こんにちは、「有限会社リハビリの風」でデイサービスを管理している阿部洋輔です。
「介護の教科書」を通して、「自宅支援介護」の特徴や利用者ができることをみなさんに知っていただきたいと思います。
利用目的を明確にすること

自立支援介護って知っていますか?介護保険制度を持続させるための方法として未来投資会議でピックアップされ非常に注目されました。介護業界では随分聞くようになりましたが、今現在介護に関係のない方にとっては馴染みのない言葉です。でも内容自体はとてもシンプル。
「ただ単にお世話をするという介護」から「自立を支援できるような介護」に変化していこうということなのです。
自立支援介護とは何か?提唱者の竹内孝仁教授によれば、自立支援介護は【その人の「身体的」「精神的」かつ「社会的」自立を達成し改善、または維持するよう、介護という方法によって支援していくこと】を言います。主に特別養護老人ホームなどの介護施設で導入された方法であり、以下のようなケアの基本が挙げられます。
自立支援介護のケアの4つの基本
- 水分:1日1500ml
- 栄養:1日1500kcal
- 運動:1日2kmの歩行
- 便通:3日以内の自然排便
そしてこれら4つの項目は互いに影響しあうため、すべてが揃って効果があると言われます。介護保険の理念は「自己選択、自己決定、高齢者の自立支援」が掲げられていますから、自立を支援するような介護をするということはおかしな話ではありません。
介護は「身体や精神が健全でない状態にある人の行為を助ける世話」という意味で、そこに自立を支援するという考え方が合わさったわけです。しかし、介護保険制度が2000年(平成12年)に始まったのにもかかわらずその議論がされているということは、「介護=お世話」というイメージが解消されていないのです。
自立支援介護への批判は?

それは「社会保障費の増大を抑えたい国の思惑」です。もちろん介護保険制度が持続していくためには、必要以上の出費を抑える必要があるので非常に大切な視点です。要するに自立支援介護を行うことで、
- 本人のQOLの向上
- 家族の介護負担の軽減
- 介護度改善
を狙うことができます。そして、これらの効果は本人ご家族にとって非常に良い結果です。さらに俯瞰(ふかん)した視点で見ると、介護度が重い中重度の方の医療費や介護費用は多くかかるので、自立支援介護を行った結果それらの効果がでることで社会保障費を削減することができるのです。
一気にクローズアップされた自立支援介護にも批判が出ています。
- 動作能力ばかりを評価すると、無理な機能訓練が横行するのではないか?
- 重症な利用者さんの自己決定が妨げられるのではないか?
- 科学に裏付けられた介護に関しては認めているものの、自立支援は意思決定が重要な要素
であるから、望まぬリハビリや栄養摂取、在宅復帰などが強制される可能性があり危険だ というような声です。もちろん先ほどの4つのケアのルールを忠実に守ることだけが良いことではありません。ただ「自立支援の考え方をもって介護をする」ということ自体は誰も批判できることではないと思います。
今後の自立支援介護について

自立支援介護は成果報酬型(介護状態を軽くできたら報酬を払う)の介護保険制度の完成にむけて重要な考え方です。そしてこれは、介護サービスを提供する事業者だけに関係あるわけではなく、利用者さんとその家族にも必要となります。
介護は「ただお世話をする」ということから「自立を支援するように働きかける」ようにしていかないといけません。家庭でできる自立支援に向けた介護とは?例えば、利用者さんにできないことがあったら全部を手伝ってしまうことはありませんか?
- どこまでご自分でできますか?
- やってみてもらっていいですか?
こういった声掛けを事前にして利用者さんのできる力を少しでも引き出しましょう。実はこういった声掛けなしに介護をしてしまうと、(介護業界で働く人もご家族も)利用者さんのできる能力を奪ってしまっているかもしれません。
いきなり動作を手伝わないで、どのくらいできるかの確認や見守ることが自立支援介護への1歩です。「介護はただお世話をすること」ではなく「介護は自立を支援するように働きかけること」というように考え方を整理すると、日々の対応の仕方や方法が変わってくるのではないでしょうか?皆さんで自立支援介護を進めていきましょう!