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第35回

認知症の方の笑顔を取り戻そう。生活習慣を変えない日常を作り、安心させられる環境へ“true door”から学ぶ記憶の扉

最終更新日時 2018/05/21
#親の介護 #老人ホームへの入居
前の情報も大切ですし、サービス利用後しばらく経ってから「こんなことできるんだ!」「こんなことが好きなんだ!」って発見することもあります。これまでの生活習慣を大切にしつつ、新しい気付きも取り入れていきましょう。いつも一番に見るべきなのは目の前にいるその人です。

こんにちは。おうちサロン「ゆきのしずく」を運営している、「認知症介護よりそいケアアドバイザー」の石川深雪です。「介護×認知症」を担当させていただいています。

身内が認知症となり、介護が必要になったとき「どんなサービスを使ったら良い?」「どこの施設が良い?」と相談を受けることがあります。しかし…「はい、ここが良いですよ」と簡単には言えません。

理由は、みなさんが"生きてきた環境、好きなことや場所、性格"が違うからです。「同じ介護度であってもAさんには良いけど、Bさんにはここは合わない」ということも当然出てきます。

今回は、認知症ケアを行う中で感じた「認知症の方の生活習慣を大切にすることの重要性」について書きたいと思います。

建物や家具への配慮は欠かせない

環境の変化は少なめに

以前、ある特養を見学したときのことです。プライバシーに配慮したという建物は、廊下や曲がり角が多く、一つひとつの居室が独立しているようでした。「果たして、認知症の方がこの建物になじめるのか?」と疑問に感じました。

私の祖母もそうでしたが、昔は大家族が一つ屋根の下に暮らしていたことが多かったと思います。グループホームで夜勤をしているとき「ひとりは寂しい」と訴えたり「あんたもここで寝なさいよ」と自分の布団に誘ってくれる人もいました。

ただ、個室を否定しているわけではありません。ひとりを好む人もいます。大切なのは、目の前にいる認知症の方が最も安心できる環境に近づけていくことです。

もともと居室に家具が付いている施設もありますが、認知症のある方については使い慣れた家具や小物、家族の写真を入所時にお持ちいただくようお願いすることがあります。認知症が悪化する原因のひとつ、「環境の変化」をできるだけ小さくするためです。

海外では「true door」と言う、施設にある居室の扉を、入所する方の住んでいた家の扉と、そっくりにするというプロジェクトもあります。こうすることで認知症の方が居室を間違えなくなってトラブルが減ったり、記憶の扉が開いて昔のことを思い出したりすることもあるそうです。

大切にしたいのは生活習慣を大きく変えさせない

今まで習慣にしていたこと

昔からの日本ならではの障子や畳、木材を使って建てられた施設。日本人が懐かしさや安らぎを感じるつくり。例えばそんな施設があったとしても、これまでの生活習慣をまったく無視した介護が行われているとしたらどうでしょうか?入所にしても通所にしても、認知症の方が集団生活の場に入ることも少なくありません。自分のことや周りのことがわからなくなり、ただでさえ不安な状態です。

先程、物理的な部分での環境の変化を少なくすることはお伝えしましたが、それだけでは不十分な場合もあります。それまでの生活スタイルを継続するということも大切になります。みなさんにも毎日必ず行っている習慣があると思います。「今日からその習慣は続けることができなくなりました」と言われたらどう感じますか?何年、何十年と当たり前のように生活の中で繰り返してきたことが突然できなくなることにストレスを感じるのではないのでしょうか?

例えば、「毎朝コーヒーを飲む」「ご飯のお供に必ずらっきょうを食べる」「植物の水やりをする」「日記をつける」「自分でつまみを用意して晩酌をする」これらは、すべて私が関わっていた認知症の方が若いころから続けていた習慣です。99歳になるおばあちゃんは、体力も衰え食事が摂れなくなってきていました。

そこで、いつもらっきょう食べていたことを思い出した家族が、おばあちゃんが漬けていたらっきょうを持ってきてくれることに。そのらっきょうを出したところ、「おいしい」と言って笑顔を見せてくれたこともありました。

また、90歳のおじいちゃんはいつも居室で寝ていましたが、長年続けていた畑仕事に誘うと嬉しそうに出てきてくれたり、目を輝かせながら私たちに畑のことを教えてくれました。認知症になってから、それまでの生活を完全に再現していくのは困難です。ですが、どんな小さなことでも良いので、その方が生き生きとして続けられるものがあればその環境を整えていきたいと考えています。

身の回りの人が認知症の方の環境を整えてあげること

認知症の方の新しい気付き

冒頭に書いた「どの施設が良い?」という質問に対しては、「これまでの生活習慣とまったく同じは難しくても、少しでも近いところ、そこに近づける努力をしてくれるところ」とお話しています。

そのためには、家族と介護職員、それ以外にも認知症の方のまわりにいる人たちの協力が必要です。認知症の方の生活が豊かになるかどうかの"カギ"は、その方を取り巻く人たちが握っています。

事前の情報も大切ですし、サービス利用後しばらく経ってから「こんなことできるんだ!」「こんなことが好きなんだ!」って発見することもあります。

これまでの生活習慣を大切にしつつ、新しい気付きも取り入れていきましょう。いつも一番に見るべきところは目の前にいるその人です。

ぜひ、あなたが日常の中で気付いた、認知症の方の素敵な笑顔や言葉を周囲の人たちとシェアしてみてください。そして、認知症の方を中心にみんなの笑顔が増える介護につながっていきますように。

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