一人暮らしの高齢者が安心して賃貸住宅を借りられるように創設されたのが終身建物賃貸借制度です。
この制度を利用すると、高齢者本人が死亡するまで住み続けられます。また、相続の対象にならないため、大家側としても無駄な空白期間をつくらずに済みます。
今回はこの制度のメリット・デメリットを解説いたします。
終身建物賃貸借制度とは
終身建物賃貸借制度とは、高齢者が死亡するまで終身にわたり居住することができ、死亡時に契約が終了する相続のない「一代限り」の契約です。「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、2001年に創設されました。
どんな住宅が対象になるのか?
終身建物賃貸借制度の対象となる住宅は、一般的な賃貸住宅や戸建て住宅から高齢者向けの住宅まで多岐にわたります。高齢者施設や老人ホームでもこの制度が採用されることがあり、高齢者が安心して長期的に利用できる住宅を提供するために適しているとされます。
しかし、一般的に普及しているとはいえず、例えば東京都において終身建物賃貸借の認可を受けているのは52住宅で2674戸となっています。(2023年4月1日時点)
利用するための要件
終身建物賃貸借の契約を結ぶためには、以下2つの条件を満たす必要があります。
- 入居者本人が 60歳以上の高齢者である
- 入居者本人が単身の高齢者である、あるいは同居する人が配偶者か60歳以上の親族である

終身建物賃貸借制度を活用して住居を借りるメリット
長期間住み続けられる
終身建物賃貸借契約では、契約期間が終身なので、賃借人が亡くなるまで同じ家に住み続けることができます。退去を求められる可能性が少ないため、安心感があります。万が一賃貸人側が途中解約を希望する場合でも、基本的に都道府県知事の承認が必要なうえに6ヵ月前に通知する義務があるため、急に退去を求められることはありません。
中途解約も可能
老人ホームへの入所や同居などの理由で居住できなくなった場合は、1ヵ月前に申し入れをすれば解約が可能です。
簡単な契約終了手続き
賃借人の死亡によって契約が終了するため、相続が発生せず手続きが不要です。これにより、相続人に迷惑をかけずに済みます。なお、同居配偶者は、賃借人の死亡を知った日から1ヵ月以内に申し出れば、引き続き居住が可能です。
バリアフリー設備
対象不動産はバリアフリー基準を満たしており、「段差のない床」「手すり付きの浴室」などが備わっています。高齢者にとって住みやすい環境が整っています。
高齢者でも入居可能
一般的な賃貸住宅では高齢者の入居を敬遠することがあるかもしれませんが、終身建物賃貸借契約では高齢を理由に入居が断られる心配がありません。終身契約なので、高齢者が生涯にわたって賃貸住宅に居住できる制度です。
終身建物賃貸借契約は、長期間安心して住み続けることができる制度であり、高齢者にとって特にメリットがあります。
終身建物賃貸借制度を活用して住居を借りるデメリット
利用制限がある
終身建物賃貸借契約を利用できるのは、都道府県知事から認可を受けた不動産に限られます。まだ認可されている不動産が少ないため、住みたいエリアに終身建物賃貸借契約に対応した物件がない可能性もあります。
入居制限がある
終身建物賃貸借契約では、賃借人や同居人に制限があります。賃借人は基本的に60歳以上の高齢者に限られます。また、同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できないため、注意が必要です。
まとめ
終身建物賃貸借制度は、不動産の所有権を持つ賃貸人と借主が終身で建物の使用権を持つ契約形態です。高齢者が死亡するまで終身にわたり居住でき、相続がありません。対象の住宅は一般的な賃貸住宅から高齢者向けの施設まで多様です。
利用するためには60歳以上の高齢者で自らが居住する必要があり、同居人は配偶者か60歳以上の親族である必要があります。さまざまなメリットがあるので、自身の生活環境に合わせて活用するかどうかを検討しましょう。