皆さん、こんにちは。認知症支援事業所 笑幸 代表の魚谷幸司です。
私に認知症の多くのことについて教えてくれたのは、起業前、約10年間にわたって勤めていた認知症グループホームにいた入居者の方たちです。中には支援で真剣に向き合う最中に本気で口論となったこともありますが、楽しい思い出も忘れることができません。
今回は、楽しい思い出として残っている認知症の人とのアクティビティ(レクリエーションや行事)の中で、代表的なものについてお話したいと思います。
人気が高い「歌の時間」
多くの方が好きだったのが歌の時間です。ただ、歌うとなると「恥ずかしい」と遠慮される方がほとんど。その代わり、ほかの人が歌っている歌を聞くことが嫌いな方はあまりいませんでした。そこで、私をはじめとした職員が先頭に立って歌うことになるのですが、よく見ると先ほど遠慮していたほとんどの方の口が動いているんです。
また歌に限ったことではないのですが、「アクティビティは、進行の仕方が参加者の楽しさと大きく結びついている」ことを理解する必要があります。歌で言うならば、単に次から次へと歌うだけでは何も楽しくありません。歌の題名や歌詞などから話題を広げ、多くの人に話を聞いていきながら進めることが必要。なお、聞いた内容が以前に聞いた内容や知っていることであったとしても知らないふりをし、相づちを打って聞くことも大切です。
「風船ゲーム」で参加者は真剣モードに
次にゲームの意味合いが強く、よく使っていたのが「風船」です。いろんな遊びができるのですが、輪になって一定の回数まで落とさないように打ち合うだけでも十分面白いです。参加者の多くが風船を目で追い、ときに立ち上がるなどしながら打ち返す様子は真剣そのもの。
そこでも職員の役割は重要で、輪の中心に入って上手くできそうにない方のフォローを行います。また夢中になり過ぎて椅子から落ちそうになる方や、他者とぶつかりそうになる方などが必ず出てくるので注意が必要です。
そしてその場を盛り上げるためには、わざとらしくならない程度に職員があえて風船を落としてみることも効果大です。参加者にできる限り恥をかかさないようにし、職員が失敗することを笑いながら楽しんでもらいましょう。「またや」など、参加者に突っ込まれるようになったら一人前です。
「外出」をすることで良い気分転換に
最後に忘れてはならないのが、外へ行くことです。近くの公園まで行く日常的な散歩から、恒例行事である花見、年1回の遠足として遠くまで赴くこともありました。
多くの方が外の空気を吸えることに喜ばれるのですが、注意しなければならないことがあります。それは環境の変化についていけない方がいるということ。見慣れた人や見慣れた風景に囲まれているから落ち着いていられるわけで、認知症の方々は見慣れた人がいても見慣れない風景を目にすると落ち着かなくなることがあると、1人の方より学びました。
職員が誰よりもアクティビティを楽しむことが大切
最後にどんなアクティビティをするうえでも職員に必要なことがあります。それは、「そこにいる参加者の誰よりも楽しむ」ということです。「面しろくないな」「また同じことをやらないといけない」と思いながらやっていると、それは確実に参加者へ伝わってしまいます。
認知症の方がいらっしゃる場合、遊びの内容がわからないまま参加している方もいると思います。ただ、そんな方に対しても「何か楽しそうなことをやっている」とわかってもらうためにも必要。これは数多くの経験をしてきた中で私が自信を持って言えることの1つです。