こんにちは。千葉県の房総地域の地域包括支援センターで、社会福祉士として勤務する藤野雅一です。
今回は「避難所HUG(ハグ)」についてご紹介したいと思います。
避難所HUGは避難所での運営を想定したゲーム
「避難所HUG」とは、避難所での運営を皆で考えるための一つのアプローチとして静岡県(避難所HUGは静岡県の登録商標)が開発した「避難所運営ゲーム」です。避難所、運営、ゲームのそれぞれの頭文字を取ってHUGと呼んでいます。
H:Hinanzyo 避難所
U:Unei 運営
G:Game ゲーム
英単語「HUG(ハグ)」は本来「抱きしめる」という意味。被災し心身ともに困窮している被災者を「あたたかく抱き留め受け入れる」といった意味も含まれているのでしょうね。
避難所HUGは避難者の年齢や性別、国籍、それぞれのご事情が書かれたカードを、避難所の体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こるさまざまな問題にどう対応していくかを疑似体験していきます。実際に災害が発生した際に避難所の運営に求められることは以下の通り。数えればキリがありません。
- 組織づくり
- 部屋割り
- 名簿の作成
- 避難所運営本部の設置
- マスコミの取材や問い合わせへの対応
- 食料、支援物資の受け入れ配給
- 炊き出しやゴミの処理などの家事
- ボランティアの受け入れ など
何の心得も準備も訓練もなく、急にやってくる災害に対してこれらの対応を滞りなく速やかに行うことは至難の業と言っても良いでしょう。
とはいえ、実地訓練で避難所運営を行うのも大変な労力がかかります。場所の確保や人の手配など、一朝一夕では実施できません。また実地での訓練はとても大切ですが、一度や二度実施したところでなかなか身につくものではないと思います。そんなときに避難所HUGがとても役に立つと考えます。
4つの事例を基にゲームスタート
前述した通り、避難所HUGは間髪入れずに次々と読み上げられる指示を平面図にカードを置くことでクリアしていくゲーム。例えば、筆者が実際にプレイしたときには以下のような指示がありました。
- B地区在住独居高齢者(90歳代)で、歩行困難の方を避難所に誘導してください。
- A地区在住で、ペットのいる乳幼児、3歳児童を含む4人家族世帯がきました。避難所の特定の場所へ誘導してください。
- 断水のためトイレが使用できません。使用中止の張り紙をしてください。
- 「トイレがない」と苦情が出ています。トイレを設置する場所を考えてください。
それぞれ該当するカードを平面図に置いていきますが、即座に判断し対応することはなかなか難しかったです。カードを置く際には、避難所の通路の確保などにも気を配ります。さまざまな配慮を即座に検討していくわけですが、前述の例で言うと、以下のようになります。
B地区在住独居高齢者(90歳代)で、歩行困難の方を避難所に誘導してください。
歩行が困難であるのでトイレなどに近い場所に誘導する。
A地区在住で、ペットのいる乳幼児、3歳児童を含む4人家族世帯がきました。避難所の特定の場所へ誘導してください。
ペットや乳幼児がいることに配慮し周りにも配慮して適切な場所に誘導する。
断水のためトイレが使用できません。使用中止の張り紙をしてください。
災害時の断水を想定しての対処をします。
「トイレがない」と苦情が出ています。トイレを設置する場所を考えてください。
断水でトイレが使えない状況を改善します。
判断や対応の後回し・保留はNG
ゲームを展開していく際に、「後回しと保留はなし」というルールが設定されていました。これは、「災害時の対応は待ったなし」「課題を後回しにすることは被災者にとって良いことがない」という前提のうえのルールなのだと思います。
筆者が6人グループでゲームをしたときは、次々と読み上げられる課題に即座に対応することはゲームであってもかなり大変でした。しかしゲームとはいえ、災害発生時の煩雑かつ膨大な量の支援活動をイメージすることができるので、とても有益だったと思います。
できれば地域住民の皆さまと避難所HAGができたらいいなと考えています。実際の避難所のレイアウトや地域的な要素をふんだんに盛り込んだ避難所HAGであれば、きっと実際の災害時をリアルに感じることができ、いざというときの力になると思うのです。