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第219回

介護職のワクチン接種の実情。開始時期はいまだ不明の地域も…!?

最終更新日時 2021/04/22

ジャーナリストで、終活カウンセラー協会認定講師の小川朗です。

今回は、「介護職のワクチン接種への反応と要望の声」についてお話しします。

「打つべきか、打たざるべきか」と、新型コロナワクチンの接種は介護の現場にも悩ましいテーマを投げかけています。先日、ゴルフ界のレジェンドである「ジャンボ」こと尾崎将司さんが、千葉市内の私設練習場でこんなことを話していました。

「(コロナ感染は)ここにいれば…(心配ない)。でも年寄りは、(ワクチンを)早く打ちたい」

原英莉花選手らを指導して話題になっている尾崎さんですが、屋外でソーシャルディスタンスを保ちながら指導をしている分には感染の心配はほとんどないものの、御年74歳。感染して重症化する懸念をゴルフ界のスーパースターも感じているのです。

在宅系サービスもワクチンの優先接種対象に

2021年3月3日、「ワクチンの優先接種対象に、居宅介護支援や福祉用具貸与、通所介護などの在宅系サービスが加えられた」というニュースが業界内を駆け巡りました。

そもそも、当初の優先接種の対象は施設・居住系の介護職のみに限定され、在宅サービスが除外されていました。

在宅系サービスはワクチン優先接種の対象外だった

しかし、現場の関係者から批判が噴出。2月17日の衆議院予算委員会では、田村憲久厚生労働相がその理由として、以下のように答弁しました。

「介護施設の場合、たとえクラスターが発生したとしてもそのままサービスを提供していく必要がある。職員の皆さまには必ず対応を続けていただかなければいけない。一方で在宅サービスの場合は、事業者を変えるなど別の対応も取れる」

これに対して、質問者である尾辻かな子立憲民主党議員が「現実を見ていない。ホームヘルパーの有効求人倍率は15倍。訪問介護は人が全然いない。代わりなどいない」と発言しました。

その後、各方面からの批判が続いて、厚生労働省は各都道府県の衛生主管部(局)長・介護保険担当主管部(局)長あてに『高齢者施設への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を行う体制の構築について(改正)』を発出。その中には在宅系サービスも優先接種の対象に加えられたことと、その理由について以下の通り述べられています。

「新型コロナウイルス感染症が拡大し、地域において病床がひっ迫する場合には、在宅の要介護者や要支援者が新型コロナウイルスに感染し、やむを得ず自宅療養を行なう場合があり、居宅サービス事業所等の従事者もこうした自宅療養を余儀なくされる高齢者等に直接接する可能性がある」

介護職の接種開始の見込みが立たない地域もある

在宅系サービスの職員も優先接種の枠に加えられましたが、それを行うためには条件をクリアする必要があります。まず、地域の感染状況や医療体制などを踏まえ、「在宅系サービスを加えるべきと自治体が判断することが前提」となります。

また、優先接種を希望する事業所側には、「自宅療養となった感染者・濃厚接触者も避けずに必要なサービスを継続していく」と明確に表明することも求められます。さらに、実際にサービスする職員の人数をあらかじめ市区町村に登録しておかなければなりません。

3月3日に発出された、厚生労働省から各都道府県の衛生主管部(局)長・介護保険担当主管部(局)長宛に出された通知では、新型コロナに感染して自宅で介護を受けなければならなくなった高齢者に対し、継続して在宅介護サービスを提供する事業所のリストを4月上旬までに作成するよう求めていました。

しかし、4月9日に各方面を取材したところ、その作業は大きく遅れていることがわかったのです。

リストの作成が遅れてワクチン接種が進まず

例えば東京都の江東区。すでに接種が始まっている医療従事者に続き、4月22日から65歳以上の区民に接種券を発送することが決まりました。26日から区内の特養ホーム15ヵ所の入所者約1,400人に接種を開始します。

とはいえ、今のところ用意できるのは「1,950回分のみ」(江東区ワクチン接種管理担当の話)。5月16日からは11万3,000人いる高齢者への接種もはじまり、完了は「8月半ばまでには」というのが、同区役所の見方です。「介護職員の接種は(いつになるか)まだわからない」(同担当)。実際のところ、江東区の訪問介護事業所に確認してみましたが「まだ区からの問い合わせは来ていない」との返答があるのみでした。

このコラムに再三登場願っており、新潟で複数の介護施設を営んでいる終活カウンセラー協会の井上智則理事(ケア・クリエイト・アソシエーション代表取締役)も、「ようやく国が動いてくれたようですが、市区町村ごとのワクチン接種計画があるので、今のところ自治体等からの通達はありません」と語っています。

介護職員は「不安だけど接種するしかない」状態に…

ドクターメイト株式会社が公開している『【介護従事者の84%がコロナワクチン接種に不安】高齢者福祉施設スタッフにコロナ対策の実情と、ワクチンについての本音アンケート調査!』では、介護職員244名に新型コロナに対してどう思っているかをアンケートしています。それによると、「ワクチン接種に不安がある」と答えた方と「摂取したいと思う」と答えた方は、両方とも8割を超えているという結果に。介護職員の、「不安だけど、打ちたいと思う」という複雑な思いが見えてきます。

現場が直面する厳しい実情を把握しよう

優先接種について最もネックとなるのが、「高齢の患者や濃厚接触者に直接接して、介護サービスの提供を行う意思を有する従事者」という条件です。前出の井上理事もこのように語ります。

井上理事:不安に関しては一般の方同様にありますし、職員の中にも(ワクチンを)打たないことを検討されている方もおられます。義務ではないので判断は難しいですが、会社としては接種していただけるよう話をしていく予定です。

筆者:やはり副反応が恐いのでしょうか。

井上理事:そうですね。インフルエンザの予防接種も日頃から打たない方もおられるので、なかなか難しいです。

この連載の205回目にも登場いただいた、静岡県のNPO法人「浜松介護サポートりらねっと」の村松真美理事長も、感染者に対する在宅介護の厳しい現実を明かします。

「訪問看護師さんは知識もあるから(感染に対する)それなりの防御法をお持ちでしょうが、通常の訪問介護のヘルパーさんとなると…。『お子さんを保育園に預けて仕事にこられているヘルパーさんも多く、保育園の決まりが厳しいと他県に家族がいた場合には子供を預けないでほしいと言われることもあります。仕事だからといって、お母さんが感染した方のサービスの訪問に入っていいのか、ということになると、行けとは言えません。そうなると管理者の自分が出て行くしかないですが、自分も子供がいるので迷っています』という声を聞きました」

在宅介護の厳しい現実を認識し、早急に改善していくことが、行政サイドに求められています。

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