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第111回

夏の参院選で注目された難病ALSは、障害年金の申請などが患者のハードルに…行政と病院の強い連携が必要です

最終更新日時 2019/08/09
#介護保険サービス
2019年夏の参院選では、難病指定されているALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者である舩後康彦(ふなごやすひこ)氏が国会議員となったことが話題になりました。今回は、注目が集まっているALSという病気になった場合に、どのような状況に陥るのか、そして障害年金を申請することがいかに難しいのかについて、阿部さんの事例をもとにお話ししていきます。

2019年夏の参院選では、難病指定されているALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者である舩後康彦(ふなごやすひこ)氏が国会議員となったことが話題になりました。

そのニュースに大きな関心を示していたのが、第105回の記事でご紹介した、プロゴルファーの阿部進さんです。

阿部さんは、舩後さんと同じALS患者。現在は要介護認定で「要介護3」、障害者認定で最も重いとされる「1種1級」と認定されています。

今回は、注目が集まっているALSという病気になった場合に、どのような状況に陥るのか、そして障害年金を申請することがいかに難しいのかについて、阿部さんの事例をもとにお話ししていきます。

ALSは身体がうまく動かなくなる病気

ALSは、自分の意思で筋肉を動かすときに働いている、脳から筋肉へ電気信号を送っている「運動ニューロン」が上手く機能しなくなる病気です。

ALSの患者は、全国で約9,000人。診断が難しく、診断されるまでに何ヵ月も時間を要することが、患者が乗り越えなければならない最初のハードルとなっています。

ALSの診断までに1年以上がかかった

阿部さんの場合は、一昨年の夏あたりから、原因不明の疲れやすさ、そして左足首やヒザの違和感に悩まされるようになりました。内科も受診してみたところ、医師からは「風邪でしょう」との診断。

それから暫く経ったある日、阿部さんはヘルニアを患っていたため、整形外科を受診しました。そのときに「ヒザの十字靱帯内視鏡手術」が必要との診断を受け、手術の日も決定したのです。

ところが、別の医師に診察してもらうと他の病気を疑われ、総合病院を紹介されます。そして、神経内科の専門医から初めて、ALSを告知されたのです。

つまり、誤診だったヒザの内視鏡手術は、すんでのところで回避されたことになります。

それから阿部さんは、アメリカにいるALSの権威として有名な先生に連絡し、都内の大学病院を紹介してもらいました。

こうして、症状が現れてから1年以上という長い期間をかけ、ようやく阿部さんはALSと診断され、通院する病院を見つけることができ、そして介護の環境を整えることができたのです。

ALS患者は介護保険の第2号被保険者に該当

ALSと診断され、通う病院が決まった阿部さんは、介護保険サービスや障害年金を受けるために動き出します。

まず、介護保険サービスは、ALS患者であれば65歳以下でも利用することができます。もう少し詳しく説明すると、介護保険サービスが利用できるのは、介護が必要と認定された方で、原則として65歳以上の方(第1号被保険者)となっています。

一方で、64歳以下の方でも、特定疾病が原因で認定された場合に、40歳以上であれば第2号被保険者として介護保険サービスを利用できるようになります。特定疾病は全部で16種類。ALSはこの中に含まれているため、介護保険サービスを受けることができるのです。

阿部さんは49歳で、昨年秋に要介護認定を受けて以降は、第2号被保険者として介護保険を利用しています。要介護認定を受けたとき、阿部さんは自ら出かけ、面接を受けることができました。

その後はさらに障害者認定も受けた阿部さんですが、障害年金はまだ受給できていません。

それは、障害年金を申請するためのハードルが、今の阿部さんにとって高すぎるからです。

ALSと障害年金の申請の間には大きな壁がある

阿部さんは障害年金について役所に問い合わせ、申請書類を手に入れて内容を見ると、すぐに一人で申請を行うことを断念したそうです。

初診日を確定して証明書を貰うこと、そして診断書が用意することが困難でした」と阿部さんは語ります。

ALSは初診日を確定するのが難しい

大前提として、障害年金は初診日(初めて医療機関を受診した日)から1年6ヵ月経たないと請求することができません。

そのため、阿部さんがALSとして障害年金を受給するには、まずALSについて初めて医師に診てもらった初診日を確定する「受診状況証明書」を書いてもらう必要がありました。

「初診日の確定と言われても、最初に診察を受けた日なんて覚えていない」と阿部さんが言うのも、診断される日までにかかった時間から考えると無理はありません。

ただでさえ、認知度がまだまだ低く、難病とされているALSです。初めて病院に行ったときに、この病気に罹患していると思って診察を受けに行く人など多くはないでしょう。

さらに、ALSを確定するまでの工程は、"他の病気ではない"という消去法が大きなウエイトを占めているため診断に時間がかかります。

また、せっかく診断が確定しても、診断確定前の段階の症状がALSによるものかどうかは医師も断定が難しいため、いつをもって「ALSの初診日です」とするのかは、医師にとっても判断が難しいという課題もあります。

初診日の確定が、ALS患者にとっていかに障害年金を申告することの難関になっているのか、おわかりいただけたでしょうか。

ALSの症状が申請の妨げになる

今の阿部さんにとって、診断日を確定したり、医師の押印が必要な「受診状況証明書」をもらったりするために病院に行くのは、容易なことではありません。

さらに、申請の手続きをするために年金事務所まで行き、順番を待ち、長時間説明を受けながら書類を作成するという行動も、要介護3の阿部さんにとっては大きな困難です。

例えば、筆者の地元である江東区の年金事務所を参考にしてみましょう。 8月に相談するための予約は、7月24日の時点でいっぱい。9月になってようやく予約を入れられる状況でした。

年金事務所がそのような現状のため、阿部さんは結局、知り合いの税理士から社会保険労務士を紹介してもらい、代行を依頼することにしたのです。着手金(数万円程度)や成功報酬を負担しますが、この方法を選択するしかなかったわけです。

阿部さんは、ため息交じりに、このように語ります。
「もう少し病院と行政がつながっていてくれていれば、スムーズに物事が進むと思うのですが」

最後に一言

今回の参議院選挙によって、ALSの舩後さんが当選。それによって、すでに国会内におけるALSという病気への認知度が広がりつつあります。

ALSに対する認知度を高めた、今回の選挙。これが障害者に優しい年金制度、介護制度につながっていく機会になるかもしれませんね。

病院と行政の緊密な連携こそが、阿部さんをはじめとするALSと戦う人々の望みでもあるでしょう。

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