最大限活用)
- 不動産: 30%(評価額を圧縮する特例を活用)
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まとめ:親の介護は「お金の計画」から
「介護が始まると、日々手探り状態で、お金のことは後回しになりがち」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、早めの相談こそが、後に生じる大きな金銭的・精神的な負担を軽減するもっとも有効な方法となります。
一人で悩むよりも、専門家に相談することで、課題解決に向けた糸口が見つかることも多くあります。
無料の相談サービスも多くありますので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
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出典リスト
I. 介護費用・期間・年金に関する出典公益財団法人生命保険文化センター「2021 (令和3) 年度 生命保険に関する全国実態調査」(介護費用の平均総額、期間、月々の費用、分布)
厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」等(公的年金受給額の平均)
厚生労働省、経済産業省等データ(介護による生涯賃金の損失)
II. 不動産処分・税制に関する出典
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(空き家率、空き家数の推移)
国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(譲渡所得税の仕組み)
III. 相続・生命保険に関する出典
最高裁判所「司法統計(令和5年)」(遺産分割事件における遺産総額の割合)
SMBC信託銀行、生命保険文化センター等の情報(生命保険の非課税枠)
MUFG資産形成研究所の調査(2020年)(相続財産の平均額・構成)