こんにちは。REASON代表で、理学療法士の中川恵子です。「介護の教科書」の連載では、介護を楽に、そして楽しくなるようなアドバイスをしたいと思っております。
夏になると「疲れが取れない」「だるい」といった、体の不調を感じていませんか?夏の終わりごろの不調は暑さによる場合もありますが、長く冷房にあたっていたり、冷たいものばかり口にして体が冷えてしまったことが原因である場合もあります。暑い夏だからこそ、「冷え」が不調の原因になっていることもあるのです。
その原因を取り除く1つの方法として、体を動かすことで体の冷えるのを予防することが挙げられます。今回は、「疲れない」「つらくない」運動を考案している理学療法士の株式会社スタジオユウ 福田裕子先生に、「体の冷えを予防する10秒ポーズ」を教えてもらいます。
10秒ポーズは体温調節にかかわる自律神経に影響する
「10秒間体を止めてみる」という健康法を紹介します。体に意識を向けながら10秒間体を止めることで、普段はあまり使わなかった筋肉が刺激されるだけでなく、脳のなかの「体地図」が補修されます。
脳卒中などで脳がダメージを受けると、自分の腕がどこにあるかわからなくなったり、腕が3本も4本もあるように感じることがあります。普段、私たちは当たり前のように、「この体は自分の体」だと感じていると思いますが、脳が「身体所有感(自分の体であると感じる感覚のこと)」と認知するためには、体をよく動かして、体のすみずみの情報を脳にきちんと送り届けることが大切です。この感覚は体温調節にかかわる自律神経にも影響を及ぼすことがわかっています。
そこで、自分の体のすみずみに改めて意識を向けながら、10秒止まっていろいろなポーズをとり、全身の筋肉や神経を活性化させて精密な体地図をつくっていきましょう。
体の冷えを予防する2つのポーズ
ゆうれいのポーズ
- 目を閉じる
- 腕や頭を柳のように垂れてぶら下げるイメージで、上半身の力を抜く
- 10秒数える
今までがんばっていた体の部位を休ませるつもりで行っていただくと、リラクゼーションや緊張緩和、リフレッシュになります。
ヨットのポーズ
- お尻を壁の角や柱につけ、足を上げる
- おろした膝は軽く曲げる
- つま先を反らす
- 膝から太ももの後ろにかけて心地良く伸びるポジションを探す
- 10秒数える
太ももの後ろから膝の後ろにかけて気持ちよく伸びていたらOKです。重力の力も借りて、足もとにたまった水分を心臓のほうに戻すことができますので、むくみ解消効果も期待できます。
サーフィンのポーズ
- 足を後ろに曲げて片足で立つ
- 足の裏と手のひらを向かい合わせる
- 後ろの指先を眺めながら、体を軽くひねる
- お腹を引き締め、指先を遠くに伸ばす
片足で立ちながら後ろを振り返るので、バランス力が求められるポーズです。転倒予防だけでなく、腸を刺激して便秘解消も期待できます。
疲れた体をリフレッシュできる、夏らしいネーミングの「ゆうれい」「ヨット」「サーフィン」のポーズをご紹介しました。遊びの感覚で楽しんでやってみてくださいね。
冷え性の予防には適度な運動が有効
今回は、夏らしい楽しいネーミングの10秒ポーズをご紹介しました。冷えを予防するためには、適度に体を動かして体温を上げることが効果的です。適度な運動により筋肉量がアップすれば、冷え性の予防につながります。
暑い時間帯に屋外で運動するのは注意が必要ですが、10秒ポーズは手軽に自宅でできる運動であり、心も元気にリフレッシュする健康法です。家事や介護など、日常のちょっとした隙間時間を使って「冷えを予防する10秒ポーズ」を毎日継続することで体温を上げて、夏の疲れや介護疲れにも負けない体をつくりましょう。
フィジカルセラピスト(理学療法士)の福田裕子先生の本『一生歩ける体をつくる10秒ポーズ健康法』(サンマーク出版)にも体が楽になるヒントがたくさん紹介されています。こちらもぜひ参考にしてください。