皆さんこんにちは。株式会社てづくり介護代表取締役の高木亨です。
デイサービスがどんなサービスを提供しているか、ご存知ですか。入浴や食事、体操やレクリエーションなど、さまざまなサービスを提供しています。これらのサービスは、どのような理由のもとで提供されているのでしょうか。
今回は、「デイサービスのレクリエーション」についてお話しします。
レクリエーションの提供は義務なのか?
レクリエーションの提供は義務なのか?デイサービスでレクリエーションを提供する介護従事者なら誰もが、こんな疑問を抱いたことがあると思います。介護保険法には、以下の記述があります。
「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病などにより、要介護状態となった要介護者などに対し、これらの者がその有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービスおよび福祉サービスを提供する」
「デイサービスはレクリエーションを提供する義務がある」などとは書かれてはいません。ですが、私自身がデイサービスに従事するようになった20年前から、当然のように「レクリエーションを提供しなければならない」という空気はすでに完成していました。
デイサービスに求められる介護サービスとは何でしょう。サービス業で提供されるおもてなしとの違いや、医療機関で提供される治療とは明らかに異なります。
3大介護といわれるものに「排泄・食事・入浴」がありますが、これだけではADL(日常生活動作)の維持やQOL(生活の質)向上を実現することは困難です。そこで、導入されるようになったのが「レクリエーション」であると考えられます。機能訓練も、レクリエーションに位置づけられるでしょう。デイサービスに限った話ではありませんが、サービス提供の主体はサービスを提供される側にあるという認識を忘れないことが重要です。
そもそも、私たちは「受けたくもないサービス」や「必要でないサービス」に対して、わざわざ対価を支払いたいとは思わないものです。「レクリエーションを提供しなければならない空気」や「盛り上げなければならない雰囲気」に支配され、レクリエーションの準備を渋々行っていたり、「何のために」ではなく「どうやって盛り上げるか」に目的がすり替わってしまっていることもあるかもしれません。
私はレクリエーションの提供が得意な方でした。ですが、得意不得意にかかわらず、ケアプランや介護計画書に基づいて、その中にレクリエーションが記載されているのであれば、提供に努める必要性はあるでしょう。わざわざ記載するまでもなく、「当然のように行われるもの」と位置づけられている可能性もあります。
弊社は、強制的な時間割制でレクリエーションを提供するスタイルをとってはいません。あくまでも利用者とスタッフの自主性に委ねています。なので、中には準備をしてくれたスタッフもいますが、基本的にはスタッフに夜遅くまでレクリエーションの準備を行ってもらうことはありません。
ある程度、定番の活動内容は決まってはいますが、それ以外の活動内容に関してはレクリエーション活動を含めて当日に決めています。
しかし、これは地域密着型で規模が極小の弊社だからこそ、できることだと思っています。「準備に時間を掛けたから良いレクリエーションが提供できる」という訳ではないと考えます。
レクリエーションに参加する動機や意義を見出すことが必要
ADLの維持およびQOLの向上にレクリエーション活動が有効であることは確かでしょう。しかし、中にはレクリエーションに参加したくないという利用者もいます。無理矢理参加を促すことは苦痛であり、利用者がデイサービスに嫌悪感を抱きかねません。重要なのは、「動機づけ」です。
例えば、「内容が幼い」とか「ばかばかしい」などという声が挙がることがあります。問題視されたこともある「風船バレー」は、演出を変えると利用者は自ら行ってくださいます。そこに子どもを1人入れるだけで大盛り上がりです。「子どもを楽しませたい」「子どもの相手してあげよう」など、自然と動機が湧きます。すると多くの笑顔が溢れ、風船バレーに取り組む自然な流れができ上がります。
繕い物が得意な利用者には、マスクや雑巾を縫っていただいたりもしています。なかなかマスクが入手できないでいる利用者の分や、ケアマネージャーやスタッフの分まで黙々と熱心に縫ってくださいました。マスクを受け取った方の喜ばれた様子などをお伝えすると、「もっと作ってあげる」とすぐさま針と布を要求されました。
これらは規模が小さいからまかり通る例に過ぎませんが、動機づけの演出に1番効くのは「自分以外の誰かのために」レクリエーションに取り組むことだと思います。
「自分自身が楽しむ」のも有効ですが、「これをすることによって、誰かが助かる」「誰かが喜ぶ」などを具体的に示すと、「じゃあ、やってみようか」という意気込みにつながりやすいと感じています。
多くの介護従事者が利用者の「役に立ちたい」「笑顔が見たい」と思っていることと同様に、利用者も誰かの「役に立ちたい」「笑顔が見たい」と思っているはずです。利用者とスタッフが笑顔で活動できるなら、「レクリエーションの時間だから、レクリエーションを行う」というように、時間割に縛られる必要はないと思います。
大切なのは利用者1人ひとりの価値感を共有し、ADLや認知度の違いを日頃のケアから拾い上げ、環境や状況を可能な限り把握しつつ、活動を生み出すことです。とはいえ、大人数になると利用者一人ひとりに割ける時間が限られます。
特に新型コロナの流行下では、安全性の確保に加えて、ソーシャルディスタンスを保つことや共有物の制限など、配慮すべきことが多くて大変な思いをしている介護従事者もいると思います。動機づけまで、気が回らないかもしれません。しかし、「レクの時間だからレクをはじめます」とか「動かないとますます動けなくなりますよ」というような呼びかけを、稚拙だと感じる利用者もいると思います。声掛け1つでも、演出はできるものです。
レクリエーション参加への動機をつくる呼びかけ方
- 「どうしても人手が足りないので、あなたに手伝ってほしい」
- 「一緒にやっていただけると、私がとても助かる」
- 「作ったものを、近所の子どもたちにプレゼントしたい」
「○○だから○○する」「しないといけない」といったことを、「スタッフなど、ほかの誰かのために行ってほしい」という声掛けに変えるだけでも、動機づけや意義づけは可能なのです。
介護従事者自身も楽しむことがポイント
介護保険制度の縛りや事業所の規則や取り決め、あるいは経営陣の現場への関心の薄さが原因で、レクリエーションを含む介護を楽しむことが容易ではないかもしれません。
しかし、つらそうにレクリエーションを実施するスタッフを前にした利用者は、レクリエーションを楽しめないと思います。それは「同情のレクリエーション参加」に過ぎず、ADLの維持やQOLの向上から遠ざかってしまう原因になります。
突き詰めていくと、介護従事者自身が、レクリエーションやデイサービスの仕事に意義を見出して、自ら積極的に取り組めているかが関係していると思います。
介護従事者が強い動機や意義を見出し、意欲を持って仕事に取り組めるように、管理者や経営陣、制度に携わる方々にも取り組みへの理解と不断の努力を願わずにはいられません。