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第222回

食べる・飲むことを忘れた祖母。医師たちのケアで経口摂取を取り戻す

最終更新日時 2021/05/06
#親の介護

読者の皆さま、こんにちは。単著『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』(株式会社法研)を出版した作家・メディア評論家の奥村シンゴです。

認知症の進行などに伴って、人は口から食べものを「食べれなくなる」「飲めなくなる」ときがやってきます。筆者の祖母は認知症を患っており、2019年1月に精神科病院へ入院し、2020年11月末に療養病院へ転院しました。今回は、祖母が経口摂取を続けられた方法をお話しさせていただきますので、参考になれば幸いです。

家族と施設の連携なしでは経口摂取の維持は困難

祖母が精神科病院へ入院して1年半が経過した頃、主治医から「シンゴさん(筆者)も毎週面会へ来て食事介助を手伝っていただきましたが、おばあさまは認知症や老化が進行していて、ほぼ『食べる』『飲む』という行為を忘れてしまいました。療養病院で経鼻経管栄養をお奨めします」と提案を受けました。

それを聞いた筆者は、ショックで泣いてしまいました。それまでは、筆者と高齢者施設の職員の方に祖母の経口摂取を維持してもらっていました。精神科病院の看護師の方も、「おばあさまはね、お孫さんがいらっしゃるときはご機嫌が良いのか、食欲が進まれるようです」とよく言ってくれていました。

食欲の減少にあわせて主治医や看護師が食べものを調整

筆者が新型コロナが流行する前まで毎週面会へ行き心掛けていたのは、祖母に「重度認知症であること」や「病院へ入院中であること」を忘れてもらい、普段の家庭と同じような環境をつくることです。そのうえで、好きな食べものや飲みものを持って行きます。また、高齢者施設は概ね夕方から夜間の人手不足が深刻です。そのため、一人ひとりと話しあう余裕がないので、筆者が夕食時に食事介助を続けていました。

祖母は精神科病院に入院してから、低活動や便秘から徐々に食欲が減少していたので、大好きな抹茶プリンを持参。筆者が「抹茶プリンが欲しい言うてたやろ?」と祖母に聞くと、「あら、かわいいね。食べものでしょ。1個だけな」とやや失認症状は発現していましたが、喜んで食べてくれました。

また、精神科病院の主治医や看護師の方たちも祖母に最期まで経口摂取してもらおうと、祖母の食べものの好みをよく把握してくれていました。祖母が白いご飯やおかゆを食べなくなってきたら、「佃煮」や「海苔」をつけてみたり、おかずを少なくして甘いプリンやヨーグルトなどデザートを増やしてみたりと、色々と工夫していただきました。

新型コロナの影響をさほど受けない地域に限られますが、本人の経口摂取の維持は、家族と施設の双方の想いが1つでないと難しいでしょう。

祖母の好物で少しでも経口摂取を

噛むことを忘れてしまった祖母

無情にも祖母の認知症の症状は進行していき、ついには「食べる」「飲む」といった行為を完全に忘れてしまいました。そう確信したのは、筆者が「噛まないと喉につまるやろ、モグモグしてごらん」と言ったときです。祖母はなんと、「モグモグモグモグ」と口で言うだけで、食べものを噛もうとしませんでした。噛むことを忘れてしまったのです。

さらに、祖母に熱がでて病院に1日中付き添ったとき、筆者は祖母にいちごジュースを差し出しました。すると祖母は、「いらない」と言うならまだしも「何か嫌なことをされる」と言いたげな表情を浮かべて号泣。祖母の変わり果てていく姿を見て、筆者もまた涙をこぼしてしまいました。

認知症が進行し食べる・飲むことを忘れる

療養病院の地道なケアで4ヵ月ぶりの経口摂取へ

2020年の秋頃から祖母の体調不良が続きました。精神科病院から療養病院へ転院してすぐ主治医から「1週間、食べて飲むのを試しましたが、ほぼ食欲がゼロ。誤嚥性肺炎のリスクも高く『経鼻経管栄養』に切り替えますがよろしいですか」と連絡がありました。

筆者は、しばらく悩みましたが、「祖母に1日でも長く生きてほしい」と思い、経鼻経管栄養をお願いしました。

しかしながら、2021年3月末に、祖母がなんと経鼻経管栄養から経口摂取に戻ったと連絡が入ったのです。筆者は、「4ヵ月で元に戻るなんて奇跡や」と嬉し泣きしました。祖母が入院していた療養病院では、重度認知症などで飲食ができない人たちに対して一時的に経鼻経管栄養に切り替え、週3回のリハビリで関節や可動域の運動の後、嚥下(えんげ)訓練を重点的に行います。

医師や看護師、言語聴覚士、病棟の職員が一体となって、ご本人が食べるのに必要な口腔機能の回復について考え、あんかけ食やムース食などを食べさせていきました。また、歯科衛生士を常駐させて、平日は毎日口の中を綺麗にする口腔ケアにも力を入れています。

療養病院の皆さまの地道なケアが、祖母がまた口で食事ができるようになったことに対して感謝の思いです。しかし、祖母はその直後に皮膚や筋肉に激烈な細菌感染を起こす「右下肢壊死性軟部組織感染症」を発症して別の総合病院へ転院しました。

主治医曰く、血液をサラサラにする薬を使うか右足を切断すれば完治するそうですが、いずれも高齢で大量出血死や全身麻酔が難しく完治する手段がなく、余命が長くて2・3ヵ月とのこと。筆者は、祖母が退院後に在宅介護を検討していて、「少しでも口から食べてもらいたい」と思っています。

明るく平穏な人間らしい最期を

最近、長尾クリニック長尾和宏院長の在宅医療ドキュメント映画『けったいな町医者』や、明るい平穏死を描いた高橋伴明監督の作品『痛くない死に方』を鑑賞しました。人間ならば、点滴や輸血、大量の薬、検査に縛られず、苦痛を伴わない人間らしい最期を迎えたいと思います。

祖母も元気で認知症が進んでいないとき、「病気になったらな、余計な事せんといてや。コロッといくのが一番ええで」と言っていました。今は祖母の体調が良くなって、自宅で一緒に抹茶プリンを食べたいというのが目標です。

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