有限会社リハビリの風で、デイサービスの管理をしている阿部洋輔です。
2006年、医療機関でのリハビリに日数制限ができ、「リハビリ難民」(医療機関でリハビリが受けられない人)が社会問題化しました。
その後も医療保険は2年に1度、介護保険は3年に1度ルールが変更され、その度にさまざまな影響が出ています。
脳血管疾患(例:脳梗塞)での入院の場合、基本的には180日しかリハビリを受けることができません。
ですから、医療保険や介護保険でのリハビリが満足に受けられない患者さんの中には、保険外のサービス(自費リハビリ)を選択する方もいらっしゃいます。
そこで今回は、自費リハビリについて考えてみます。
そもそも自費リハビリとは?
「自費リハビリ」とは、公的医療保険や介護保険でのサービスではない「リハビリ」のことです。
一般的に、リハビリは公的保険でのサービスとして医療機関や介護施設で受けられます。
自費リハビリは、公的保険でのリハビリでは足りないと感じる方の、受け皿となるサービスです。
回復期リハビリテーション病院(医療保険)では1日3時間の1対1でのリハビリが一般的。
しかし、1度患者さんが退院をすれば、その後サービスを受けることはできません。
この場合、デイサービスで機能訓練をするといっても、集団でのリハビリであるケースが多いので、1対1のリハビリ時間は20分程度になります。
制限のあるサービス内容に満足できない利用者さんが出てくるのも仕方がありません。
自費リハビリは、オーダーメイド・短期集中型のプログラム
理学療法士が在籍する自費リハビリ施設としては、以下の施設が挙げられます。
理学療法士が在籍する自費リハビリ施設例
- 脳梗塞リハビリセンター(株式会社ワイズ)(21店舗)
- AViC THE PHYSIO STUDIO(株式会社豊通オールライフ)(4店舗)
主に脳卒中などの後遺症がある方々が対象となっており、「リハビリ難民の方々に必要なリハビリを提供する」という目的のもと運営されています。
自費リハビリを提供する施設では、基本的に利用者一人ひとりにあった「オーダーメイドプログラム」を提供しています。
利用期間も利用者ごとに異なりますが、1ヵ月・2ヵ月・3ヵ月と期間を区切って短期集中的に行うことが一般的です。
また、「予後予測」(どの程度まで機能が改善するのか、しないのか)、「トレーニングについてのエビデンス」(トレーニングの効果は実証されているのか)についてしっかりと説明したうえで、サービスを提供してくれる施設がおすすめです。
注意すべき点として、そもそも理学療法士が自由診療を行うことはできません。
基本的に、理学療法士が理学療法を行う際には医師の指示が必要となります。
体に障害のない方に対する介護予防事業では理学療法を実施することは可能ですが、障害がある方に対して「理学療法士が理学療法をします!」と大々的に宣伝しているところは、グレーゾーンの可能性が高く注意が必要です。
自費リハビリの質と料金について
自費リハビリ導入に際して、問題点として挙げられるのは以下の2点です。
- 医療的な質の担保
- 高額化する料金
医療の質に関しては、しっかりと説明をしてもらい、内容を十分に理解するよう努めましょう。
高額化する料金に関してですが、実は医療保険で値付けされている料金と大差はないので、正しく認識する必要があります。
自費リハビリが特別に高額なのではなく、リハビリ費が総じて高額化しており、要するに10割負担か1〜3割負担の料金の違いという話になります。
自費リハビリは今後拡大していく
最近は「介護保険報酬」が話題に挙がりますが、社会保障費が増大していけば、どこかを適正化しなくてはいけません。
国の財政も無限ではないので、保険内のサービスの量をどんどん増やすのは非現実的。
国も保険外(自費リハビリ)サービスに頑張ってほしい、というのが本音ではないでしょうか。
2018年9月に厚生労働省が「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせる場合の取り扱いについて」を開示し、各機関に通知しました。
世の中の流れとしては、自費リハビリを含めた保険外サービスが拡大することは間違いないでしょう。
事前に「利用目的」と「達成目標」を確認しよう
自費リハビリ施設でサービスを受けることは、保険内サービスで満たすことのできないニーズを満たしてくれる可能性があります。
ただし、自費リハビリは保険内リハビリと比較すると高価なため、利用目的・ゴールを明確にしてから導入されることをおすすめします。
自費リハビリという言葉が先行してしまいますが、自費リハビリ施設といってもさまざまです。
「何のために自費リハビリ施設を利用するのか」、今一度考えてみることが必要だと思います。
今後の選択肢として「自費リハビリ」を知っておこう
一番大切なのは、あらかじめ自費リハビリの存在を知って、今後のリハビリを選択する際の判断材料を増やすことです。
しかし、一般の方にとって、どのサービスが医療保険または介護保険範囲内なのか把握するだけでもずいぶん話が複雑ですから、それに加えて保険外のサービスまで知っておくことは容易ではありません。
もし皆さんが医療保険や介護保険適用の施設で働いているのであれば、より保険外サービスのことも理解するようにして、利用者さんや家族に正確な情報提供をすることが大切です。
表面的なことだけを見て「自費リハビリ施設は良い」「自費リハビリは高くて通えない」と判断するのではなく、自費リハビリの対象がどういった利用者なのか、またどういった希望やニーズで利用されているのか、価格はいくらなのかを把握しておくようにしましょう。
困った利用者さんやご家族に情報提供ができれば、たとえ直接その利用者さんを担当しないとしても価値のあることだと思います。