「突然介護サービスを受ける必要ができたけど、申請の仕方がわからない」
「自分が話を進めていかなければならないのが不安」など、突然身内の状態が悪くなった時、どうしたらいいかわからず不安に陥ることもあります。
自分自身が全て負担しなければならないと考えると気が重くなってしまうものです。
しかし、方法次第で介護保険申請は手軽に済ませられる可能性もあります。
この記事では介護保険申請時やサービス利用後に知っておくべきポイントを紹介していきます。
介護保険申請や介護サービスの決定を進めていかなければならない不安
自分で介護保険申請をする必要ができた時、わからないことが多すぎて不安になってしまうという声をよく耳にします。
ここからは、急に介護サービスの利用が必要になったEさんのケースを紹介していきます。
【事例】Eさん(60代・女性)
Eさんには県外に離れて暮らす一人暮らしの83歳の実母がいます。そんな母が、突然、自宅で転倒し入院することになりました。
さらに、転倒による骨折と入院生活が理由でADLが著しく低下し、介護が必要な状態に。しかし、県外に住むEさんは母の世話をすることができません。
介護サービスを利用しようと考えましたが、どこから手をつけていいかわからず、困り果ててしまいました。
重い腰を上げて区役所に行ってみるも、要介護認定が下りるまで時間がかかりそうなことを知り、落胆。
「自分の生活もあるのに…」と、気持ちの糸が切れそうになったEさんなのでした。母のために自分一人で動かなければならないと思うと、負担に感じてしまうものです。

まずは、介護保険の詳細や利用の流れを把握しておくことが大切です。介護保険を利用したい際の基本的な流れを次の項目で見ていきましょう。
介護保険利用の基本的な流れ
介護保険を利用したい場合の基本的な流れは以下になります。
- 市区町村で要介護認定の申請をする
- 申請後市区町村の職員などが自宅に訪問し、聴き取り調査を受ける
- 市区町村の依頼により、かかりつけ医が心身の状態についての意見書を作成
- コンピューターによる一次判定決定
- 一次判定結果や主治医意見書に基づく介護認定調査会による二次判定により市区町村が要介護度を決定
介護保険内で受けられるサービスは要介護度認定後、明らかになります。
認定を受けた後、要介護度や状況・状態に合わせて、サービス計画書(ケアプラン)を作成するのが一連の流れです。
ただし、上記の流れ全てを自分一人で負担しなくても、手軽に済ませる方法があります。
次の項目でその詳細を説明していきます。
介護保険をスムーズに利用するためには
意外と知られていない、介護保険利用の手続きの詳細を解説していきます。
初めにケアプランセンターに行ってしまうほうが楽
市区町村の役場・役所に行って申請を行う方もいますが、実は最初からケアプランセンターに行ってしまう方法もあります。
最初にケアプランセンターに行ってしまえば、ケアマネージャーが手続きを代行してくれる可能性が高いです。
医師の意見書を書いてもらうための受診や書類へのサインは自身で行う必要がありますが、それ以外の作業はケアマネが代行してくれます。さらに申請後の相談もできるため、スムーズに介護サービスの利用を開始することが可能です。
要介護度認定前でもサービス利用できる場合も
基本的には、介護サービスの利用は要介護度認定後ですが、中には「要介護認定が下りるのを待たず明日にでもサービスを使用したい」と思う方もいます。
実は、認定が下りてなくても、みなしとして利用できる場合があります。
それは、ケアマネージャーなどが要介護者の状態を確認し、認定される要介護度を想定して介護サービスを提案するケースです。
その場合は、以下のような流れになります。
➀退院
➁退院翌日から(認定が下りていないけど)介護サービス利用
③要介護認定が下りる
➁でみなしとして介護サービス利用が開始し、その後の要介護認定が下りたとしても、サービス利用開始時にさかのぼって介護保険を適用させることができます。
要介護認定は、申請から認定結果がでるまで30日程度かかるので、サービス利用を見据えている方は早めに申請を行いましょう。
特に入院で高齢者本人の状態が悪化し早く要介護認定を受けたい場合は、退院後1か月前くらいを目安に申請をするとスムーズです。
介護保険内でサービスが賄えない場合はケアマネに相談を
要介護認定が決定しても、認定された要介護度で受けられる介護サービス内容では不十分な場合もあります。
そんな時に頼りたいのがケアマネージャーです。
ケアマネは介護保険内のサービスだけでなく、インフォーマルなサービスの情報も把握しているので、遠慮なく相談してみましょう。
保険外のサービス事業所も紹介してくれるほか、本人の状態と要介護度が合っていないと判断される場合には、ケアマネを通して不服申し立てもできます。
【意外と知らない】介護サービスが始まってからのこと
介護サービスを利用開始後のことも、わからない部分が多くて不安を感じる方もいると思います。
そこで、よくある疑問をもとに、介護サービス利用後に知っておくと安心なポイントを解説していきます。
要介護度認定の有効期間は一定ではない
要介護認定が決定すると、その有効期間も一緒に決められます。
有効期間は市区町村や個々の状況によって違いがあり、短いと3ヵ月、長いと36ヵ月ほどの有効期間が設けられるケースもあります。有効期間が短いケースもあるということを予め認識しておきましょう。
有効期限の約60日前に更新のお知らせが届くので、自治体窓口等で手続きを行いましょう。
更新時は要介護度が変わることも
更新時は要介護度認定調査を受けますが、その際に要介護度が変わることがあります。
例えば、最初の要介護度認定の際に、一時的に状態が悪く高い要介護度がついたとしても、その1年後に状態が良くなっていれば、要介護度が下がることもあるのです。
なお、認定された要介護度に納得がいかなければ、不服申し立てを行うこともできます。
更新前にサービス担当者会議があり出席する必要がある
ケアプラン更新のタイミングで、サービス担当者会議が開催され、要介護者の家族も出席する必要があります。
家族以外の参加者は、ケアマネ・介護スタッフ・相談員・看護師・管理栄養士などであることが多いです。
開催場所は、要介護者の自宅や介護施設などに設定されることが大半です。
納得して介護サービスを利用するためのコツ
介護サービスを受ける事業所を決めた後、後悔はしたくないものです。要介護者と家族が納得した上で介護サービスを選ぶのが理想的です。
しかし、介護サービスのことがよくわからない状態でケアマネと話すため、自分の伝えたいことが上手く伝わらず、不本意な形で介護サービスを決定してしまうことも…。
そうならないために気を付けるべきことを以下で詳しく紹介していきます。
近隣の介護サービスの特色を調べる
要介護者本人に合った介護施設やデイサービスを見つけるためには、積極的に情報収集することが大切です。
近隣の介護事業所にはどのような特色があるのか、公式HPや介護施設紹介サイトなどを利用して調べてみましょう。
ケアマネに状況をわかりやすく伝える
ケアマネに、適切な介護サービスを提案してもらうためには、要介護者本人の状態・状況を詳しく伝える必要があります。
ケアマネ自身も、正確な情報がなければ、要介護者に合った介護サービスをケアプランに反映させることが難しいからです。
事前に要介護者の状態を紙に書いて整理し、まとめてから伝えるとスムーズでしょう。
求める介護サービスの形をはっきりと伝える
ケアマネは相談には乗ってくれますが、ご家族の気持ちを100%くみ取ることはできません。そのため、求める介護サービスが何であるかをはっきり伝えることが大切です。
要介護者や家族のために必要なサービスは何かを考えておくようにしましょう。

一人で悩まなくても大丈夫
介護サービスを利用するとなると、手続きを自分一人でこなさなければならないプレッシャーで気が重くなることもあると思います。
しかし、ケアマネと円滑なコミュニケーションが取れれば、ご家族や要介護者本人の力になってくれる可能性が更に高まります。
一人で抱え込まず、困ったことがあれば気軽にケアマネに相談して構いません。
要介護者やご家族の意向に合った介護サービスを受けることができるよう、ちょっとした工夫も意識してみてください。