こんにちは。作家やメディア評論家などで活動中の奥村シンゴと申します。
2020年12月9日、筆者は『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』(株式会社法研)を出版しました。内容は「若者ケアラー」として8年間の経験から得たノウハウや、介護者における新型コロナの対策についても解説している実用本です。ヤフーニュースなど、多数のメディアに取り上げられました。
今回はその中からコロナ禍で面会できない家族への対応案について、お話しします。
約半年間、祖母との面会はオンラインのみ
介護・医療従事者の皆さまにおかれましては、新型コロナの感染対策を徹底しつつ、かつ患者の命を守っておられるので頭が下がる思いです。一方で、高齢者施設に家族を預けている介護者の多くは、家族に会えず悶々とした日々を送っている人が多いのではないでしょうか。
筆者は30歳過ぎから認知症祖母を6年間、ほぼ1人で在宅介護してきました。2020年11月、祖母は精神科病棟から療養病院へ転院しました。当時はすでに新型コロナの影響で、面会はオンラインのみという状況。祖母に直接面会ができなくなってから半年近くが経過し、1日も早く顔を見たいと思っています。
病院や介護施設から状況などを聞く機会が減る
先述した通り、祖母が入院している病院は新型コロナの感染防止のため、家族ですら入ることはできません。そうなるのも無理はなく、特に民間病院は万が一感染者が出てしまった場合、報道や風評被害で利用者が減少し経営難に陥る可能性があります。
とはいえ、利用者の家族側からすれば「本人のリハビリの経過や内容を知りたい」「主治医の治療に対する考えが気になる」「ケアをしている人たちは普段どのような点に気を配りながら介護をしているのか」などと気になるものです。
しかし面会が禁止されているうえに、カンファレンスまで実施されない現状では、利用者家族が主治医や看護師、作業療法士、介護士などから直接意見を聞く機会がなくなってしまいます。
3密にならない場所でカンファレンスの実施を
意見を聞く機会がない問題について、筆者は「高齢者施設外で、カンファレンスの実施を検討していただけないか」と考えています。例えば、公園や河川、学校のグラウンドなど広いスペースであれば3密を回避できますし、マスクやフェイスシールドを着用すれば飛沫感染の恐れは低いです。
高齢者施設の近くに広い場所がない場合は、オンライン通話アプリを使ったカンファレンスのを検討するのも良いでしょう。ご本人の様子が心配なご家族であれば、多忙な介護従事者の希望する場所や時間で調整することもいとわないはずです。
そのほかにも、以下のような点を家族へ共有すべきだと考えています。
- リハビリの内容と成果
- リハビリを行った際の具体的なプログラムと成果を、紙媒体・あるいはデータ媒体でまとめて家族へ共有することが大切です。
- 夜間または早朝に起きた出来事
- 筆者の長期の在宅介護経験上、夜間から早朝は変化が起きやすいです。認知症による症状や、発熱、発作や咳、独特な症状など、ご家族へ積極的に共有すると、在宅生活への移行もスムーズになります。
- 治療成果と今後の治療方針
- 主に血圧や脈拍、食事量や体重、便の量、薬の量など、2・3ヵ月単位の変化具合や今までの治療成果、今後の治療方針を共有すると、家族も安心します。
電子メールやチャットアプリを「連絡帳」代わりに
オンライン面会が禁止された場合、家族が本人と会えるのは高齢者施設から短期での外泊や急病時、看取り時、転院時ぐらいではないでしょうか。筆者が祖母に会えたのは、「精神科病院の退院手続き時」と「療養病院の入院手続き時」のみとなります。
筆者が療養病院で入院の手続きや説明を受けているとき、精神科病院から介護タクシーで運ばれてきた祖母と久しぶりに会うことができました。そのとき、作業療法士が私に次のことを言ったのが印象的です。
「おばあさま(祖母)は会話が難しく、認知症がかなり進行しています。でも、私の下の名前の漢字は読むことができたんですよ。あ、お孫さん(筆者)は『シンゴさん』と仰るんですね。私も名前が『シンゴ』なんです。だからかな」
祖母が偶然に漢字が読めただけなのか、筆者と同じ名前だから読むことができたのかはわかりませんが、記憶の奇跡があるのかもしれません。
祖母は、入院直後から食事拒否や食欲不振が続き、鼻から胃や腸に栄養を入れる経鼻経管栄養を行っています。コロナ禍で高齢者施設への入院や転院を行い、本人が症状の悪化や進行した場合、その家族は様子が心配になるでしょう。
ですので、利用者家族の不安を取り除く方法として、高齢者施設の多くで利用者の様子を伝えている「連絡帳」を使用できないか提案したいと思います。利用者や家族全員に送るとなると、時間の手間やコストがかかると思いますので、電子メールかチャットアプリで送れば時間も手間も省けます。家族が知りたいと思う項目を以下にまとめました。
- 発熱や食欲不振など、体調に変化があったか
- 食事量を5段階もしくは10段階で平均数値化
- 夜間から早朝の平均睡眠時間
- 排泄の調子
- 介護拒否したか、否か。介護拒否をした場合はどのような場合か
- リハビリ内容と成果
- 服薬の種類や量の変化具合
- 本人との印象的で具体的なエピソード1つ
筆者が提案したうち一つでもいいので実現していただき、利用者家族に家族の様子が可視化されるよう一歩でも前進すればと願っています。