*2022年11月29日編集部追記:
新型コロナウイルス感染対策に関しては、厚生労働省の公式情報も必ず確認してください
こんにちは、終活カウンセラー協会認定講師でジャーナリストの小川朗です。
今回は「自治体による新型コロナに関する介護者・要介護者への支援事例」について、お話ししていきたいと思います。
介護者が新型コロナに感染した場合、要介護の方はどうすれば…
もし介護者と要介護の方が2人暮らしているとき、介護者が新型コロナに感染してしまったら要介護者の方はどうすれば良いのでしょうか。
在宅介護でこのような不安を抱えている方は全国にたくさんいます。都内のある看護師は、こう話してくれました。
「11~12月の時点で、訪問看護のお客様からも『家庭内感染になったらどうすれば良いのか』という問い合わせがいくつかありました」
12月といえば、東京都の新規感染者数が過去最多を連日更新していた時期。シニア世代の中には、インターネットで最新情報を得るのが苦手な方もいらっしゃいます。
そんな中で唯一の情報源であるテレビからは、不安を煽るニュースばかり。インターネットで自ら情報を得ることができない方々が「完璧な予防をしていたのに家庭内感染に陥ってしまった」というニュースを見たら、ひしひしと迫る新型コロナの脅威を必要以上に感じてしまうのも無理のないことです。
自宅で生活している介護の必要のある高齢者・障がい者の方の場合、同居する家族が感染して入院すると介護者は不在となり、またたく間に生活に支障が出る場合があります。また、自身も濃厚接触者であるために訪問介護などを断られる可能性まで発生することに思い至れば、心穏やかにいられるはずもありません。
3つの自治体による新型コロナに関する支援事例
高齢者の方に起こり得るこのような事態に、いち早く対応した自治体や存在します。今回はその例を3つ紹介します。
1:兵庫県の神戸市
1つ目が兵庫県の神戸市です。神戸市は家族が感染で入院して在宅での生活がピンチとなり、ショートステイなどの利用も難しくなった市内の高齢者や障がい者を一時的に受け入れる拠点を、昨年5月の段階で設置しています。
受け入れを行なっているのは、神戸市北区の「しあわせの村」内にある「保養センターひよどり」。期間は最大で2週間となっており、介護・看護の専門職が24時間体制で生活を支援してくれ、食事を含めて無料で利用が可能です。
高齢者用の洋室は完全個室でバリアフリー。介護が必要な方にも安心して過ごせる空間が用意されています。2月2日現在で、すでに10件の利用があったということで、一部がテレビでも取り上げられました。現在(2021年2月4日時点)、要援護者受入優先のため、一般利用は休止中とのことです。
2:大阪府の堺市
2つ目は大阪府の堺市。こちらも家族が感染して介護を行う事が困難になった場合に、引き続き在宅で安心して訪問介護サービスなどを受けることができるよう、昨年の5月22日から「新型コロナ感染症在宅ケア継続支援事業」を行っています。
まず基本事業として在宅ケアを継続するため、訪問サービス事業者などに対して、専門家による感染防止に関係する指導や防護服などの物資を支給。要介護者1人あたりに、15万円の協力金を事業者に給付することにしています。
さらに在宅が困難な場合には、市が借り上げたホテルに移って、訪問サービス事業者などによる介護が継続できるように支援。要介護の方の負担は、介護保険・医療保険など各種保険の自己負担分を除いて無料です。
使用された例として昨年12月、介護者(子世代の1人)が陽性となり10日間ホテル療養となったケースがありました。三世代の同居でしたが、子世代の方にも仕事や孫世代のお世話もあるため、高齢である要介護者のサポートは難しい状態。そのため濃厚接触者となった要介護者も、ナースコールが付いているサポート体制が整った別のホテルに10日間滞在することとなりました。滞在中は入浴の介助などのサポートを受けて過ごし、その後自宅へと戻ったそうです。
結果的に介護者が発症することはなく、残る家族も感染は認められなかったということでした。
3:東京都の江東区
3つ目は東京都の江東区です。こちらも同様の事態に備え、昨年の末から介護者が新型コロナ感染症にかかってからの2週間、要介護者の自宅にヘルパーなどを派遣して、支援を行なった事業所に時間区切りで補助金を支給する事業を行っています。また、要介護者の自宅で支援を行ったヘルパーなどが、支援後にPCR検査を受ける場合の費用の補助もしています。
サポートを行っている自治体を周知する必要がある
まだまだこうしたサポート体制を敷けていない自治体も数多く存在します。例えば静岡県浜松市では1月19日に同市内で高齢者や障がい者の介護を支援する3つの団体の代表が、在宅介護者の感染を想定した対策を求める要望書を市長あてに提出。窓口となり要望書を市長につないだ山下昭一福祉部長は、「なるべく早く、しっかりと対応していきたい」とコメントしています。
また、3つの団体のうちのひとつで高齢者の介護事業を手掛けているNPO法人「浜松介護サポートりらねっと」の村松真美理事長は「(要望書を提出したことで)空気が変わってきている感じはします。県と連携を取りながら対応していくということで」と手ごたえを感じている様子でした。
いずれにせよ、感染に備えた要介護者に対する支援は待ったなし。セーフティーネットを早急に構築することは大切ですが、すでにサポートを行っている自治体はその事業を広く告知し、当事者たちの不安を取り除く努力をしていく必要があるでしょう。