皆さんは趣味の集まりや健康の集い、スポーツサークルなど初めての場に参加されることはありますか?
気軽に参加ください、どんな方でも大丈夫、初心者歓迎…誘い文句ではハードルが低そうですが、それでもある種の覚悟や勇気が必要になるのではないでしょうか。
それはデイサービスでも同じことが言えます。通い始めの頃はなかなか慣れない方が多いのも当然です。特に認知症症状が見られる方は、慣れる・慣れないという前に「毎回が初めての利用」と認識される方もいます。
今回はデイサービスになかなか慣れずにいる方に対して、事業所や家族ができることについて解説します。
アセスメント時に利用者の情報を多く伝える
まずデイサービスを利用する前には「通所アセスメント」が行われます。これは、利用者の情報を集めて分析し、生活上の課題を解決したうえでデイサービスが必要となる理由やメリット、利用目的を明らかにする事前調査です。
介護サービス計画を作成するときにも「介護アセスメント」がありますが、介護事業所もまた同様にアセスメントを行います。
利用する本人や家族にしたら「また同じようなことを聞かれて…」と思われるかもしれませんが、その際にはぜひこれまでの職歴や生活歴、習慣、趣味、嗜好といった詳しいところまで可能な限りお話ししていただきたいです。
特に「大変だったとき」「忙しかった頃」の情報は重宝します。家族にとっては耳にタコの話かもしれませんが、そうした話があるかないかでケアの方向性が大きく変わることもあるのです。
こうした貴重な情報から、デイサービスでどのように迎え入れるべきか、活動していただくか、取り組みの方針についても検討することになります。
もちろん、自然の会話の中からこうした情報を拾い検討できるベテランもいらっしゃいますが、初回だけに限らず、「こんなこともあった」「こんな思い出も」「大変な思いも」と情報をお寄せいただけることはデイサービス側にとってはありがたいものです。
決して無理強いはしない
事業所によるアセスメントを経ると「介護カンファレンス(利用者とケアマネージャー・事業者が集って開かれる専門者会議)」が開かれます。その際、デイサービスの利用が介護サービス計画上必要とされることが明らかにされます。
契約も無事終わり、ようやくデイサービスに行く運びになったのに、本人から「行かない」「行きたくない」などと言われると、ついつい怒りたくなってしまうことも…。
そのお気持ちはわかりますが、こうした利用者の言葉にも可能な限り耳を傾けていただければと思います。そして、どんなことを言っていたのかは「新たな情報」としてデイサービス側にも届けていただきたいのです。
こんなことを伝えてはデイサービス側に迷惑なんじゃないか、嫌がられるんじゃないかといった心配は無用です。多くのデイサービスでは寄せられた情報をもとに、より良いケア方針が検討されることでしょう。
むしろそうした情報を伏せて「ずる休みは良くない」とか「せっかく迎えに来てくれてるのに失礼だ」とか「約束したんだから行きなさい」と本人を説得するのは逆効果になる恐れがあります。
「デイサービスなんかに行かない!」「もう二度と出かけない!」などと余計に悪化してしまうこともあるのです。
無理強いは老若男女問わず嫌なものです。家族側がどうして行きたくないと言っているのか、どんなことが嫌だと思っているのかをご本人側に立って考え、本人に代わって「デイサービス側に伝えておいたよ」というスタンスで向き合うと良いでしょう。

もちろん、すべてのデイサービスがそうした情報を前向きに受け取るとは限りませんし、結果「弊所では受け入れかねます」と拒否を示されてしまうこともあるかもしれません。
しかし、その際は「違うところも見てみよう」「他のところを探してみよう」と前向きに捉えて、ほかの事業所を見学するのもアリです。
そして「他のデイサービスではどうだった」という情報もまた「アセスメント」に加わります。こうした情報は負の情報とされるのではなく、「より本人にあった介護サービス」を検討するために活かされていくのです。
2~3ヵ所のデイサービスを巡ったりすると「もうどこも受け入れてくれない」と悲観されたり、がっかりされることもあるかもしれませんが、大半の自治体には多くの事業所があります。その中には、より相性の良いデイサービスがきっとあるはずです。
新たなデイサービスを検討する際にも実際の雰囲気や利用されている方、スタッフの様子、設備の状況なども「自分ならこういう雰囲気が好み」「こうした設備が欲しい」と本人だけでなく、自らの立場で考えることも大切です。
身内としての立場で、話し合ってみるのも良いのではないでしょうか。
応援する言葉を投げかける
デイサービスという言葉が定着したことにより、むしろデイサービスという表現を好まない方もいらっしゃいます。
その場合は、通いの場、交流の場など、本人が受け入れやすい表現をデイサービス側やケアマネージャー、家族に共有しておくのが良いでしょう。
表現や演出はとても大切です。利用する本人とともに「本人の世界観・社会観・価値観」を支えていくことが、ケアの質を高め維持していくうえで重要だからです。
ですから、多少大げさでもぜひデイサービスに通っていることを応援してみてください。
「その歳でさらに自ら鍛える場に通うなんて見直しました」
「おしゃべりが達者なのは頭も良く回るってことですね」
冒頭に上げたように、新しい場に行き始めたときは緊張したり、面倒に思ったり、二の足を踏んでしまうことは正しい反応です。そうしたことを汲み取ったうえで、本人側の視点から新たな挑戦への応援と後押しをしていただければと思います。

ほとんどの人はデイサービスに通ったり、外出が体に良いことを頭ではわかっています。
計画通りに通うことは、実はすごいことなのです。嫌なことを嫌だと伝えることもまた勇気がいることです。人は歳を重ねれば重ねるほど個性がさらに強く出るので、まったく同じ対応で通用することなどありえません。
それだけに「こうすればちゃんと通えます」とか「どんな人でも受け入れます」とか軽々しく語ることはできません。
しかし、本人からの訴えにちゃんと向き合い耳を傾け、ご家族からの情報提供や協力を経て、「早くデイサービスに行きたい」と本人の口から言っていただける日が来ることは、決して珍しいことではないことも私は知っています。
無理強いするのではなく、利用者本人の立場に立って考えることが、利用拒否の壁を突破する糸口になるかもしれません。