有限会社リハビリの風でデイサービスを管理している阿部洋輔です。
介護業界で働く方のなかには、残業の大きな要因となる「介護記録業務」に嫌なイメージを持っている人も多いと聞きます。解決方法の1つとして「タブレットやパソコンなどの端末で入力すれば良い」という方もいますが、それだけですべて解決するというわけではありません。今回は介護記録の意味や問題点、その解決策などを確認していきます。
介護記録は利用者の情報や介護の内容を記載するもの
まずは基本に立ち返ってみましょう。そもそも「介護記録」とは利用者一人ひとりの状態の変化や生活状況、行った介護の内容といった一連の経過を記述したもの。介護記録は作成しなければいけないのですが、何をどう書くかは事業所によって若干異なり、業界として標準化された記録形式があるわけではないのです。なぜ介護記録をとる必要があるのかと言うと、主に下記の理由があります。
- 事業所・職員間で情報を共有する
- 介護記録をつけることが介護保険法で定められている
- 事故や訴訟のときの証拠になる
このようにさまざまな理由がありますので、同じ現場で働くスタッフだとしても管理者の方たちは実地指導などの対外的な部分を意識して、現場のスタッフの方たちは事業所内での情報共有の部分を意識する、というようなことが多いと思います。
介護記録の問題点を整理して解決しよう
さまざまなスタッフがかかわるのが介護記録業務なわけですが、介護記録を書く目的も複数ありますので以下のような不満を聞くときがあります。
- 必要以上の記録量となってしまい残業が増える
- 手書きするのが面倒くさい
- 介護記録の基準がないので、何を書いていいのかわからず記載に時間がかかる
- 記載するスタッフによって所要時間に差が出る
しかし、前述したように、これらは介護記録の方法だけを変えれば解決するわけではありません。方法だけを変えたとしても、業務全体の時間管理ができなかったり、記載内容のルールがないので何をどう記載すれば良いのかわからないという問題があります。ほかにも、スタッフ間でのITリテラシーの差などがありますね。
そもそも、いろんなサービスや事業所がありますから、問題点のすべてを解決する答えはないと思います。もしあなたの働く事業所での記録業務に無理・無駄・ムラがあるのであれば、以下の問題を整理してみましょう。
- 業務全体の時間配分
- 手書きや転記の無駄が多い
- 記載内容のルールがない
- スタッフ間の能力の差がある
介護記録の問題を整理できれば、それに見合った解決策をとっていくだけです。
例えば、業務全体の時間配分が問題であれば、各業務時間を適正化すれば良いですし、それで人材が足りていないかもわかります。また、手書きや転記の無駄が多いのであればタブレットの導入を検討。記載内容のルールがないのであれば、ルールを共有する勉強会を開き、スタッフ間の能力の差があるならば、スタッフの教育システムの再構築を…というように改善を繰り返してくわけです。
これからは端末やタブレットでの記入が標準に
マクロ的な視点ではICT推進により端末やタブレットでの記入が一般的となり、ローカルルール(自治体によって基準が異なること)がなくなることで、介護業界全体で記載内容も標準化されるのでしょう。署名・捺印のルールもなくなれば、保存方法も紙媒体から電子媒体に変わっていくことでしょう。
とはいえ、これだけ ICTの活用が叫ばれておりますが、当事業所での介護記録は紙媒体を使用しています。もちろん、介護記録業務をうまくコントロールをするため、以下のルールが前提です。
- 業務量を必要以上に増やさないため、必要最低限の情報のみ記録
- 業務時間全体でマネジメントするため記録時間も就業時間中に行う
これはあくまで一例です。小規模なデイサービスと大規模の特別養護老人ホームでは状況が異なることもあるので、各事業所ごとに効率の良い方法は異なると思います。
もし事業所の介護記録に何か課題があると感じているのであれば、介護記録の目的を共有した上で、業務にかかわる無理・無駄・ムラを探し、対策を考えてみましょう。