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第69回

つい「ダメ出し」をしていませんか?認知症の方の「問題行動」は介護者のNG行動が招いていることも!

最終更新日時 2019/01/15
#親の介護
認知症状態の本人に、良くなってほしいという期待や願望をもってする行動を間違ってしまうと、認知症状態の本人にとって大きなストレスとなります。そして、神経細胞の消滅(認知症の進行)を速めてしまう可能性があるということです。

こんにちは。介護老人保健施設「総和苑」で介護課長をしている高橋秀明です。

これから前編・後編の2回に分けて、「認知症介護のNG行動」をテーマに解説していきますね。

NG行動と言われると「何か良くない介護をしていたらどうしよう…」と不安になる方がいるかもしれません。

ただ、認知症の方の介護はプロでも難しいもの。

特に在宅介護をされている方の場合は、日々さまざまな失敗から学んで、少しずつできることを増やしている方も多いのではないでしょうか。

「一生懸命に介護をやっているのに、うまくいかない…」というご家族と、被介護者ご本人のストレスを軽減するために、当記事が参考になれば幸いです。

きつい言葉で指摘を繰り返してしまった事例

認知症介護のNG行動をわかりやすく解説するために、今回は実際に合ったエピソードを使って紹介させていただきます。

アルツハイマー型認知症状態であるミエ子さんと、その息子の奥さんであるエリさんが登場人物です。

あるとき、ミエ子さんの介護をしているエリさんから、僕に相談の電話がありました。

「私はお母さんのために一生懸命介護しているのに、反発ばかりされる。私に対して興奮して大声を出して怒ったかと思えば、涙を流して"もう死にたい"って言ってくるのです。私、おかしくなりそう…お母さんを施設で預かってください!」

ミエ子さんは基本的な身体機能を維持していましたが、認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害、理解力・判断力障害、実行機能障害、失語、失認、失行など)によって、生活に支障が出るようになっていました。

少し前にエリさんに言われたことを「聞いていない」と言ったり、洋服の着方がわからなくなったり、トイレの仕方がわからなくなったり…。

そんなミエ子さんに対して、世話をしているエリさんは「さっき言ったじゃない。もう忘れたの?思い出してよ」「洋服の前後ろが逆よ。しっかり着てちょうだい」「トイレが終わったあとはちゃんと流して」と、何度も指摘を繰り返しました。

それでも本人に伝わらないと、メモを渡したり、トイレ内に排せつの手順を書いた張り紙をしてみたりと、「何とか本人にできるようになってもらおう」と頑張っていたそうです。

相談を聞いていると、エリさんの「ミエ子さんの症状が少しでも良くなってほしい」という気持ちがよく伝わってきました。

しかしミエ子さんにとっては、ささいなことで小言を言われることでかえってストレスを抱えてしまい、エリさんに反発していたのではないかと思います。

二人の関係改善のために行ったこと

ミエ子さんとエリさんの関係性や状況から、僕は介護者であるエリさんが冷静さを取り戻す時間が必要だと考えました。

「一生懸命に介護をしているのに、上手くいかない…」というストレスを抱えているエリさんに、僕がいくら「指示」「否定」「恐怖感をあおる」「詰問」するような表現を控えてみましょうと言っても伝わらないと思ったからです。

また、僕に否定されたと思ってショックを受けてしまう可能性もありました。

そこで相談を進めた結果、ミエ子さんは僕が働く施設でショートステイを利用することになりました。

感情的になっていたエリさんも、ショートステイを利用することでミエ子さんと物理的に距離がとれるようになったので、徐々に様子が落ち着いていきました。

僕と担当ケアマネージャーはエリさんの熱心な姿勢をねぎらい、称えたあとに「認知症の基礎知識」と「望ましい言葉や接し方」を伝えるようにしていました。

するとエリさんは「難しいなあ」と言いながらも理解を示してくれたので、ミエ子さんに対して少しずつ言葉を変えてくれるようになり、二人の関係は少しずつ改善していきました。

それからは「小言を言うことが随分と減った」と笑って話してくれるようになり、数年に及ぶ献身的な介護の末、エリさんはミエ子さんを自宅で看取りました。

介護者の行動が症状に影響する

認知症にとても詳しい、有名なお医者さんがこんなことを話しています。

記憶をつかさどっているのは脳の海馬。この海馬はストレスにとても弱く、大きなストレスは海馬の神経細胞を消滅させるといわれています。人間は加齢によって脳の神経細胞が徐々に消滅していきますが、大きなストレスは消滅のスピードを倍増させる可能性があります」

私たちが認知症状態の本人に、良くなってほしいという期待や願望をもってする行動を間違ってしまうと、認知症状態の本人にとって大きなストレスとなります。

そして、神経細胞の消滅(認知症の進行)を速めてしまう可能性があるということです。

また、対応が難しい行動・心理症状といった、いわゆる問題行動(不安・焦燥、抑うつ、介護抵抗、徘徊、怒りやすい、暴言・暴力など)は介護者の言葉やコミュニケーションが原因で発生する、という可能性もあるといわれています。

だからこそ僕たちは言葉の使い方、そして介護者への接し方を、可能な限り整えていく必要があるのです。

認知症介護に適切な言葉遣いとは

それでは、認知症介護でNGとされている言葉遣いの参考例と、言い換えると良い言葉を紹介しますね。

NGな言葉遣いの言い換え方
NG OK

指示・命令・否定的表現

【例】
○○やって
○○しなさい
ダメでしょ

意思を確認する表現

【例】
AとBどっちにする
○○してもらえるかな

ネガティブ・プライドを傷つける表現

【例】
汚いでしょ
困ったことするね
なんでこれくらいできないの
また失敗したの

ポジティブ・相手を受け入れる表現

【例】
○○してみよう
○○やってくれて助かったよ
そうなんだ
感謝しているよ

恐怖感をあおる表現

【例】
○○できなくなるよ
病気が悪化するよ
施設に入れるからね

安心感を与える表現

【例】
大丈夫
私が手伝うから安心してね
心配しないでね

もちろん、言葉遣いを変えれば絶対に効果があるというものでもなく、変えてみることも簡単なことではありません。

ただご家族が少しだけ意識をしてコミュニケーションの取り方を変えてみるだけでも、認知症状態にある本人が「安全・安心」を感じてくれると思います。

ストレスが溜まってしまい、つい言葉をきつく指摘してしまう。そのことで認知症の方の症状をいっそう引き出してしまう。

そしてまたストレスが溜まって…そんな負の連鎖を止めるためにも、一度試してみてくださいね。

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