在宅介護は、介護保険サービスの専門職や医師などが支えていますが、介護の代表者となるのはやはり家族です。
今回は、在宅介護をしている家族が抱える、苦労や悩み(大変さ)についてお話します。
在宅介護の大変さは「休みがない」「先が見えない」こと
在宅介護の苦労や悩みは、一口では語れません。第一に言えることは、“休みがない”ことです。
介護職の場合は、「今日はここで終わり」という終業時間、週休2日の休日があります。
その時間を使って、疲労をリセットする時間を持つことができるのです。
しかし在宅介護の場合は、介護をする時間も、休む時間も定まっていません。
暮らしが続く限り24時間・365日止まることなく介護が続くのです。
在宅介護を始めたときに、揺るぎない思いや気持ちを持っていたとしても、時間の経過とともに“疲れ”が出るのが普通です。
次に、“先が見えない不安”があります。介護は、取り組む時間や期間が定まっていません。
例えば「1週間だけ介護をする」と決まっていれば、仕事をしている場合でも有給を使ったり、介護休暇を取得したりすることで調整できます。睡眠不足なども、我慢できるかもしれません。
しかし、介護はいつまで続くかわからないため長期化する場合があり、その間ずっと継続して穏やかな気持ちでいることは難しいでしょう。
現在では、介護保険制度を中心に介護サービスが充実しています(一部の山間部や離島を除く)。
在宅介護を支える環境が整備されてきており、医師が訪問診療を行ってくれますし、介護用品もネットで購入できる時代です。
しかし、その反面、家族がなかなかギブアップする(在宅介護から施設入居する、入院する)ことができない状況になっているとも言えます。
「この状況なら、在宅介護ができなくても仕方ない」という気持ちの逃げ場が、制度の充実とともに無くなってきていると言えるのです。
在宅介護をする家族が抱える悩みを整理しよう
1つ2つでは済まない在宅介護の苦労や、家族の悩みについて整理しました。
1.起き上がる介助やおむつ交換などの身体介護で、腰を痛める。
2.認知症状に対する誤解や知識不足で、対応方法がわからず混乱する。
3.認知症状のひとつである徘徊(外に出て長い時間歩きまわること)に付き合い、体力や気力が消耗する。
4.昼夜問わず介助が続き、寝不足や睡眠障害になる。
5.介護サービスを増やしたくても金銭的事情により増やせないなど、経済的問題を抱える。
6.介護ストレスにより、要介護者に怒りをぶつけてしまうことで、虐待のリスクを抱える。
7.仕事や外出する時間の減少に伴い、外部と接触する機会がなくなり、社会的孤立感に襲われる。
8.介護サービスを利用することにより、“自分で行えない”ことに後ろめたさを感じる。
9.他の家族との関係に不和が生じる。
10.自由な時間がなくなる・減る。
11.相談できる相手がいない。
12.相談できる相手はいるが、介護を代わってくれる人がいない。
13.ケアマネージャーや訪問介護員等と相性が悪い。また、担当を交代してほしいが言い出せない。
14.医師やケアマネージャーなど、専門職によって言うことが異なり、戸惑う。
15.介護職員の言葉遣いや態度、不用意な発言が気になる。
介護の「大変さ」を予測することも精神的負担のコントロール方法のひとつ
介護の大変さは、要介護度、家族構成、人間関係、介護者の年齢など、環境によっても異なります。
在宅介護では、本当に次から次へと大変な困難に遭遇します。
そのときに大切なのは、困難に直面する時期を、あらかじめ予測・想定しておくことです。
不安を放置したり、対応を誤ってしまうことが、複数の困難に発展する場合があります。
苦労が積み重なっていくと、親や家族への愛情が一時的に歪んでしまったり、心の穏やかさや、精神的なゆとりが奪われることにつながります。
そうならないためにも、事前に上記のような“苦労や悩み”について、“どう対応するか”を考え、準備しましょう!