皆さまこんにちは。 有限会社リハビリの風の阿部洋輔です。
最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞く機会が増えてきました。介護業界においてもDXの流れは進んでおり、今後はどの職場でも新たな取り組みが始まることでしょう。
しかし、DXという言葉に踊らされて、新たにシステムさえ導入すれば良いと考えていると、その取り組みは失敗しかねません。今回は介護業界におけるDXの注意点について述べていきます。
介護業界のDXは手段であって目的ではない
そもそもDXとは、「ITの浸透によって生活を良い方向に変化させること」です。ただ単に、話題の最新システムを導入することではありません。新たなシステムを導入しようとすると、導入そのものに焦点が当たりますが、何の目的のためにそのシステムを導入するということを明確にする必要があります。
介護サービス事業所においては、DX推進の目的は「ムリ・ムラ・ムダ(3M)」を排除して介護業界のサービスの質の向上を図ることではないでしょうか?流行しているDXという言葉だけにとらわれ、本質を見失ってはいけません。
介護業界のDX具体例
介護サービス事業所視点
一般企業におけるDXは「デジタル技術を使って、企業にさまざまな変革を実現し、ビジネス上の競争優位を獲得すること」です。しかし、介護サービス事業所の視点で見てみますと、まだまだ「ムリ・ムダ・ムラ」が多く、まずは業務効率化という目的が多くなると思います。
例えば、以下のような取り組みが考えられます。
- システム導入による事務作業効率化、ペーパーレス化
- AIケアマネジメントによる効率化
- 見守りセンサー利用による人員配置の効率化
介護業界全体の視点
次に介護サービス事業所だけではなく、介護業界全体のDXという視点で考えてみましょう。まずは情報の一元化・共有をどれだけ効率的に進めるかという点が重要です。
今、最も改善が必要だと考えられるのは、次の2つです。
- 情報の一元管理の推進
- 実地指導などの管理の簡略化

介護業界のDXを推進するための壁
中小企業が多い介護サービス事業所に「ムリ・ムダ・ムラ」が多くあることは想像に難くありません。
さらに、介護保険制度という大きな枠組みで捉えてみても、まだまだ効率化しなくてはならない課題も少なくありません。
- FAXによる情報伝達
- 保存義務のある紙の資料
- デジタル対応しきれない実地指導
こうしてみると、自治体と介護事業者の連絡体制に大きな「ムダ」が潜んでいるように思います。
最近では、タブレットを利用してクラウドで情報管理できるシステムの導入が進んでいます。しかし、それだけで自治体と介護サービス事業所のさまざまな手続きが完結するわけではありません。
自治体と介護サービス事業所における情報共有の「ムダ」や「ムラ」をいかに効率化していくかが大きな課題と言えるでしょう。
生産性向上や業務効率化が喫緊の課題と言われる介護業界ですが、地域によって暗黙の了解と化している「ローカルルールの廃止」や、自治体・事業者双方に手間が生じる「実地指導の簡素化」などが大切だと考えます。

介護DXの推進は「ムリ・ムダ・ムラ」の仕分けから始まる!?
まだまだ業務が非効率な部分が多く残されている介護業界。個々の介護サービス事業所の課題は異なりますが、まずは業務のどこに「ムリ・ムダ・ムラ」が発生しているのかを仕分けていくことが大切ではないでしょうか。
さまざまな業界でDXが叫ばれているのをきっかけに、介護業界でも業務改善や効率化を進めるひとつの機会として活用したいものです。
そのために、まずは介護業界に携わる個々人が小さな変化を起こしながら業務に取り組んでいくことが大切です。単なるIT化を目的にするのではなく、「業務のデジタル化を通じて何を達成したいのか」ということを改めて考えてみましょう。